“初期費用無し”でブランド設立

新人デザイナーが初期費用無しで自分のブランドを立ち上げることができる。

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10月に設立したばかりの新ブランド 「SYDE(サイド)」。
デザイナーは、6月にロンドンでのファッション留学を終えたばかりのハンナさん(22)だ。

留学終了からわずか4カ月のスピードでブランドが設立できたワケとは。

10月中旬、この日は「トワルチェック」と呼ばれる新商品のミーティングが行われていた。

佐藤さん: ぴったりしている方がいいってこと?
ハンナさん: そうですね。ぴったりさせたい。

細かく修正を伝えるデザイナーのハンナさん。ブランドの設立には不安があったという。

「SYDE」デザイナー・ハンナさん:
ブランドをはじめたいと思っていても、どうやってはじめたらいいのか分からなくて、とりあえず就職するべきなのかアルバイトをしてお金を貯めてブランドをやっていくのか、どっちかしかないと思っていたんです。

デザイナーを支援しブランドを育てる

ハンナさんのブランド設立を叶えたのは、「maison(メゾン)407」というプロジェクトだ。

縫製の仕事を全国の職人にマッチングするサービスなどを運営する、株式会社ステイト・オブ・マインドが立ち上げたプロジェクトで、面接に合格したデザイナーにパタンナーなどのスタッフを配置し、服の生産やブランド運営のサポートを行う。

一般的にブランド立ち上げには洋服の製作や在庫などで膨大な初期費用がかかるが、このプロジェクトではデザイナーは初期費用無料でブランドを立ち上げることができる。
販売の粗利益のうち、4割がデザイナーの報酬となる仕組みだ。

ステイト・オブ・マインド 佐藤杏里取締役:
ブランドをはじめること自体はすごく簡単なんですけど、ブランドを続けていくことというのはすごく難しくて、経験や実績、何も持っていない方がデザイナーとして1年でちゃんとブランドとして確立していけるように、私たちが一緒に運営しながらブランドを育てていくというようなプロジェクトになっています。

服の販売には、段階的に生産数を増やしていく「ステップ制度」という条件を設定。

最初は10着程度から生産し、ブランドを存続させるには1年で「2週間以内に50着程度を完売」などの条件をクリアする必要があり、着実にブランドを成長させていく考えだ。

技術継承につなげる

縫製業界の再生を目指すスタートアップが行う、ブランドの立ち上げを支援し“基礎体力”をつけさせるこのプロジェクト。

そこには、日本の縫製職人への思いがあった。

ステイト・オブ・マインド 佐藤杏里取締役:
縫製はほとんど海外で行われていて、日本国内でやると価格が合わなかったりとかしてしまうんですけど、いま育てないと、ここで日本の技術というのは途絶えてしまう。
高い技術の日本の縫製職人やパターン職人というのがどんどん育っていくためには、やっぱりブランドが継続していなくてはいけないので、継続できるブランドを育てていきたいと思っています。

「やってみる・試してみる・修正する」

三田友梨佳キャスター:
マーケティングやブランド論を研究している一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。
若いデザイナーによるブランドの立ち上げはどうご覧になりましたか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
最も成功している起業家は小さく始めて、大きく考えることができる人だと言われています。 ファッションの世界も例外ではなく、シャネルやプラダもこのハードルをクリアして今日のラグジュアリーブランドを築いています。

アイデアや大きなビジョンを掲げるだけではなく、小さなビジネスでも成功への道筋を描くことができるスタート地点を見つけて「やってみる・試してみる・修正する」 ことを始めることが大切です。

まず小さな単位で製品化して、コアなファンを増やして利益を得る。
その利益を再投資して顧客のニーズに寄り添いながら事業を成長させることが大事です。

三田キャスター:
最近はデジタルの活用もあって自分でビジネスを立ち上げやすくなっているようですね。

鈴木智子さん:
デザイナーがブランドを立ち上げる際ネックになっていたのが、ある程度まとまった資金を用意することでした。

それが、オンライン上のプラットフォームを活用することで、小さな資本でもビジネスを始められるようになりました。
いまデジタルの力を活用して、ファッションに限らずゲームや音楽など様々な分野の才能が若くしてビジネスを立ち上げる 「クリエイターエコノミー」が台頭しています。

三田キャスター:
プラットフォームを利用することでビジネスを「やってみる」、 製品やサービスの販売を「試してみる」 ハードルが下げられる訳ですね。

鈴木智子さん:
多くのクリエイターが利用するプラットフォームなので、「修正する」という点でも力になってくれます。

プラットフォームには様々な顧客のニーズがデータとして蓄積されるため、売れる商品を作るために活かすことができます。
個人のクリエイティビティがビジネスになるマッチングサービスやプラットフォームが機能することで、起業家が増えることに期待したいです。

三田キャスター:
ブランドの立ち上げはSNSが普及して個人でも発信できる土壌が整った今、あらゆる人にチャンスが存在しているんだと思います。
ですが、立ち上げるだけではなくて、長く愛されるためには小さく始めて大きく育つ可能性のある気づきを見つけて広げていくことが重要なようです。

(「Live News α」12月7日放送分)