4日、韓国の市場に並んでいたのは日本でも人気のシャインマスカット。
その価格、日本円にして1房なんと200円です。
韓国で「ブドウ界のエルメス」とも呼ばれ、高級果物として飛ぶように売れてきたシャインマスカットですが、近年は価格が急落。
ここ数年で4分の1にまで下落しました。
その理由はなぜなのか。
日本への影響も懸念されています。
取材班が向かったのは、韓国・ソウルにある市場。
そこで存在感を放っていたのは、今が旬のシャインマスカットです。
店頭で値札を見てみると、小ぶりなものが1つ大体4000ウォン、約471円ほどでかなり安く売られています。
韓国では「ブドウ界のエルメス」とも呼ばれ、大ブームを巻き起こしたシャインマスカット。
なぜ、お手ごろ価格で売られているのでしょうか。
さらに別の店では、シャインマスカットが3房入った箱が5000ウォンと書かれていました。
日本円に換算すると約600円で、1房当たりの値段は200円と驚きの安さです。
「利益がない。お金にならないよ。シャインマスカットの値段が一番下がってるんだ」「毎年下がって、今年が一番安いです」など、取材した青果店から相次いで聞かれたのは、シャインマスカットの価格暴落です。
2018年11月時点では、2kg当たり約2万7000ウォンほどでしたが、その後どんどん価格が下がり、11月2日時点の価格は5939ウォンと、4分の1以下まで急落しているのです。
この状況に、消費者からは「ひとまず価格が安いのはいいことですね」といった声が聞かれました。
実際に価格の安い商品を口にしても、際立った渋みなどは感じられませんでした。
一方、シャインマスカットを栽培する農家は深刻な状況に直面しています。
韓国・慶山市のブドウ農家:
(韓国のブドウ農家は)本当に頭を抱えています。今は原価すら回収できないブドウが非常に多いんです。
一体なぜ、韓国でここまでシャインマスカットの値段が下がったのでしょうか。
その原因の1つは過剰生産、つまり“作りすぎ”です。
韓国では6年ほど前にシャインマスカットがブームとなり、新規参入が相次ぎました。
その結果、今では国内にあるブドウの栽培面積の4割弱をシャインマスカットが占めています。
悲鳴は若い農家からも…。
永川市のブドウ農家:
始めた頃は相場も良く、雰囲気も良かったんです。しかし私が農業に慣れていくうちに価格があまりにも下がってしまって、どうしていいか分からないほど苦しいです。
また、品質の低下も問題視されています。
慶山市のブドウ農家:
現在の仕組みでは、味が良くなくても見た目が良ければ高値がつくんです。
糖度が低くても粒が大きいほど高値がつくことから、消費者離れの一因になっているといいます。
糖度が高く、皮ごと食べられるのが人気のシャインマスカット。
日本国内で1973年から品種改良を始め、33年に及ぶ歳月と努力を積み重ね、2006年に品種登録された日本発祥のブランドです。
当時は輸出や国外での生産を想定していなかったため、海外での品種登録を行っていませんでした。
そのため現在、韓国で広まっているシャインマスカットは、日本から苗木が流出し普及したものとみられています。
こうした現状は韓国だけでなく、FNNが4年前に中国・北京市内の市場を取材した際、多くの店でシャインマスカットが山積みになっていました。
農水省によりますと、4年前の時点で中国国内におけるシャインマスカットの栽培面積は日本の約30倍の規模で、東南アジアなどに多くの中国産が輸出されています。
日本から苗木が流出し大ブームになったものの、品質の低下や作りすぎで価格の急落に直面している韓国のシャインマスカット。
韓国政府は国内の流通価格を安定させるため、海外にも販路を広げる方針です。
こうした次なる動きは、日本産にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
国内で100種類以上のブドウを栽培・管理する専門家は、3つの懸念があるといいます。
林ぶどう研究所・林慎悟さん:
その他地域のものが輸出・販売されるようになってくると、そこで(日本産の)販売機会があるものがその機会を失うことが起きる。日本産のものの数量が売りづらくなってくること、当然悪いものが市場に流れれば安くなりますし、悪いものが流れていくと、あまりおいしくない品種という認知が進む可能性がある。ブランドイメージをどのように守っていけばいいかが今後重要になってくると思う。
林さんが約10年かけて開発した岡山県産のオリジナル品種「マスカットジパング」は現在、海外での品種登録を進めていて、流出防止や品質管理が今後の課題です。
林ぶどう研究所・林慎悟さん:
流出もそうですし、品質をできる限り管理をする意味でも、そのあたりを意識して(生産)地域を限定してます。
農林水産省によりますと、苗木が中国と韓国に流出したことによる損失額は年間で200億円弱に上るといいます。
ただ、これは本来得られるはずだった許諾料のみの試算で、この数字には日本が輸出をした先で韓国産などと競合して販売機会が失われる影響などが含まれていないんです。
そのため、損失額はさらに膨らむと考えられます。
遠藤玲子キャスター:
今後、さまざまなフルーツなどで新しい品種が開発されると思うんですが、対策は何かされているんでしょうか。
榎並大二郎キャスター:
その点、官民それぞれで対策は進められています。農林水産省はこの夏、開発者に代わって海外での品種登録や無断栽培の監視などを行う専門機関を立ち上げました。
オリジナル品種「マスカットジパング」を生産している林ぶどう研究所では、複製が難しい電子タグを商品に付けることで、正規の品種であることを証明しているということです。
今後、こうした動きが広がっていくものとみられます。
