「それって、ホント?」と言いたくなるマナー、多くありませんか?
新入社員のキャトウさんも、そんな“もやもやマナー”に悩まされるひとり。
電車などでよく見かける「スーツ×リュック」のスタイル。
ちょっとラフすぎる?という意見もあり、たくさん持ち運べて楽で最高!という声もあり。
そこで今回のテーマは…
さっそく、国内外の企業や大学などでのマナーコンサルティングや人材育成などのマナー指導を行っている、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんにお話を聞いた。
西出氏:
「スーツ×リュック」姿が出始めた当時は、ビジネスマナー的に問題という声のほうが多くありました。ノートパソコンを持ち歩いてお仕事をなさるビジネスパーソンが「スーツ×リュック」スタイルだという印象があります。重量的に、背負っているほうが楽ですし、両手が空いているので、いざというときに安心です。その後、東日本大震災を境に、このスタイルは認知され、パソコン関係なく、ビジネスパーソンのビジネススタイルになったと思います。
様々な業種の企業コンサルティングをおこなっている中において感じることは、このような身だしなみは、日本社会全体的に緩くなっているという現実です。
一方、現在でも特に金融関係機関系は、スーツなどの身だしなみに厳しい風潮があるように感じます。そのため、弊社ではこの5年間、身だしなみ研修のご依頼が大変多くあります。
一口に「ビジネスパーソン」といっても、さまざまな業種、職種のビジネスパーソンがいらっしゃいます。それぞれの立場や状況に応じて、現代ではこの答えは変わってきます。そして、どこを基準にすれば良いのかは、自社の規則に従うことです。
西出氏:
何かのために両手をあけておきたい、背負っているほうが楽、などの理由からリュックを使用するのであれば、通勤時には使用する。一方、スーツ姿にリュックというスタイルを好ましく思わない人もいらっしゃるであろうと想像したり、自社で「他社訪問時のリュックは禁止」などの規則がある場合には、他社を訪問するときには、ビジネスカバンで訪問をする、という使い分けはステキだと思います。
マナーは、相手の立場や状況に応じて、その型を臨機応変に変化させて良いものです。相手ファーストの気持ちから、カバンとリュックの使い分けは一種のマナーといえましょう。
ここ数年で増えた「スーツ×リュック」のスタイル。
このスタイルが出始めた当初は「マナー的にNG!」という風潮だったものの、2011年の東日本大震災を機に「両手が空く」「たくさんの荷物を入れていても楽に持ち運べる」という利点が注目され、認知されるようになったのだそう。
一方で、スーツ×リュックのスタイルを好ましく思わない人がいるのも事実。また、金融関係など、スーツの身だしなみに厳しい職種ではスーツ×リュックのスタイルは歓迎されないこともある。
「スーツにリュックはマナー違反」とは一概には言えないが、たとえば個人ロッカーにビジネスカバンを入れておき、通勤の際はリュックを使い、他社を訪問する際はビジネスカバンを使うなどの使い分けをするとスムーズかもしれない。
“カジュアルすぎない”リュックも使って
また、リュックの「素材」も大事な使い分けポイント。
西出氏:
かっちりとした印象のスーツに、カジュアルな印象となるリュックを背負っていると、全体的にカジュアルな印象のほうが強くなります。また、状態によっては、「だらしない」と思われる傾向もあります。これは、リュックを背負うことにより、ジャケットにシワがよったり、型くずれをすることも一因でしょう。
一方、スーツにリュック姿でもカジュアルな印象にならない場合があります。それは、リュックの素材がポイントです。
ナイロン製のリュックの場合は、カジュアルなイメージとなりますが、革製品のリュックであれば、きちんとした印象に近づいてきます。最近は、長方形の革製のリュックに取っ手がついているものがあります。その取っ手を持てば、ビジネスカバンに変身します。
スーツ×リュックに抵抗感がある…という人の多くが「カジュアルすぎる」イメージを気にしているはず。
そんな中、登場しているのが“大人用ランドセル”。
布やナイロン製のやわらかい素材ではなく、革製のかっちりしたものや、ほぼビジネスカバンと同じ見た目だが背負えるように取っ手がついている、というものもある。
ビジネスカバンとの使い分けだけでなく、素材を見直すことで、かっちりしたイメージを崩すことなくスーツ×リュックのスタイルを楽しめるかもしれない。
西出氏:
現代は、ご年配の方もスーツにリュック姿の方は多くいらっしゃるとお見受けいたします。
おそらく、ご年配の方々が新入社員などの時代には、スーツには革のビジネスカバンが定番で、リュックなどはありえない時代だったかと存じますが、現代は、国がスニーカー通勤を奨励している時代です。それこそ、ひと昔前であれば、ビジネスパーソンは、スーツに革靴が定番でした。
このように、時代とともに、その型に変化はあり、ご年配の方も柔軟な心のもちようで、TPPPO(時・場所・人<相手>・立場・場合)さえ、きちんとおさえていれば、スーツにリュックを嫌う、とまではいかないと思います。これも、ひとそれぞれの感じ方だと思いますので、もちろん、嫌う・しっくりこない・昔が良かった…と思う人もいらっしゃれば、時代は変わったなぁと、このアンバランスや緩さをいい意味で楽しんでいらっしゃる方も少なくはないと思います。
今回のもやもやマナー、スーツ×リュックスタイルは使い分けで場面に合わせて。
“革製リュック”にスニーカーも…そのうち定着するかも?
(漫画:さいとうひさし)