自民党の岸田派(宏池会)は23日午後、国会近くの派閥事務所で総会を開き、派の解散を正式に決定した。出席者からは、国民の政治への信頼回復のための岸田首相の決断を評価する意見が相次ぎ、反対意見はなかったという。
前会長で派閥を離脱中の岸田首相は出席せず、同じ時間に都内のホテルで麻生副総裁、茂木幹事長、林官房長官と昼食をとりながら会談した。
会の冒頭に、座長を務める林官房長官の「現在、政治資金パーティーをめぐる問題に端を発し政策集団に対して国民の皆様から大変厳しい目が注がれている。こうした中で宏池会幹部で相談の上、政治の信頼回復を図る観点から、大変重い決断になるが、けじめをつける意味で宏池会を解散する方針にさせていただいた。
政治改革の議論を前に進めるためにも何卒ご理解いただけると幸いです。自民党で最も伝統ある政策集団であり、66年の歴史を持つ宏池会の幕を閉じることは、私自身も国会議員として28年お世話になってきた宏池会がなくなることに、率直に言って様々な思いが胸に去来している。ただすべては政治の信頼回復のため。何卒皆様のご理解をよろしくお願いします」とのメッセージが代読された。
岸田派の事務総長を務める根本元復興相は「総理から直接相談を受け、政治への信頼を回復するために派閥を解散・解消すると。私はそのときに総理の刷新本部長として、自民党総裁としての覚悟を感じたので了解させていただいた」と語った。その後、出席議員の意見交換が行われた末、宏池会の解散を正式に決定した。
総会後、事務総長を務める根本元復興相は「我々は宏池会で政策を磨きながらやってきた絆もあるからそこはこれからも大切にしたいと思うが、宏池会という派閥としてはきょう解散を決めた」と語った。
岸田派をめぐっては、岸田首相が18日に政治資金パーティー問題のけじめと国民の信頼回復のためとして解散の意向を表明し、岸田派幹部と個別に会談して方針を伝えていた。
宏池会は1957年に池田勇人元首相が設立した派閥で、今の自民党の派閥の中で最も長い歴史を誇る。リベラルかつ経済重視の政策が特徴で、池田氏のほか、大平正芳氏、鈴木善幸氏、宮沢喜一氏を総理大臣として輩出し、岸田首相は5人目の総理経験者となっていた。
1994年末には、自民党の政権転落後の改革として派閥解消が掲げられたのを受け、いったん解散していたが、翌年中には事実上復活し、その後正式に派閥として再始動した。
宮沢氏以降は、加藤紘一氏や堀内光雄氏、古賀誠氏が会長を務めた。また、かつては河野洋平元総裁や麻生太郎副総裁も所属していたが、加藤氏の会長就任に伴い宏池会を退会し、河野グループを立ち上げ、現在の麻生派に発展した。谷垣禎一元総裁もかつて所属していて、岸田派と麻生派と谷垣グループを合流させる「大宏池会構想」がたびたび浮上してきたが、実現することはないまま、宏池会は66年あまりの歴史に幕を下ろした。