自民党市議団の入船攻一議員が10月9日、議員を辞職した。市職員が勤務時間中に共同墓地の草刈りを行い、62万円余りの公金が使われていたという問題の責任を取ったかたちだ。「明白な政治倫理条例違反」と自ら認めた40年超のベテラン議員の辞職は、鹿児島市政に大きな波紋を広げている。
何が起きていたのか
問題の発端は2022年にさかのぼる。入船議員が鹿児島市環境衛生課の当時の課長に対し、鹿児島市下伊敷にある共同墓地の草刈りを要望した。当初、課長はその要望を断ったものの、上司と協議した上で引き受けることになった。

以降、2022年から2025年のいずれもお盆前の時期に、市職員が勤務時間中に草刈り作業を行った。2023年から2025年の参加者数は延べ約90人にのぼる。
さらに、公金まで支出されていた。2022年から2024年にかけて、当時の環境衛生課長が対象の墓地を「市有地」と偽り、業者への委託費として62万5900円の税金を支出していたことも明らかになった。私的な目的のために人員と税金の両方が動いていたことになる。

問題が拡大し、辞職へ
入船議員は当初、議員辞職の意向を示していなかった。9月30日の市議会議会運営委員会では、本会議での謝罪と議員活動の自粛にとどめる考えを表明するにとどまっていた。
しかし、事態は日に日に大きくなった。10月7日の定例会見で下鶴市長が草刈り作業にかかった市職員の人件費や公用車の燃料費について損害賠償の請求を検討していることを明らかにした。さらに8日の議会運営委員会では、入船議員からの要望が「不当要求行為やパワハラに当たる可能性がある」との市当局の見解も示された。
こうした流れを受け、入船議員は9日午後の議会運営委員会の冒頭で引責辞任の考えを表明した。
「議員という立場での依頼が職員の公平な職務の執行に直接的に影響を及ぼしたものであり、明白な政治倫理条例違反である。私は市議会議員を辞職する決意を固めた」

委員会後に辞職願を提出した入船議員は、報道陣の取材に対し「政治倫理違反を犯すようなことになって申し訳なかった。これからは一市民として市政の役に立てるように頑張っていきたい」と語った。損害賠償については「甘んじて私が責任を持って対応をしていきたい」と述べた。

各会派から相次ぐ「調査継続」の声
入船議員が所属する自民党市議団は委員会で「市民の信頼を損なった」と陳謝した。しかし他の会派からは、辞職で幕引きとすることへの異論が相次いだ。
自民党真政会の米山太助議員は「これで幕引きとはならないし、調査結果を含め当該会派の責任の取り方も明らかにしなければならない」と述べた。市民連合の伊地知紘徳議員も「議会として一翼を担う対応をしないといけないので、継続審査は当然のこと」と主張した。
共産党の大園竜也議員は「議員の立場でいろんなことを働きかけるのが不正なのかどうか、それを念頭に真相解明していくのが今後の再発防止に繋がる大事な調査」と指摘した。
専門家が指摘する「古い体質」
今回の問題について、鹿児島大学で政治学を専門とする藤村一郎准教授はこう指摘する。
「体質として古いのではないか。当該議員のコンプライアンスの感覚のなさが一番大きい。他方で、言われた側の行政も記録をとる、言われた事案を審査する、そういう機能がうまく機能しているのか、行政としての問題点を指摘せざるを得ない」

議員側だけでなく、要望を断りきれなかった行政側の問題も改めて問われている。
辞職だけで終わらせてはいけない
1984年に鹿児島市議に初当選し、当選回数11回を数える入船議員の辞職は、一連の問題に大きな区切りをもたらした。しかし、鹿児島市側が市有地と偽って公費を支出した経緯については、いまだ詳しい説明がなされていない。
議員の辞職をもって問題を終わらせるのではなく、なぜ行政内部でチェック機能が働かなかったのか、組織としての責任はどこにあるのか、引き続き徹底した究明が求められる。

