コロナ再拡大の中…IOC会長来日「開催への決意」アピール

大会の延期決定後、初めて来日したIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が11月16日、菅首相や東京都の小池知事、大会組織委員会の森会長らと相次いで会談した。

国内外で新型コロナウイルスが再拡大する中、2020年夏の東京オリンピック・パラリンピック開催についての不安を払拭するかのように、日本側と共に大会を成功に導く決意をアピールした形だ。

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バッハ会長は来日前の1週間、自主的に隔離生活をし、チャーター機で来日するほどの気の遣いようで、森会長も「この時期にわざわざお見え頂いて本当にありがたく思っています」と感謝の意を表した。

開会式「入場行進」めぐり表面化した“溝”

しかし、そんな両者の“溝”が表面化したのはバッハ会長が帰国した後、IOCのコーツ調整委員長との会見の席。

選手との距離を2mとする方針で検討を進めることが報告されたのを受け、報道陣から開会式での選手の入場行進がどうなるか聞かれた時だった…

コーツ調整委員長:
我々は伝統をあまり変えたくない。全てのアスリートに行進の機会を開会式で与えたいと思っている

これに対し森会長は、こう切り出した。

大会組織委員会 森会長:
今の質問は、おそらく東京大会の最大の関心事だと思う

「今までと違った入場行進にすべき」

大会組織委員会 森会長:
コーツさんもよくおっしゃるが、選手にとって行進することは権利で、誰も奪うことはできない。しかし安全安心な大会にするためにみんな大変な努力をしているわけですから、アスリートもある程度、我慢して頂かなきゃならん点もあると思います。今までと違ったもの(入場行進)になると思うし、またそうすべきだと僕は思っています

感染症対策や大会の簡素化の一環で、入場行進に参加する選手の人数を削減する可能性を示唆した上で、選手の意向を調査することをIOCに提案したことも明かした。

新国立競技場
新国立競技場

IOCは入場行進への参加を希望しない選手がいることや、選手村での滞在期間の短縮、役員の行進を制限することなどによって、結果として参加する人数は減るとみている。

これに対し、森会長はじめ組織委は本当に減るのか疑問を持っている構図だ。そのため、あえて会見の場で選手の希望を調査することを持ち出した形だ。

「新しい開会式」示せるか

そもそも「開会式」のあり方をめぐっては、大会の簡素化を検討する中で、当初からIOCと‟つばぜり合い”が続けられていた。

2020年7月、都庁での小池知事との会談を終えた森会長は報道陣にこう漏らしていた。

大会組織委員会 森会長:
開会式の時間を短くして、縮小すれば経費は安くなる。でもIOCはだめだ、と…。簡素化と言っても簡単ではない。考えているが、思うように進まない

別の組織委幹部は…

組織委幹部:
簡素化の議論もIOCは総論は賛成でも、各論になると様々な理由を持ち出して反対してくる。開会式に対するIOCの思いは強いものがあると感じるだけに、議論の出口はまだまだ見えない

それでも森会長の決意は固い。

大会組織委員会 森会長:
私はこれにこだわりたいと思っているんです

大会の肥大化や高コスト体質など、様々な批判にさらされるIOC。

新型コロナウイルスに打ち克った証として大会が開かれるならば、「新しい開会式の形」を示すことも必要だ。

「総論賛成・各論反対」のIOCと組織委の難しい駆け引きが続きそうだ。

(フジテレビ経済部 オリンピック・パラリンピック担当 一之瀬 登記者)

一之瀬登
一之瀬登

FNNソウル支局長。韓国駐在3年目。「めざましテレビ」「とくダネ!」など情報番組を制作。その後、報道局で東京都庁、東京オリンピック・パラリンピック担当キャップ。2021年10月ソウル支局に赴任。辛いものは好きですが食べると「滝汗」です。