2026年8月、ネパールと中国の国境付近で大規模な土石流が発生し、1400人以上が死亡、日本人5人を含む5000人以上が行方不明となった。発端は、標高約5200メートルで起きた巨大な岩盤と氷河の崩落だった。岩盤をつなぎ止める「氷のセメント」が温暖化によって溶けたことが、一因となった可能性が指摘されている。FNNが独自に入手した映像と専門家の分析から見えてきたのは、山体が崩壊したメカニズムと、巨大災害の予測の難しさだった。
一気に高さ10m、時速167kmの濁流が…
崩落地点からおよそ50キロ離れたネパール中部の町、ビドゥール。
発災直後、日本メディアでいち早く現地入りしたFNN取材班は、約1カ月後に再び被災地を訪れた。そこで目にしたのは、今なお残る生々しい爪痕だった。
川岸は大きくえぐられ、沿道の建物は2階部分にまで土砂が残り、道路脇では被災したトラックが取り残されていた。
住民:
見るに耐えない光景でした。みんなが泣き叫び、何もかも流されました。
またいつ災害が起きるのか分かりません。ここに住むのは、恐ろしいです。
上流では、高さ最大10メートルの濁流が、平均時速167キロもの速さで押し寄せたとみられている。
東京ドーム106個分、幅1kmの壁が崩落
ヒマラヤの氷河や災害リスクを研究する国際機関、ICIMOD=国際総合山岳開発センターのラジェシュ・バハドゥール・タパ博士に話を聞いた。
博士が提示したのは、崩落後の現場を捉えたドローン映像だ。
取材班に見せてくれたメディア未公開だという映像には、大きくえぐられた山の斜面と、下に堆積した大量の土砂が映し出されていた。
博士によると、崩れ落ちた岩石と氷の量は推定1億3200万立方メートル。東京ドーム100個分以上に相当する。
岩盤は幅およそ1キロに及ぶ。氷とともに約1200メートル下へと崩れ落ちた莫大なエネルギーが、下流で甚大な土石流を引き起こす要因となったという。
ベテランガイドが見たヒマラヤの異変
ヒマラヤでは近年、登山家たちの間でも「山の異変」が肌感覚として語られていた。
エベレストに5回登頂したベテランガイドのアン・チェリンさんは、ヒマラヤから急速に氷と雪が失われていると明かす。

登山ガイド アン・チェリンさん:
以前は雪に覆われていた場所で、今は岩肌がむき出しになっています。
昔は15分ほど歩いてから、アイゼン(滑り止めの金具)を着けましたが、今では2時間以上も岩肌を歩くんです。
岩盤支える「氷のセメント」の喪失
こうした雪や氷の減少は、今回の災害とどう関係しているのか。
タパ博士は、「地球温暖化との関連は十分に考えられる」と指摘する。
岩盤の亀裂に入り込んだ氷は、「セメント」のように岩をつなぎ止め、斜面を安定させる役割を果たしている。しかし、長年の温暖化によって氷が溶け、その支えが失われてしまったという。
さらに、2015年のネパール大地震で生じた亀裂も今回の崩落に影響しているとみられている。
ICIMOD タパ博士:
長年にわたって氷が溶け続け、限界点に達したことで、岩盤が崩落したと考えられます。
2015年の大地震によって山に亀裂が生じ、そこに水や氷が入り込んでいた可能性があります。気温が低い間は氷が岩盤を支えていましたが、その後の気温上昇で溶けたのかもしれません。
また、科学データも深刻な変化を示している。
ガンジス川流域の山岳地帯では、この30年間で氷河の面積が約20%減少した。一方、大きな氷河が溶けて分断され、複数の小さな氷河に分かれているという。

