今、最も金メダルに近い男と言われる、車いす陸上の佐藤友祈(31)。

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東京パラリンピックでは、400メートルと1500メートルの代表に内定。この2つの競技で世界記録(400メートル55秒13、1500メートル3分25秒08)を持ち、世界選手権では2大会連続2冠の快挙を達成している。

「世界記録を更新して金メダルを獲得。自信は十分あります」と力強く語る佐藤は、前回のリオパラリンピックでメダルを獲得した際は「障がいを持ったからこそ、より研ぎ澄まされて、開花した。リミッターという概念がない」と話していた。

常に前を向き、走り続ける佐藤は今、3つのことを世の中に伝えたいという。

・<聞いてくれ!>パラスポーツはカッコいい!
・<見てくれ!>俺のノーリミット走行!
・<東京五輪・パラ開催へ>自分の仕事を中止にすべきと言われたらどう思う?

パラスポーツはカッコいい!

佐藤が1つ目に伝えたいという「パラスポーツはカッコいい!」。
自身はこの競技に出会う前は、パラスポーツに対してマイナスイメージを抱いていたという。

「21歳の時に病気で車いす生活を送るようになったんですけど、それまでは障がいを持っている方や車いすの方を、“社会的弱者”と言ったら言い方がきついかもしれないですが、そういうものだと認識していた。

ただ、ロンドンパラの映像を見て『何、この人たち。めっちゃカッコいいじゃん!』ってなって。もう翼が生えているようでした。どのくらいの速度が出るか知らなかったので、レースを見たときに『え!?なんでこんなに早く走れるの?』って思って」

車いす陸上のトップ選手は時速30キロのスピードを出すという。

車椅子でふさぎ込んでいた生活を送っていた佐藤は、2012年のロンドンパラリンピックでパラスポーツと出会い衝撃を受け、自身もパラ陸上の競技を始め、のめり込んでいく。

そしてその出会いからたった4年後に、2016年リオパラリンピックに出場。400メートルと1500メートルで銀メダルを獲得した。

「好きなことや興味を持ったことに没頭する力は、他の人たちよりも強く出ている。自分は“可能性の塊”だと、初めてレースに出た瞬間に感じることもできたので、それが重なってこの結果が出せていると思います」

俺のノーリミット走行!

更に佐藤は自身のゴール直前の追い上げ、“ノーリミット走行”を見てほしいと続ける。

5月11日に国立競技場で行われたパラ陸上のテスト大会でも、“ノーリミット走行”は発揮されていた。

男子400メートルに出場した佐藤。200メートル付近までは後方にいるが、残り200メートルから一気にノーリミット走行で捲っていく。ゴールが見えてくるとリミッターが外れ、一気に追い抜き一位でゴールした。

佐藤はこのレースで、スタート時にはすでに「ゾーン」に入っていて、後半では「苦しくてももがける」ため、ゴール直前は別次元のスピードでラストスパートを見せられるのだと振り返る。

常に“ノーリミット走行”をしているため、「リミッターが外れなかったことはない。全部のレースで外れている」と話す。

それは練習中も同じで、「練習中も外れます。感覚的には苦しいけど、もがいた先にどういう景色があるんだろうと探究したくなる」と精神力の強さを明かした。

自分の仕事を中止にすべきと言われたら?

コロナ禍でさまざまな意見が飛び交う東京オリンピック・パラリンピック。

難しい立場に置かれているアスリートたちだが、佐藤はこう語る。

「パラリンピックやオリンピック選手は競技をすることでスポンサーがいたり、企業に所属していたり、つまり仕事なんです。矢面に立たされて、『仕事を中止にすべきだ』と反対運動のような世論が出てきたとして、そのときに自分たちがどう感じるか考えてほしい。

共通の敵はコロナなんです。『オリンピック・パラリンピックができないことばかりに目を向けるんじゃない』ということを言いたいわけではなく、日々の生活においてできないことばかりに目を向けて生活するよりも、『どうやったらできるんだろう』と考えて生活していく方が、何百倍も何千倍も楽しくて、それを伝えないといけない。パラリンピックはまさにそういうことを伝えられるカギとなるものだと信じている」

病気によって障がいを抱え、佐藤も「できないこと」ではなく「できること」に目を向けて競技を続けてきた。

そんな佐藤が、東京パラリンピックで目指すのは金メダルだけではない。

「本番では400メートル、1500メートルに出場します。2種目とも金メダルを獲るのはもちろんですが、世界記録を更新して、2種目で金メダルを獲得する。これを必ず達成します」

その活躍に期待したい。