臨時国会中に「削減法案」の成立を目指す、自民党と日本維新の会。
議員定数削減を連立の“絶対条件”とする維新が、“先例”とするのが…反対する議員との乱闘騒ぎの果てに、“強行採決”した大阪府議会での定数削減です。
しかし今、“身を切る改革”の裏で、少数会派からは批判の声も上がっています。
「議員定数削減」は、一体、何をもたらすのでしょうか。
■国会議員の削減 街では好意的な意見が8割以上
衆議院議員の1割削減を目指すことで自民党と合意した、日本維新の会。
国会議員の削減について街で聞いてみると…。
【街の人】「無駄な人は削減した方がいいんじゃないですか」
【街の人】「国会で居眠りされてる人とかも見てるから、その人の給料分(使われる)税金が減るんだったら、私たちにプラスかなと」
関西テレビが行ったLINEアンケートでも、216人中8割以上の人が「賛成」と回答、好意的な意見が多いようです。
■「ゾンビ議員」50人削減で35億円のコスト減
吉村代表は2012年、当時、民主党の野田総理が「80議席削減」を掲げ、自民党などと合意したにも関わらず、「まだ果たされていない」とした上で…。
(Q.(議員定数削減は)有権者にどんなメリットが?)
【日本維新の会 吉村洋文代表】「有権者との約束を守るということです。政治家が、自分たちの身分に関する約束守らずして、他の約束を守れるとは思いません」
そして、吉村代表が特に削減すべきだと強調しているのが…。
【日本維新の会 吉村洋文代表】「比例代表のところなんて、小選挙区で落選した人が、落選しているのに当選してくる。“ゾンビ議員”いっぱい作るような制度、ほんまにいいんですか!」
小選挙区で落選したものの、比例代表で復活当選するいわゆる「ゾンビ議員」。
当選者以外への投票を「死票」としないための制度ですが、吉村代表は、176ある比例議席を、50ほど減らすことを主張しています。
50人の議員を削減した場合、コストがどれだけ減るのか試算すると、年間およそ30億円から35億円程度とみられます。
■ゾンビ議員は「政策実現の方にこだわる」、「多様な意見を反映できなくなる」
ただ、維新の衆院議員のうち3分の1にあたる12人がゾンビ議員。
そのうちの1人、過去3度の選挙で、すべて比例復活した三木けえ議員は…。
【過去3度“比例復活”当選 維新・三木けえ衆院議員】「いわば政策実現のためなら、自分たちの席がなくなってもいいという覚悟で連立に入って行った。私も比例で復活をさせていただいてる議員ですけど、そこは自分の身分にこだわらずに、政策実現の方にこだわっていこうというのが、今の維新の議員の思い」
一方で、こちらも比例復活でしか当選したことがない野党議員からは、「多様な意見を反映できなくなる」との声が上がっています。
【過去2度“比例復活”当選 立憲・尾辻かな子衆院議員】「(当選者が)51対49という場合に、49の民意を一体誰がどういうふうにして担保するのかっていうところで、全部が51の1政党だけになってしまったら、そっちに期待した皆さんの声が全く届かなくなる」
■大阪で「議員定数削減」が強行採決
私たちの生活にも関わる議会運営。「定数削減」でどうなるのか。
先行しているのが、「大阪の地方議会」です。
【日本維新の会 吉村洋文代表】「少なくとも維新の会は、実際それを大阪という限定されたエリアですけど、まず自分たちの事から始めた、議員定数の削減を実際にやりました」
2011年、当時の橋下代表率いる維新が、大阪府議会に定数削減の条例案を提出。
【大阪府議会 野党会派(2011年6月)】「こんなのやったら府議会の名折れだよ~はずかしい~やめて~」
【維新の会(2011年6月)】「入れ!入れ!」
野党会派がバリケードで抵抗するも、最後は強行採決され、当時109あった定数は、最終的に79にまで削減されました。
いま、府議会はどうなっているのか取材班が訪れると…。
【記者リポート】「議員の出欠票、4段あるうち維新の議員が3段目まで名前が書いてありまして、維新の議員が多いかがわかると思います」
定数79のうち、維新が6割以上を占めています。
■少数政党は「質問、討論できない」
一方、少数会派は…。
【大阪府議会民主ネット 山田健太府議】「(仕切りの)上が空いてるんで、ちょっと色んな議論の声が、お隣さんとかに聞こえてしまいがち」
2人会派の「民主ネット」に所属する山田健太府議が案内してくれた控室は、部屋をパーティションで区切っただけ。
そして民主ネットのような5人未満の会派は、議会活動にさまざま制限があり、そのひとつが「本会議での代表質問や討論ができない」実情があるといいます。
【大阪府議会民主ネット 山田健太府議】「それこそ万博で、例えば建設費の未払いであるとか、そういう課題に対しても、万博終わってから議論する機会がまだ持ててない」
この現状に、先週会見を開いた山田府議は、次のように主張しました。
【大阪府議会民主ネット 山田健太府議】「大阪府議会においては、多数派によって少数派、少数民意が切られる形の選挙制度改革がされてきました」
定数削減で、複数の議員が当選できる選挙区が減った一方、1人しか当選できない選挙区が増加。少数政党が当選しにくくなり、維新が多数を確保する結果に。
■「少数の民意が失われた」 維新は説明不足と専門家の指摘
一方、大阪維新の会の副代表を務める森和臣府議は…。
【大阪維新の会 森和臣府議】「『議員の数を減らしたから、民意が届かない』というのは、その議員さんが席を守りたいだけ。選挙というのは、政党でも人でもなくて、政策を選択するものだと思っている」
