長野県松本市にある創業140年の老舗料理店が喫茶店として再出発しました。こだわりの器と民芸品に囲まれた店内で、くつろぎのひと時を。店を変えて続ける決断をした夫婦の思いを伝えます。
民芸品に囲まれた喫茶店
2026年7月、松本市にオープンした「喫茶 木曽屋」。ハンドドリップで1杯ずつ丁寧にコーヒーをいれます。
その店内には、「松本民芸家具」の数々―。
「松本民芸家具」は、松本で作られている国の伝統工芸品で、和と洋が調和したデザインが特徴です。さらに国内外から集めた食器もあり、落ち着いた雰囲気が漂います。
来店客:
「日本の食器以外にも世界の食器があってすてき」
「落ち着いちゃって長居したくなる」
店を営むのは萩原俊行さん(68)、直美さん(61)夫婦です。
喫茶 木曽屋・萩原俊行さん:
「来ていただいたお客さまにくつろいでいただければ」
喫茶 木曽屋・萩原直美さん:
「昔のお店のことを知ってる方も知らない人も、このお店の雰囲気とかを楽しんでもらって」
■明治創業の老舗料理店から喫茶店に
店の昔の名前は「田楽 木曽屋」でした。
創業は今から140年ほど前の明治20(1887)年ごろ。田楽という名前の通り、硬めの木綿豆腐に店秘伝のみそを塗った「田楽」が看板メニューでした。ほかにも鯉のうま煮や鯉こく、馬刺しなど、郷土の味が楽しめる料理店として繁盛していました。
しかし―。
萩原直美さん:
「ここ数年の物価高騰、原材料費とかいろいろ経費が上がってきた事情があり、なかなか経費が出ない状態が何年も続いたので、一度店をたたもうかとなりました」
料理を担当していた俊行さんも現在68歳。
体力的な問題や、付き合いのあった豆腐店が店を閉めたことも後押しとなり、2026年3月、料理店をやめ、7月に喫茶店として再出発しました。
萩原俊行さん:
「体力的にも、ついてこないっていうところがあったもんですから」
■「このお店を残したい」
萩原直美さん:
「民芸を皆さんに見ていただく機会がなくなってしまうので、やっぱり継続してこのお店を残したい気持ちがお互いにあったので、業態変更をしても続けることになりました」
負担を減らすため、座席はこれまでの半分ほどに減らしました。座敷があった場所は、集めた民芸品を展示するコーナーに。
萩原俊行さん:
「これはインドネシアのもの。父と母がインドネシアによく行っていたので、そこで買い付けてきたもの。美術品ではない、普段使いのお皿とかで特にきれいな、美しいものを民芸品というけど、素朴な美しさが好き」
■こだわりの一杯
レジの横には―。
萩原直美さん:
「お客さまの所にコーヒーの香りを届けるためにここでコーヒーを入れたいと思ってカウンターをつくってもらいました」
コーヒーをいれるのは主に俊行さんが担当。豆をひき、1杯ずつ丁寧にドリップしていきます。
萩原俊行さん:
「(味を)均一に入れるのが難しい」
コーヒーカップにもこだわり、少し大き目のサイズを用意しました。
■馬刺しの皿がデザート皿に
メニューは飲み物と軽食(ワッフル、ケーキ、おやき)だけです。
ワッフルは注文を受けてから焼いています。盛り付けたお皿は―。
萩原直美さん:
「以前はこのお皿は馬刺しを盛るのに使っていました。今はデザート皿になっています」
ワッフルを注文した客:
「グッド。トッピングもおいしい」
昔からの利用客:
「鯉こく、鯉のあらい、馬刺し、ここは一番のものを出していたから他の所にはまねできないし、田楽だって松本に来たら田楽だと食べていたから、名物がなくなるのはさみしいけど、また違った形でここで何か生み出していってくれればいい」
■「小さな民芸館」として
創業140年の店が新たに喫茶店として再スタートしました。
店の雰囲気はそのままに―こだわりの器と民芸品に囲まれながら、ゆったりくつろいでほしい。それが萩原さん夫婦の思いです。
喫茶 木曽屋・萩原直美さん:
「2人が元気でお店の中で働ける間は続けていきたい」
喫茶 木曽屋・萩原俊行さん:
「お皿とか見てもらって、『きれいなお皿だね』と言っていただくのがうれしい。民芸品みたいなものが数多くあるので、小さな民芸館みたいな感じでやっていれば、何かヒントを与えることも、好きな人にはできるかもしれない」
