秋風が吹き抜ける山形・酒田市の離島・飛島(とびしま)で、国の天然記念物に指定されている“飛島ウミネコ繁殖地”を守るための取り組みが本格化している。島内では野良猫によるウミネコの捕食が確認されていて、生態系の保全とネコの命を守る両立を目指し、官民が連携して野良猫を捕獲して島外へ移送する「飛島猫島外譲渡事業」が始まった。本土へ運ばれたネコたちは健康管理や訓練を受け、酒田市内で開かれた譲渡会で新たな飼い主探しが始まっている。
ウミネコ繁殖地を野良猫から保護
酒田市の離島・飛島には、国の天然記念物に指定されている「飛島ウミネコ繁殖地」があり、舘岩(たていわ)など6カ所が指定区域となっている。

一方で、島内には飼い主のいない野良猫が60匹~100匹暮らしている。

2025年に行われた調査では、繁殖地の1つである舘岩で、ネコがウミネコの幼鳥をくわえて運ぶ様子が撮影されるなど、繁殖への影響が懸念されていた。

ウミネコの繁殖環境を守るため、行政と民間が組織する“鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会”は「飛島猫島外譲渡事業」を実施。
ネコの捕獲作業には酒田市の職員やボランティアスタッフなど13人が参加した。

25匹のネコを本土へ移送し健康管理
9月24日午後、飛島から運ばれた25匹のネコが本土の港へ降ろされた。

ネコたちを運んだ船「新盛丸」の志田圭船長は、「初めてこんなにたくさんネコが乗ったので体調を心配して見ていたが、何とかみんな無事に帰って来られて良かった」と安堵の表情を見せた。

酒田市文化政策課の柿崎智之主事は、「事業の目的は、国の天然記念物に指定されている飛島のウミネコ繁殖地の保全だ。島内の指定地の中でネコに捕食されている現状もあったので、繁殖地を守るために実施している」と目的を説明した。
さらに、「文化財の保全が前提にあるが、一方の種を守るためにもう一方の種を無理やり移動させるということではなく、ネコの命にも配慮して新しい家族の元へ譲渡していく事業。どちらの生き物にとっても意義のある事業だ」と語った。
スタッフは今後も飛島を訪れ、10月末までに島内の猫の捕獲と本土への移送を進める方針。

譲渡会で早くも2件の引き取り希望
本土へ移送されたネコたちは健康診断・ワクチン接種・避妊去勢手術を受け、飼い主の情報などを登録できるマイクロチップも装着された。
人に慣れるための訓練を経た後、新たな飼い主への譲渡を目指す。

10月4日、酒田市の「ミライニ広場」で遊佐町の特定非営利活動法人(NPO法人)庄内アニマル倶楽部が主催する譲渡会が開催された。
シェルターなどで保護されているネコに加え、飛島で捕獲されたネコのうち健康状態が良好な5匹が初めて参加した。

会場を訪れた市民からは「今まで自由にしていたネコを移動させるのはかわいそうな気もするが、自然のウミネコを守りつつネコが安全安心な家庭にもらわれていけば、両方幸せになれるのでとても良い取り組みだと思う」といった声が聞かれた。
4日の譲渡会では、飛島から移送されたネコを引き取りたいという申し込みが2件寄せられた。

酒田市では申込者の飼育環境などを審査したうえで、一定期間一緒に暮らすトライアル期間を経て正式な譲渡につなげる計画。
柿崎主事は、事業を契機にウミネコの数が増えていくことを目標に掲げ、今後もネコの命に配慮しながら保全事業を継続していく姿勢を示した。
貴重な自然生態系の維持と動物愛護の両立を図る挑戦が続いている。