専門家は、議員定数の削減によって「少数の民意が失われた」ことについて、「維新は説明不足だ」と指摘します。
【拓殖大学 河村和徳教授】「通常いろんな改革っていうのは当然、副作用も発生するわけですから、そこまで説明するのが、公党の責任だと思いますので、大阪市や大阪府の効果について、もう少し説明をしてあげて、判断材料を大量に有権者に提供した方が、より話を進められる」
賛否が分かれる議員定数削減。慎重な議論が求められています。
■「身を切る改革だけじゃダメ」橋下徹さん
“維新の創設者”である橋下徹さんは、番組に出演し「身を切る改革だけじゃ駄目で、統治機構改革も必要だ」と話します。
【橋下徹さん】「もちろん丁寧な説明は必要なんですけれども、少数のグループが分散している状況、かつての大阪府議会、大阪市議会がどういう状況だったかというと、何にも改革が進みませんでした。役所が嫌がることは、役所が暗躍して、過半数取れないように調整していくわけですよ。
15年前、20年前の大阪がどうだったんですかというと、今は確かに過半数を1つの政党、維新の会が持っています。維新の会の意思によって、色んな大阪の改革が進んできて、これ賛否両論ありますけども、大阪万博だって少数のグループが乱立してたら絶対できなかったと思いますよ」と持論を述べ、「維新の会がすべて正しいってわけじゃないんですよ」と話しました。
【橋下徹さん】「維新の会が多数(議席を)持ってますけど、裏返せば、今、野党がちゃんと支持を得れば、ひっくり返すことができるんですよ。これがかつての少数グループが乱立している状況だったら、ひっくり返すことができなくて、固定化してたわけです。
だから、いつでも野党もチャンスがあると。今、改革を進めていかなきゃいけないっていう状況では、政党の数がある程度整理した方が(いい)」
【吉原キャスター】「少数の意見とか、多様な意見が反映されにくくなるという指摘もありますが」
【橋下徹さん】「国家全体、大阪府全体という大きな話をする時に、維新の説明が足りないのは、身を切る改革だけじゃダメで、統治機構改革。
国の政策は右か左。大阪府ぐらいだったら右、真ん中、左ぐらい。大きく方針を決めるのが国・大阪府であって、多様な民意はもっと身近な生活の市町村というような整理も必要だと思いますけどね」
■「『身を切る改革』というのは、言い過ぎじゃないか」安藤優子さん
一方、ジャーナリストの安藤優子さんは「本当に『身を切る改革』なのか」と疑問を呈します。
【安藤優子さん】「『身を切る改革』というのは、言い過ぎじゃないかって実は思ってるんですよ。身を切るってのは、つまり議員の数を減らすっていうことで、自分たちの身を切るんだよって言いたいんだと思うんですが、本当に『身を切る改革』なのかなっていう疑問があります。
日本の国会議員がそんなに多いのかというと、データ的に見ると、例えばG7の国の中で、100万人に対して国会議員の数は日本は5.8人なんですよ。でもイギリスは21.1人で、決してG7の中で多い方ではないわけですよ。
そこにメスを入れるということは、どういうことなのか。今なぜか?というところを考えると、その身を切るっていう言い方と、もう1つは無駄を省くということだと思うんですね。
無駄を省く=政治とカネの問題をそこでもって埋め合わせようという、ある種のイメージ戦略みたいな(感じがする)」
【安藤優子さん】「(議員が)本当に多すぎるから省くとして、例えば寝てる議員の方。ああいうの見ると、いらないんじゃないって思われる。(議員定数削減=身を切る改革の)イメージだけでいくのは、私はあんまりよくないんじゃないかな」
【橋下徹さん】「政治とカネの問題を棚上げしちゃったんで、僕は維新の藤田さんみたいな対応はよくないと思います」
■日本の議員数は「多くない」という安藤さんと「整理すべき」という橋下さんの議論が白熱
【橋下徹さん】「OECDで国会議員が多いって言うんですけど、これは国の規模によるんですよ。イギリスにしてもヨーロッパの方は、国会議員も地方議員と同じような仕事をする。アメリカは、国の仕事と地方の仕事をきちっと整理してるから、国の仕事をやるには国会議員そんなにいらないでしょうと。
それから『民意が反映しなくなる』と言うんですけど、今の国会議員の数で民意が十分反映してんのかと。国民はそういう疑問もあると思う。
だから国の仕事をもっと整理して、国会議員の数を整理しながら、国会でやってる仕事をもっと地方に移して、地方議員の中で多様な民意を反映させる。『身を切る』というよりも、『統治機構改革』をもっと維新は言った方がいいんじゃないのかなと思います」
日本の議員数は「多くない」という安藤さんと「整理すべき」という橋下さんの議論が白熱します。
【橋下徹さん】「民意は反映だけじゃなくて、民意の集約というのも必要。民主主義にはね、反映だけじゃないんですよ」
【安藤優子さん】「それは何かを突破口を開く時の集約が必要ですけれども、議論するときは少数意見も含めて議論の遡上(そじょう)に上がらないと。公平性は担保できないんですよね」
【橋下徹さん】「だからそれは国の役割、地方の役割で、多様な民意を反映させるのは地方で。集約していくのが国だとか、こういう色んな議論があると思うので、そこはしっかり説明はしてもらいたい」
(関西テレビ「newsランナー」2025年11月5日放送)