ラグビートップリーグの試合を最後に、ラグビー選手として現役を引退したパナソニックワイルドナイツ所属・福岡堅樹。

最後の試合が5月23日、秩父宮ラグビー場で行われ、福岡の両親や多くのファンが詰めかけた。

リーグ戦からともに無敗で決勝に進出したサントリーとパナソニック。試合はパナソニックがサントリーを下し、5度目の優勝を飾った。

「医学の道へ」引退を決意

W杯で8強入りを果たした日本代表がパレード
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福岡は、2019年ラグビーW杯で日本を初の決勝ラウンドへと導くトライを決め、日本にラグビー旋風を巻き起こした。

今シーズンもリーグ戦では持ち前のスピードを生かし、トライ数は1位。ゲインメーター(ボールを持って進んだ距離)でも、他を寄せ付けない数字を残している。

リーグトップの成績を残しながらも引退を決めた理由は、「医学の道を志す」ため。

医師である祖父や父に憧れ、今年4月に28歳にして順天堂大学医学部に入学。今日まで「ラグビー」と「医学の勉強」をこなし、まさに文武両道に励んできた。

福岡の“コーヒー好き”な素顔

パナソニック・内田啓介

そんな福島と大学時代から8年間、共に汗を流してきたパナソニック・内田啓介。

筑波大学で2年間、パナソニックで6年間、そして日本代表でもプレーしてきた内田に、福島の素顔を聞いた。

福島の印象について「ずっとコーヒーを飲んでいる」と話し始めた内田。

「堅樹は『医学部に挑戦したい』と、大学を浪人して入ってきて、浪人時代は勉強するためにコーヒーを飲んで、そこからハマったんじゃないかな」

「朝のウエイトトレーニングが終わったあとに、(福岡が)『引退してから太るのが怖い』『コーヒーに頼りそうです』と言っていて、コーヒーずっと飲んでるのにまだ飲むん?」と思ったそうだ。

福岡のことをよく知る内田だからこそ、「堅樹のラグビー人生のストーリー、その最後の一つのピースが今週の決勝戦。(そのピースを)はめたら、堅樹に思い残すことはない」と話し、決勝戦は負けられない試合だとした。

筑波大学、パナソニックとラグビーの名門を渡り歩き、世界をも驚かせてきた福岡だが、実は日本一の経験はゼロ。

2018年の日本選手権決勝で最も頂点に近づいたが、その時立ちはだかったのが、トップリーグの決勝で相まみえたサントリーだった。

「何一つ悔いはないと言い切れる」

福岡にとって現役最後の試合となったトップリーグの決勝。

パナソニックはキックオフから自陣に攻め込まれる苦しい展開となるが、開始5分、左センターのディラン・ライリー(パナソニック)が相手のパスをインターセプトし、無人のサントリー陣内を走り抜け、先制トライ。

その後福岡もゴール前のキックに飛び込むが、ノックオン。途中、ラグビーW杯でともに戦った流大(サントリー)と笑顔で言葉を交わす場面も見られた。

前半30分、福岡は左サイドでボールを受け取ると相手のタックルを振り払い、トライ。5試合連続シーズン14本目を成し遂げ、現役最後の試合でも見事に決めた。

前半35分、日本代表の中村亮士(サントリー)も追撃トライ。パナソニックは16点リードで前半を終えた。

後半、パナソニックは果敢に攻め込むが厳しいマークに遭う。一方で、サントリーは徐々に点差を詰めていく。

残り10分を切っても自慢の攻撃力でパナソニックの陣内を目指すサントリー。残り2分、福岡のタックルも及ばず点差はワントライで追いつける5点差にまで迫るが、試合終了。

パナソニックはトップリーグ5度目の優勝を飾った。

試合後、福岡はリモートでのインタビューで、感謝の気持を述べた。

「これまで僕自身、そして日本ラグビー、パナソニックワイルドナイツ、すべてを応援してくださった感謝を伝えたいです。
たくさんの応援があったからこそ、僕自身ポジティブに自分の夢に向かって、まっすぐ努力を続けてこられたと思いますし、これからは僕自身たくさんサポートしてもらったことを、自分の形で恩返しができればいと思います」

最後の試合となったトップリーグの決勝で、笑顔で会話をしていた流選手についても話した。

「(流選手と)一緒には代表選抜でしかプレーしていませんが、彼とは小学校からずっと切磋琢磨してきた仲間でもあります。ただ試合をする時点では間違いなく敵でもあるので、100%勝つ気でやる。相手を叩きつぶすつもりでやる、という気持ちでやっていた。
終わってからは大(流選手)から『お疲れ様』と言ってもらえて、そこは本当にありがとうという気持ちを伝えました」

23年間のラグビー人生。

「自分のラグビー人生としてやりたいことはすべてやり切れたので、何一つ悔いはないと言い切れる」

福岡らしい言葉で締めくくった。

福岡の「医学の道を志す」挑戦が始まる。