アイガモロボ登場

田植えの時期となり、稲作農家の人は忙しい時期と思われるが、お米を育てる農法の一つとして「アイガモ農法」をご存じだろうか。

田んぼにアイガモを放すことで、害虫や雑草を食べてもらうことで、農薬等がなくても稲を育てられるという農法だ。
一方で、アイガモの外敵の侵入防止に電柵や防鳥糸設置が必要だったり、アイガモが成長すると稲を食べてしまったりすること、また、収穫を終えた後のアイガモの問題などいくつかの課題もある。

そんなアイガモの代わりの役割を果たす、ある物が登場した。
それがこちら!

提供:日産
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見た目も何とも可愛らしく、つぶらな瞳はアイガモに似ている気もする。
これは、日産自動車の技術者がボランティアで開発し、6月8日、山形県朝日町でお披露目された「アイガモロボ」だ。



日産が投稿したツイートには「お掃除ロボットみたい」や「江戸時代の人が見たら妖怪と間違えそう」などのコメントが寄せられて、そのフォルムが話題となっている。

この可愛らしいアイガモロボが、まさにお掃除ロボットのように害虫や雑草を吸い込んでいくということなのか。開発の理由などいろいろ気になるので日産に聞いてみた。

水を濁らせて雑草が生えるのを抑制

ーー開発の経緯は?

今回「アイガモロボ」の開発を行った、日産の技術者である中村哲也は、2013年に友人から「農薬を使わないでコメ作りをしたい」という相談を受けました。それをきっかけに“技術の日産”で培った知識・経験を活かしたロボットを使った農法ができないかの検討を始めました。そして、軽くて使い方が簡単であること、メンテナンスが容易であること、雨風に耐えられ、耐久性が高いこと、アイガモ農法でのコストと同等レベルで導入できること、エコエネルギーで永続的に動くことを目指し、試行錯誤を繰り返しながら、今回の「アイガモロボ」が完成となりました。


ーーアイガモロボはどのような役割を果たす?

「アイガモロボ」は、田んぼの水面を走行する際に水を濁らせることにより、光合成しにくくなる環境を作り、雑草が生えるのを抑制します。

ーー害虫駆除をする機能を備えている?

害虫駆除をする機能は備えておりません。

提供:日産
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ーーどのように動いているのか?

田んぼに設置されたWi-Fiと「アイガモロボ」に搭載されたGPSを使って、田んぼの中を自動で一巡できるようにプログラミングされています。Wi-Fiを使って、基点基準位置からの位置情報を通信でやり取りすることで、「アイガモロボ」の進路を調整し、適切に田んぼの中を自動運転させることができます。また、内部にスクリューが搭載されていて、稲を引き抜くことなく水面を動く、水中の泥を巻き上げ水を濁らす、「アイガモロボ」のバッテリー部分の熱を冷やすために水を巻き上げる役割を果たしています。


ーーアイガモ農法と違いはある?

この「アイガモロボ」は、減農薬の取り組みの一つである「アイガモ農法」の手法の難しさや期間終了後のアイガモの対応問題などを解決すべく生まれたものです。アイガモをロボットに仕立てた「アイガモロボ」がWi-FiやGPSなど最新の技術を使って水田をスイスイと自動で走行することで、サステナブルであり、経済的にも実現可能性の高い、減農薬を目指す解決策の一つとしてコメ作りに携わります 。

親しみを持ってもらえるデザインを追求

提供:日産
提供:日産

ーー自動車メーカーの日産がなぜ今回農業に関わる製品を開発したのか?

本件は日産の技術者によるボランティア活動です。日産としては、この取り組みを応援しています。


ーーかわいいビジュアルだが、なぜこのビジュアルにしたか?

皆様に親しみを持っていただけるようなデザインを追求しました。

提供:日産
提供:日産

ーー一般に販売されているか?

一般には販売されていませんが、アイガモロボはアイガモ農法と同等のコストで導入できます。

ーーアイガモロボで今後達成したいことは?

今後、検討してくださっている農家様でも検証をしていきたいと思っております。また、中村としては、今後、製品化をされたいという方がいらっしゃいましたら、技術協力はしたいと思っております 。


アイガモ農法の問題を解決し、「農薬を使わないでコメ作りをしたい」という声から生まれたアイガモロボ。
日産の技術力を生かしたという点も興味深いが、もし製品化につながり普及することになれば農作業をする人の癒やしにもなりそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。