女性の8人に1人がかかるとされる「乳がん」の患者数は、近年増加傾向にある。しかし、治療薬の発達により生存率は上昇していて、早期発見が生死を左右する鍵となる。医師は「普段から自分の乳腺の状態知っておくことで、何か変化があったら見つけやすくなる」とセルフケアの重要性を強調。医師に、それぞれの検診のメリットとデメリットと合わせて日頃からできる対策を聞いた。
「しこり」だけじゃない…見逃しやすい症状
乳がんについて、福井県済生会病院・乳腺外来の加藤久美子医師に話を聞いた。
乳がんの最も多い症状は腫瘤(しゅりゅう)、いわゆる「しこり」だ。しかし加藤医師は「皮膚が少しへこんだり赤くなったり、乳頭から分泌物が出る症状もある」と指摘する。
母乳を作る「乳腺」と呼ばれる組織にがんが発生し、放置するとやがて全身に転移する。患者数は30代後半から増え始め、60代前半が最も多い。多くは女性だが、まれに男性もかかる。
近年、乳がんの患者数は増加傾向にある。その要因として加藤医師は、高齢化に加え、ライフスタイルの変化を挙げる。「脂肪食が多くなり肥満になったり、運動不足も乳がんのリスクとして考えられている」
また、乳がんの一部は女性ホルモンががん細胞の成長を助長するタイプだ。出産回数が少ないと排卵の回数が増え、女性ホルモンにさらされる期間が長くなることで、リスクが高まるとされている。こうした複数の要因が重なり、患者数の増加につながっていると考えられている。
早期発見なら5年生存率99%
治療薬の発達により、生存率は上がっている。2018年のデータでは、診断や治療開始から5年後の生存率が、がんの転移が進まない段階では99%、内臓に転移が進んでいても42%となっている。
患者の半数は、自分で症状に気づいて受診しているという。
加藤医師は「乳腺は人により形も硬さも全然違う。普段から自分の乳腺の状態を鏡で見て触って知っておくことで、何か変化があったら見つけやすくなる」と強調する。
着替えや入浴の際に意識することが、早期発見への第一歩だ。
検診でも発見しづらい「高濃度乳房」
主な検診には、乳房をX線で撮影する「マンモグラフィ検査」と、超音波を使う「超音波検査」がある。マンモグラフィ検査は40歳以上の女性が2年に1度、公費負担で受けられる。
しかし、加藤医師は「しこりがあるのにマンモグラフィだと写らないことが、実はある」と明かす。
原因はアジア人に多い「高濃度乳房」だ。乳腺が多く皮下脂肪が少ないと乳房の濃度が高くなり、がんのしこりが正常な乳腺組織に埋もれて見えなくなることがある。
60代以上でも高濃度乳房の人は一定数いるという。
一方、超音波検査は濃度が高くてもがんを見つけられるが、検査を行う人によって精度にばらつきが出るデメリットがある。
メリットとデメリットを理解したうえで、自分に合った検診を選ぶことが重要だ。10月はピンクリボン月間。いま一度、自分や大切な人を守るため、早期発見につなげるための意識を持ってみて欲しい。

