布施スプリントの男子100メートルで9秒95の日本新記録をマークした陸上・山縣亮太。

6月24日から27日にかけて行われる東京オリンピックの日本代表選考会・日本選手権に向けて最高の結果を残した。

ライバルが名を連ねるレースで

大会前、すでに3人の選手がクリアした東京オリンピック参加標準記録の10秒5を突破できていなかった山縣。

予選で1.7メートルの追い風の中、参加標準記録をクリアする10秒01で、ようやく3大会連続のオリンピック出場への第一関門を突破する。

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決勝では9秒台の記録を持つ小池祐貴、ケンブリッジ飛鳥、多田修平らが顔を揃え、オリンピック代表の座を争うライバルたちが名を連ねるレースとなった。

すると、決勝で山縣が叩き出したタイムは日本新記録の9秒95。

2019年にサニブラウン・ハキームがマークした日本記録を0秒02更新した。

しかし日本最速の男の、ここまでの道のりは決して順調なものではなかった。

陸上に取り組む独特な姿勢

2012年のロンドンオリンピック男子100メートルで、日本人最高タイムの10秒07という記録を打ち出した山縣。

2016年のリオオリンピックではウサイン・ボルトとレースを走り、日本人最高タイム10秒05をマーク。400メートルリレーでは抜群のスタートダッシュを買われ第一走者に抜擢され、銀メダルを獲得し、世界を驚かせた。

そんな山縣の陸上に取り組む姿勢は独特だ。

自分の感覚を大切にするため、コーチを付けずに練習。1本走り終えるごとに、自ら動画をチェックしていた。

2019年のインタビューで山縣はこう話していた。

「“主観”は走った選手本人にしかないことだし、『どういう意識で1本走ったのか』を、実際の映像としっかり見比べて、主観と客観をすり合わせることを意識しています。9秒台といったら世界レベルで考えたらスタートライン。もっとその先の9秒8とかメダル争いに食い込んでいけるようなタイムを出したい」

変化を求めた2021年

しかし2019年6月以降、山縣は肺気胸やケガに泣かされレースに出場できず、「結果がなかなか出ずに苦しいシーズンだった」と振り返る。

どん底を経験した山縣は、今年からコーチを付けるなど変化を求めていた。

すると、4月29日に広島で行われた織田幹雄記念国際大会の男子100メートル決勝で10秒14のタイムをマークし優勝。9秒台のベストタイムを持つ桐生や小池を抑えた復活優勝を果たした。

オリンピックイヤーに合わせて調子を上げてきたのだ。

そして今回の大会では、日本新記録を更新。

山縣は今回のレースを次のように振り返り、オリンピックへと意気込む。

「絶好のコンディションで記録を出すには打ってつけの条件だった。ずっと出したかった9秒台が出せて五輪参加標準記録と自己記録、日本記録が出せてよかった。

(24日からの代表選考会の日本選手権は)本当にレベルの高い選手たちが集まって最後、オリンピックの枠をかけて争うことになるので、自分もベストを尽くしてオリンピックの代表権を勝ち取りにいきたい」と

現在、参加標準記録を突破しているのは山縣、サニブラウン、桐生、小池、多田の5人。

男子100メートルの五輪出場枠は最大で3枠。24日からの日本選手権で3位以内に入ることで条件となる。波に乗る山縣がどんな活躍を見せるか期待したい。