思わぬトラブルに見舞われたとき、私たちを損害から守ってくれる「保険」。いつどこで災害が起きるか分からない時代、住居関係においても加入して備えておきたいものだ。
そのとき、特に賃貸物件に住む人は何を注意すればよいのだろうか。2019年の台風19号では、マンションやアパートが浸水被害に見舞われた地域もある。契約時に何気なく「火災保険」に加入した人もいると思うが、この保険は水害も補償してくれるものなのだろうか。
無料FP相談「マネードクター」を運営する、株式会社FPパートナーのファイナンシャルプランナー・丸山明仁さんに伺った。
火災保険は補償範囲に注意
この記事の画像(6枚)――賃貸物件の契約時に加入する保険は、なにをどこまで補償するもの?
賃貸契約時に加入する「火災保険」とは、家財の損害を補償する保険と貸主への損害を補償する保険がセットになったものです。法律で加入が義務付けられているわけではありませんが、貸主が入居条件などに設定していることが多いですね。
補償範囲は保険の種類などで細かく分類されていますが、一般的な火災保険だと「家財の補償」「事故時の諸費用補償」「賠償責任の補償」などをカバーすることができます。
・「家財の補償」
家財の損害を補償するもの
・「事故時の諸費用補償」
何らかの損害を受けたとき、修理費用以外に付随する費用を補償するもの
※残存物の後片付けに必要な費用、建物の仮修理費用など
・「賠償責任の補償」
借主が火災などで賃貸の住宅に与えた法律上の損害賠償金を補償するもの
――賃貸物件が水害を受けたとき、火災保険ではどこまで補償される?
水害の種類や、火災保険に「水災補償」が含まれているかどうかなどで異なります。
給排水設備の水濡れは一般的な火災保険でも補償されるケースが多いですが、洪水や土砂崩れなどによる損害は、水災補償に加入していなければ補償されません。
例えば、水災補償に加入していると、洪水や土砂崩れで家財が損害を受けた場合には、床上浸水か地盤面から45cmを超えて浸水した場合、もしくは再調達価格(同等の物を新しく購入する際の金額)に対して30%以上の損害が認められると補償されます。
ちなみに、火災保険の補償内容は保険証券で確認できるとのことだ。浸水リスクのある物件に住んでいる人は、水災補償が含まれているかどうかは確認しておくべきだろう。
火災保険で補償対象外となるケースも
――火災保険に加入していても、損害が自己負担となってしまうケースはある?
状況によっては、補償対象外となることもあります。例えば、開けっぱなしにした窓から雨が吹き込んだなど、借主に落ち度がある場合の損害は自己負担となってしまいます。また、火災保険には保険会社の支払いを一定金額まで免除する「免責金額」が定められているのですが、この免責金額以下の被害も自己負担となるので注意が必要です。
――補償対象か対象外かはどう判断すればよい?
保険の加入者本人には判断しづらいところがあります。「補償対象外だと思ったら、対象だった」というケースも、その逆も考えられます。少しでも不明点があるのなら、加入する保険会社などにその都度、確認することをお勧めします。貯蓄でカバーできないほどの経済損失を受けることや、リスクの深刻さを考えた上で、保険選びをすることが大切ではないでしょうか。
自分の「家財価値」と保険の「補償上限」を見比べよう
それでは、実際に火災保険を契約するときはどんなことに注意すればよいのだろうか。
――実際に火災保険を契約するときは、注意すべきことはある?
補償内容で災害リスクをカバーできるかどうかは、確認しておくべきです。例えば、台風に見舞われる地域では、風災、水災、水濡れなどのリスクが考えられます。このような損害を補償してくれる保険かどうか、保険証券を見るなどして確認しましょう。
また、実際の賃貸契約では、不動産仲介業者が保険代理店を兼ねているところもあり、火災保険の補償内容を確認せずに加入してしまう人もいます。その場合、家財の損害を保険で賄いきれない可能性があるかもしれません。
例えば、500万円分の家財が全損したとしても、加入している保険の補償上限が300万円であれば、その分の補償しか出ません。所有している家財価値と比べて、補償上限が適切かどうかは確認しておきましょう。
――火災保険の補償内容に満足できないのであれば、どうすればよい?
賃貸契約時であれば、不動産仲介業者に「こんな補償をしてほしい」などと相談してみましょう。保険会社を通じて、別プランを提示してくれることがあります。
火災保険に既に加入しているときは、ケースバイケースです。現在の契約が満了するまで追加や変更できないこともあるので、保険会社に相談してみましょう。
被災しても慌てずに状況証拠を残そう
――災害などで損害を受けたときは、どう対処すればよい?
まずは、自身が火災保険に加入したときの担当者に連絡しましょう。保険内容に熟知しているので、被害状況などを伝えることで、補償の請求漏れなどを防ぐことができます。
それから、被災状況を写真などで記録しておきましょう。保険会社に保険金を請求するとき、被害証拠として書類とともに提出するためです。その後は保険会社の事故受付などに連絡するのですが、大規模災害時は繋がりにくくなっている可能性もあります。ウェブサイトなど、電話以外の連絡方法や対応先を、事前に確認しておくこともお勧めします。
――いざというときに補償をしっかり受けるため、個人ができる備えはある?
まずはご自身が加入されている保険の補償内容を確認することから始めましょう。
個人が事前にできることとしては、次のようなことが挙げられます。
・ハザードマップなどで災害リスクを確認し、必要な補償範囲と保険金額を確認する
・賃貸借契約と火災保険の加入状況を確認。不足している補償があれば追加や変更をする
・保険証券の保管場所を確認しておく
・補償内容を一覧できるようにしておく
・万が一のとき、すぐ連絡できる相談先(相手)を見つけておく
賃貸物件においては、居住する地域の災害リスク、所有する家財価値などを考えて、まずは加入している火災保険の補償内容が適切かどうかを確認しておくことが大切なようだ。
賃貸物件の契約時に加入してそのままという人も今一度、保険証券を確認してみてはいかがだろうか。
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