パートナーの死後1人になったら…子どものいない夫婦のこれからの備え

「人生100年時代」を考える。

カテゴリ:暮らし

  • 自分が認知症になったら?子どものいない夫婦が気をつけたい「相続」
  • パートナー、自分の「死後」だけでなく「生前」の対策も
  • “備えあれば憂いなし”だが、元気なうちの対策が必要

「頼りにしていたパートナーが亡くなりこれからどうしたらいいの?」

大切なパートナーに先立たれた後、自分のこれからの身の振り方を心配される方が増えています。

それもそのはず、現在、単独世帯や子どものいない世帯が急増しているからです。

パートナーがいる内は夫婦2人で協力しながら生活していくことができます。ところが、死別などにより、いつかは必ず1人になります。

1人遺されたとき、多くの人が自分の将来に対して不安を抱えるのではないでしょうか。

特に亡くなったパートナーの遺産相続を進めていると、その煩雑さに驚くとともに自分の場合は誰が死後の手続きをしてくれるのか大きな疑問を抱えることになります。

死後のことだけではありません。現在、人生100年時代と言われるように、日本人の平均寿命が延びています。平均寿命が延びた分だけ、老後の備えが必要な期間も延びているのです。

子どものいない夫婦が気をつけたい「相続」

まずは、人生におけるリスクを1つ1つ把握しておくことが重要です。

心身ともにいつまでも元気に過ごすことができればよいのですが、加齢に伴い身体機能が落ちていくことが考えらます。そのため、転倒してしまったり持病の悪化などにより、入院したり要介護状態になることがあるのです。

その時に、自分の代わりに動いてくれる人はいるのでしょうか?誰に金銭管理をお願いしたらよいのでしょうか?

次に、身体だけではなく、認知症のリスクも現在頻繁に話題に上がっています。認知症の症状は個人差がありますが、時間や場所の感覚がズレたり、自分がした行動を忘れてしまいます。

このように認知症により自分1人での生活が難しくなった場合には、やはり誰かのサポートが必要となります。金銭管理の他にも、入退院の手配、施設への入所が必要ならその契約、不動産など重要な財産の処分など…。やはり、元気なうちからしっかりとしたサポート体制を構築しておく必要があります。

そして、子どものいない方は相続についても注意が必要です。子どものいない方の場合、相続人が果てしなく広がってしまう恐れがあります。

よく、夫婦2人だと、相続人はパートナーだけだと思われている方もいらっしゃいます。2人でこれまで築いた財産だから、という気持ちはよく分かりますが、相続人には兄弟姉妹あるいは甥姪までが含まれるのです。

ですので、何も相続対策を講じていないと、予想外の相続人が出現することがあります。この面識も連絡先も知らない相続人と連絡を取り、遺産相続について話し合うというのはかなりの心理的負担となります。

ここまでが、子どものいない夫婦において考慮しておかなければならない、将来的なリスクと言えます。

「死後」だけでなく「生前」の対策も

最も避けるべきは、「何もしない」ということです。

これまで、対策を取っていなかったばかりに、遺されたパートナーが苦労する事案を何度も見てきました。

やはり、将来自分の人生に起こり得るリスクを想定しながら、人生設計を立てることが重要となります。

子どものいない夫婦であれば、まずは「たすき掛け遺言」を遺しておきましょう。

お互いの財産をパートナーにすべて相続させる、としておくのです。この「たすき掛け遺言」があると、もしものときに威力を発揮します。

とはいえ、遺言だけでは残念ながら、まだ不十分です。というのも、遺言は主に亡くなった後の財産の分配を決めるものだからです。

死後だけではなく、生前への対策も打っておきましょう。

入院や要介護状態で動けなくなったときは、財産管理等委任契約で代わりに動いてもらう人を決めておきます。

認知症になって判断能力が衰えてしまった場合に備えて、任意後見契約を締結しておきます。任意後見人は、通帳の管理などの「財産管理」から、施設との契約や介護の手配などの「身上保護(監護)」を一体となって行っていきます。

また、葬儀や遺品整理などについて希望があるなら、「死後事務委任契約」を締結しておくことで対応できます。

これらの各契約に共通していることは、お願いしたい相手やお願いしたいことを自分で決めることができるということです。まさに、自己決定権である「自分の人生は自分で決める」ことに他なりません。

そしてもう1つ重要なことがあります。それは、いずれも元気な内でないと準備できない、ということです。

仮に認知症が進めば家庭裁判所が成年後見人を選ぶ法定後見というのを利用するしかなく、財産はほぼ凍結されると考えていた方がよいでしょう。

やはり「備えあれば憂いなし」の言葉どおり、体力と気力がある元気な内に、対策を取っておく必要があります。これらのことは、信頼できる弁護士や司法書士などに相談してみてください。

常に情報収集のアンテナを張りながら各制度を上手く活用することが、もしものときのあたなのお守りとなるのです。


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執筆=岡信太郎
司法書士、合気道家、坂本龍馬研究家。大学卒業後、司法書士のぞみ総合事務所を開設。政令指定都市の中で最も高齢化が進む北九州市で相続・遺言・成年後見業務を多数扱う。監修に『身内が亡くなったあとの「手続」と「相続」』(三笠書房)、著書には『子どもなくても老後安心読本 相続、遺言、後見、葬式…』(朝日新書)がある。

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