どこが変わったの?約40年ぶりにルールが変わる「相続法」

「人生100年時代」を考える。

カテゴリ:暮らし

  • 書き間違えなどを防ぐために…自筆証書遺言の要件緩和
  • 2020年には「配偶者居住権」が創設され配偶者の保護が手厚くなる
  • 「相続法」についても知識をリニューアルすることが重要

2018(平成30)年7月に約40年ぶりとなる民法(相続法)の改正が行われました。

2019年(令和元年)に入り順次、改正相続法が施行されています。

自筆証書遺言の“弱点”が補われる

まず、1月には、自分で書く自筆証書遺言の要件緩和が行われました。

これは、遺言で添付する財産目録については、パソコンで作成したり、通帳の写しや不動産の登記簿(登記事項証明書)を添付することを可能とするものです。

中には「なんだ財産目録だけなのか!?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、遺言は、不動産は登記簿(登記事項証明書)、預貯金は通帳に照らし合わせた、正確な記載方法で作成することが求められます。このため、自筆による財産目録では、書き間違いなどが非常に多くみられていたのです。

せっかくの遺言が、財産を特定できておらず、相続手続きの際に使用できないという事態も生じていました。それだけでなく、後々相続人の間でもめないようにと作った遺言であるにもかかわらず、その解釈をめぐって争いになることすらあったのです。

このように、自筆証書遺言のいわゆる弱点が改正相続法により補われた形となっています。

今回の相続法改正以前、私たち司法書士などの専門家は、「自筆証書遺言よりも公正証書遺言をお勧めします」と依頼者の方に伝えることがありました。

公正証書遺言というのは、公証役場で作成する遺言のことです。自分で書く自筆証書遺言と異なり、公証人のチェックが入るのでより正確な遺言が作れると言われてきました。同様に、公証役場が作成した遺言の原本を保管してくれるため、遺言が改ざんされたり、紛失してしまうといったリスクを回避することができるのです。

確かに、自筆証書遺言は1人で誰にも知られず書くことができる一方で、本人死亡後に発見されない可能性があります。また、自分に不利な内容だと思った相続人の1人が改ざんしたり破棄してしまう恐れも指摘されてきました。

改正相続法により新制度も

しかし、改正相続法によって、この点についても新たな制度が創設されようとしています。それが、法務局における「遺言書保管制度」です(2020年7月10日スタート予定)。

法務局といえば、土地や家あるいは会社などの登記を思い浮かべる方も多いかと思います。

今後はその法務局で、自筆証書遺言を保管する制度が始まります。つまり、公正証書遺言と同様に公的機関が遺言の原本を保管してくれるので、これまで見てきたような改ざんや紛失の恐れがなくなります。

さらに、「遺言書保管制度」では遺言が画像データ化され、亡くなった方の相続人は自筆証書遺言の有無を法務局で検索することができます。これまで、公正証書遺言おいてのみ制度化されていた“検索”という手法が、法務局における「遺言書保管制度」でも可能となるのです。

特筆すべきは、「遺言書保管制度」を利用していれば、自筆証書遺言であっても公正証書遺言と同様に、家庭裁判所での検認が不要となる点です。このことは、公正証書遺言と同じように、遺産相続における各手続きですぐに使用することが可能であることを意味します。

これは、相続人にとって大きな負担軽減と言えるでしょう。

配偶者の保護も手厚く

今回の改正相続法では、配偶者の保護についても手厚くなりました。中でも、これまでの日本の法体系になかった「配偶者居住権」という制度が創設されています(2020年4月1日スタート予定)。

現在、日本人の平均寿命が延び続けています。特に女性の伸びは大きく、90歳という大台も見えてきている状況です。

1つの例として、夫が60歳で亡くなり、配偶者である妻が90代まで生きた場合。妻は夫が亡くなってからこの先、30年以上も生きることになります。夫亡き後、妻の住居だけではなく、その後の生活費を確保する必要が出てくるのです。

そこで、今後は先程の「配偶者居住権」を利用することが選択肢となります。「配偶者居住権」は基本的に終身の間、夫と暮らしていた自宅に住み続けることができる権利です。相続発生後に行う遺産分割において、妻は「配偶者居住権」を選択することができます。

もし妻がこの「配偶者居住権」ではなく、自宅の「所有権」を取得してしまうと評価額によっては自己の相続分を超え、預貯金まで取得できなくなってしまう恐れがあります。場合によっては、遺産分割のために自宅を売却し、他の相続人への分配資金を確保しないといけない事態が生じていたのです。

この点、「配偶者居住権」は自宅を完全に取得した「所有権」と異なり、財産的な評価が低くなるものと思われます。自宅に住み続ける権利に加え、今後の生活費を確保することが期待できます。

この「配偶者居住権」以外にも、婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、居住用不動産の遺贈または贈与を受けた配偶者がより多くの遺産を受け取れるよう改正がなされています。

その他にも、一定の金額であれば遺産分割協議前であっても相続人の内の1人から故人の預金を引き出せるようにもなりました。これは、相続人の1人から引き出すことが可能であり、他の相続人の承認は不要となっています。このように、様々な改正がなされています。

これまでの相続の知識のままでは仇となる可能性すらありますので、知識をリニューアルないしリセットすることが重要となっています。誰にでも起こり得る相続について、最新の知識や手続きのポイントを押さえながら把握しておきましょう。


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執筆=岡信太郎
司法書士、合気道家、坂本龍馬研究家。大学卒業後、司法書士のぞみ総合事務所を開設。政令指定都市の中で最も高齢化が進む北九州市で相続・遺言・成年後見業務を多数扱う。監修に『身内が亡くなったあとの「手続」と「相続」』(三笠書房)、著書には『子どもなくても老後安心読本 相続、遺言、後見、葬式…』(朝日新書)、改正相続法について書かれた『済ませておきたい死後の手続き~認知症時代の安心相続術~』(角川新書、2019年8月10日発売予定)も。

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