広島県廿日市市の宮島・弥山山頂付近にある大聖院「霊火堂」で5月、火災が発生した。1200年以上燃え続ける「消えずの火」を守ってきた建物は全焼。出火原因は特定されないままだが、再発防止策を検討しながら、再建に向けた動きが始まっている。
出火原因特定されず…「少し不思議」
激しく燃え上がった炎で、霊火堂と離れが全焼した。幸い、けが人は出なかった。
霊火堂では、平安時代に弘法大師・空海が修行した際に残った火が、1200年以上にわたり「消えずの火」として燃え続けてきた。この火で沸かした湯は万病に効くとされ、多くの参拝者が訪れていた。「消えずの火」は別の場所にも保管されていたため残ったが、宮島の人気観光スポットが焼失した。
火災後、多くのボランティアなどが協力してがれきを撤去したが、現場には今も爪跡が残る。霊火堂があった場所は立ち入り禁止。火災から4カ月近くがたっても周囲の木々は黒く焦げ、当時の火の強さをうかがわせていた。
警察や消防による捜査が進められたが、8月、消防は出火原因の特定には至らなかったとする最終報告を公表した。
出火したのは、人がまだ多くない朝の時間帯。現場に防犯カメラはなく、大聖院の吉田正裕住職も謎が残ったままだという。
「出火場所とされるところには多少の燭台があったんですけど、早朝からろうそくがたくさん並ぶことはないので、少し不思議だなと感じています」
土塀やスプリンクラーで再発防止へ
霊火堂では、過去の経験を踏まえ、火災への対策が取られていた。
2005年にも今回と同じように火災が発生し、全焼。当時は、炉で木などを燃やした際の飛び火が出火原因とみられていた。そのため再建にあたっては、炉を深くしたほか、床や屋根を防火性の高い材質にするなど、火災が起きにくいよう改良が加えられていた。
それでも、再び火災が発生した。
吉田住職は「消えずの火が飛んでいくことはまずないと思いますので、他の火が何らかの形で出火原因になったんだろうなと考えています」と話す。
今回の火災について、燃焼工学を専門とする広島工業大学の八房智顯教授は、「消えずの火」によってお堂内に堆積したすすが火災の引き金になった可能性を指摘する。
「煙に含まれる燃え残りの成分が天井や壁、柱にずっと付着していて燃えやすくなっていたという可能性は高いと思います。それに火がついたのではないかなと」
今後の再建にあたり、吉田住職は建物内部をこれまでの木材から燃えにくい土塀に変更するほか、防火シャッターやスプリンクラーの設置などを検討している。
八房教授も、初期消火の重要性を強調する。
「建物自体が燃料みたいなものなので、何かの拍子に火がついたらもうたぶん止められないと思いますね。基本は初期消火の徹底だと個人的には思っています」
再建費用は約2億8000万円
再建に向け、大きな課題となっているのが費用だ。霊火堂の再建にかかる総工費は約2億8000万円を見込んでいる。建材費などの高騰により、前回の再建と比べると負担は倍以上に増えているという。
「国や県からの補助金もないので、全部寺で工面しないといけない。皆さまのご協力をいただいて、再建を進めていきたいと思っております」
こうした中、再建を支援しようという動きも広がっている。
特産品などの土産店や飲食店が立ち並ぶ宮島の表参道商店街では、火災後、霊火堂の再建に向けた募金箱を設置。商店街の呼びかけに約80店舗が協力している。
店では、海外の観光客からも募金が寄せられているという。
「お客さまがお釣りを入れてくれたり、海外の方も入れてくれたりしています。霊火堂はやっぱりいいところなので、早く再建してもらえればうれしいです」
吉田住職も支援に感謝する。
「うれしいですよね、本当に。皆さまの真心を集めて再建していくということで、本当に早く再建しないといけないなと改めて感じます」
今後、霊火堂は早ければ2026年12月に再建工事を始め、2027年11月の完成を目指す計画だ。
1200年以上にわたって守り続けてきた「消えずの火」を、再び霊火堂へ。火災の原因が特定されない中、再発防止策が検討され、多くの人から寄せられる支援を力に再建への歩みが始まっている。
(テレビ新広島)

