鹿児島市の児玉美術館で開催中の企画展。
刺繍や木工など個性豊かな作品の数々は、鹿児島市にある障害者支援施設「しょうぶ学園」の利用者たちがつくったものです。
多様な創作活動はどのようにして始まったのでしょうか。
開設から半世紀あまり、施設の歩みと目指す姿を河内アナウンサーが取材しました。
鮮やかな絵の具が大胆に重なり合う絵画に…
一つとして同じものがない車のオブジェ。
笑顔を浮かべる木の彫刻…
これらの作品を手がけたのは、障害者支援施設「しょうぶ学園」の利用者たちです。
10月10日、鹿児島市の児玉美術館で始まった企画展。
しょうぶ学園の利用者たちがつくった約1000点の作品が一堂に会しています。
これらの作品は一体どのように作られているのでしょうか。
鹿児島市吉野町にあるしょうぶ学園です。
知的、精神、身体になんらかの障害のある10代から80代、約200人が利用しています。
今から53年前に開設されたしょうぶ学園。
当時を知る福森統括施設長は…
しょうぶ学園・福森伸統括施設長
「(障害があっても)一般の人の中に少しでも入り込んで自立した生活をしようという訓練的な要素が強かった」
施設では当初、機織りや裁縫などの下請け事業を担っていました。
「まっすぐ縫う」など、決められた作業に難しさを感じる利用者たちと向き合う中で、ある気づきがあったそうです。
しょうぶ学園・福森伸統括施設長
「本人はどうやりたいのかと考えたときに(縫い目が)曲がる。修正していたものをそのままにしてみたら、曲がり続けてぐしゃぐしゃになって固まって、その布の塊を『きれいだ』と言う職員がいた。人並みにやって世の中の一部を担えるようにするより、自分の力を発揮して新しいものを生み出す方が面白い」
社会生活を送るための訓練の場から、利用者たちの才能や表現力を生かしたものづくりの場へと大きく舵を切ったしょうぶ学園。
下請けをやめ、敷地内に工房を構えると、学園では木工や陶芸、刺繍、和紙作りなどの創作活動に取り組むようになりました。
利用者たちは本人の意思や適正に応じてそれぞれの工房に所属します。
全国各地で展示会の開催や作品の販売なども行っていて、今や多くの「作家」を抱える施設になりました。
そんなしょうぶ学園の「作家」のひとり森節子さん、71歳。
知的障害があり、開設当初からしょうぶ学園を利用しています。
機織りや陶芸などさまざまな活動に取り組んできましたが、視力や体力の低下に伴い、2年ほど前から刺繍に専念しています。
無地のシャツに元の生地が見えなくなるほどびっしりと刺繍を施した森さんの作品。
使う糸は明るい色が多く、動物をモチーフにすることも。
下絵は一切なし。
デザインも、配色も、そのとき思いつくままに作っているといいます。
しょうぶ学園 利用者・森節子さん
Q.どんなことを考えながら作る?
「(作っている時は)何も考えていない。(糸選びも)適当に『これにしようかな』とか、どれでも。今までやってきた中で刺しゅうが一番楽しい。他のことをする時は途中で眠たくなったりするが刺しゅうになったら全然」
黙々と、迷い無く縫い進める森さん。
1日の作業時間は約5時間で、先ほどのシャツを1着作るのに約3カ月かかるといいます。
しょうぶ学園 布の工房・宗像恭子主任支援員
「(森さんは)常に作業の時には集中力があって、朝から夕方までこんな感じで(黙々と)自分の仕事にプライドを持って取り組む方」
森さんがかつて所属していた陶芸の工房も訪ねてみました。
しょうぶ学園・福森創統括副施設長
「これは(森さんの)ほんの一部の作品。主に顔や人をモチーフにすることが多い。その時に感じたことやその時の動きに正直な感じがす」
粘土をこねて、形を作る。
繰り返し、同じ模様を描く。
心ゆくまで刺繍をする。
ただ純粋に、「創ること」そのものを楽しんだ先に生まれた作品の数々は、見る人を圧倒する力強さを持っています。
企画展の来場者
「(私たちの)想像を超えている。どの作品も素晴らしくて、ここに入ってから、なかなか出られないでいる」
「力強さというか、生きる力そのものだと思う」
しょうぶ学園・福森伸統括施設長
「もしかしたら利用者の中で『作品を展示してほしい』と思う人は少ないかもしれない。あるいは『展示する』という意味が理解できていないかもしれない。そこにピュアな自分だけの表現があって、そういう部分を少しでも感じてもらいながら、(作品との)対話を鑑賞者に期待する展示会になるのでは」
しょうぶ学園 利用者・森節子さん
Q.ものづくりはいつまで続けたい?
「できるところまでは。できなくなるまでかな」
与えられる側ではなく、創り出す側に。
利用者たちの心を映したしょうぶ学園のものづくりはこれからも続きます。
しょうぶ学園の企画展は、鹿児島市の児玉美術館で12月13日まで開かれています。
