上野公園に多くの花見客

新型コロナウイルスの影響で自粛ムードが広がる中、3月22日、日本一のお花見スポット、東京・上野公園の「今」を取材した。

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例年350万人以上の人が訪れる花見スポット、東京・上野公園。

2020年は暖冬だったこともあり、22日、メインストリートにある桜並木の「ソメイヨシノ」は、5分咲きの見頃を迎えている。

日曜ということもあり、上野公園を訪れてみると予想以上に多くの人が。

学生:
閑散としているかなと思った、みんなマスクしながら桜見に来ていて、いいなと思いました

主婦:
ちょっと心配してましたけど、広いし、上野公園。狭いところに、ぎゅうっているわけじゃないから、大丈夫かなと思って来ました

上野の桜は過去も数々の被害を受けた

2020年は上野公園も例外なく、新型コロナウイルスの影響が懸念されているが、実は、過去にもさまざまな受難を乗り越えてきた。

徳川幕府時代の1698年に一般庶民に花見が解放され、その後、戊辰(ぼしん)戦争、関東大震災と、数々の被害を受けてきた。

上野公園の桜を綺麗に鑑賞できる環境を守り続けるという趣旨の上野桜守の会で運営委員長を務めている木村雄二さんに話を聞いた。

上野桜守の会・木村雄二運営委員長:
第2次世界大戦の時は、噴水広場のあたりは高射砲の陣地があって、立ち入り禁止になっていた。戦後に、物資不足で(桜が)切られて、燃料として使われた

新たに桜並木に植えられた桜はあまり状態が良いものではなかったそうで、前回の東京オリンピックが行われた1964年に植え替えられ、今よく目にする桜並木のソメイヨシノはその時に植えられたものだ。

そして、今では、日本一の花見客が訪れる観光スポットとして親しまれるようになった。

花見客は例年の3分の1と予想

ところが、新型コロナウイルスによる影響で、花見シーズンに合わせて開催予定だったイベントは、軒並み中止。

園内にある動物園など、多くの施設は休んだままで、2020年の花見客は、例年の3分の1ほどの100万人程度になると予想されている。

上野桜守の会・木村雄二運営委員長:
上野公園は、桜が咲くころには、世界中から人が来るわけで、桜を楽しむ人は、国境もわだかまりもなくて、この美しさに感動して、喜んで友達になる姿が、平和のシンボルという感じがします。日本の桜というよりは、世界の上野公園の桜となっています。どんどん輪を広げていけたら...

上野の歴史は、桜とともに歩んできたといえる。
300年以上にわたって、人々に春を告げてきた桜は、自粛ムードが高まる2020年も、満開の時を迎えようとしている。

取材後記

私の所属する取材撮影部のカメラマンは、皆、綺麗な映像を撮りたいと思っている。季節の花を撮影するのは定番なのだが、中でも桜満開のこの時期、カメラマンの撮影欲が最高潮になると言っても過言ではない。

しかし、今年はいつもと状況が違う。新型コロナウィルス感染が拡大していく中で、単にきれいな桜を撮影、放送するだけではいけない。どんな取材をして、放送すればいいのかずっと考えた。答えは見えないまま、日本一の桜の花見客が訪れる上野公園の今を取材してみたいと思い、足を運んだ。

取材に訪れた時は5分咲きとは言うものの、見頃を迎えている桜もあり、多くの人が桜を鑑賞しに来ていた。人の数には正直驚かされた。

世の中の自粛ムードが高まる中でも綺麗な桜を見に来たいと思う人がこれほどいるということが、純粋に凄いと思った。

上野公園の桜は徳川幕府時代に一般庶民に花見が解放されて以降、300年以上にわたって上野の人を楽しませてきたことが取材して分かった。今では日本中、いや世界中から観光客が訪れる桜スポットになっている。

戊辰(ぼしん)戦争、関東大震災、第2次世界大戦、多くの被害を受けながらも上野公園の桜は継承されている。

どんな逆境にあっても、上野の桜は何も変わることなくきれいな花を咲かせてきた。

初春の眩しい光に照らされる桜の花びらを見上げながら、新型コロナウィルスが収束して、お花見する人に埋め尽くされた上野公園の桜を、また撮影したいと思った。


<取材・撮影・執筆>石黒 雄太
<撮影>高橋 晋