鹿児島県出水市で日曜日に開催された音楽ライブ、主役はこちらの男性です。
実は末期ガンで2025年3月までの余命宣告を受けた小学校教師です。
余命の時期を超え、闘病しながら熱い歌声を届けた男性、そしてライブを企画した教え子や保護者たちの思いを取材しました。
出水市のホールで開催された音楽ライブ。
プロ顔負けの、ギターと歌唱力を披露するのは、小学校教師、高島芳倫さん51歳。
子供たちや保護者から「たかしまっちょ」の愛称で親しまれています。
大学では美術を専攻しましたが学生時代に友人の影響でギターを始め、これまで路上ライブやイベントで、その腕を披露してきました。
29歳で小学校教師になり、4校目の赴任先となった西出水小学校に務めていた2022年1月。
48歳の高島さんを異変が襲います。
膵臓ガンでした。
一度は手術を受けたものの、その後、再発が確認され、医師からは2025年3月までの余命を宣告されました。
ライブ3日前の6月5日。
本番前最後の実行委員会が開かれました。
集まったメンバーは、西出水小学校の教え子の保護者を中心としたメンバーです。
ライブの実行委員会・本田勝副委員長
「先生のためにと思っているが、まわりは逆に力をもらえると期待をしている人もいる。しっかりできる準備をして、本番に備えたい」
これは2023年の映像。
がんになって高島さんが初めて行ったライブです。
病気に負けずに「奇跡を起こして欲しい」そんな思いで企画されたそうです。
それから2年、今、高島さんは抗がん剤治療もやめ、自宅で療養しています。
余命宣告の時期を乗り越え、再びステージに立つことの意味をこう考えています。
高島芳倫さん
「(会場に)立つのは自分だという感覚は無く、例えば病気や元気のない人たちに勇気を与えてくれるという人がいるらいしいと、そのための力として僕も力を貸す感覚で、スタッフの一人というような感覚になっているからできる」
ライブ前日。
準備にはかつての教え子たちも集まり、ロビーの飾り付けや高島さんが描いた油絵やゆかりの人々の作品も展示されます。
教え子
「一番は、恩返しが強いかもしれません。みんなが楽しめるライブにしたい」
「先生にはお世話になり、準備を手伝いに来た。元気な姿を見たい」
実行委員会・井川知明実行委員長
「妥協せずに、一人一人と真剣に付き合うから、高島先生には(人が)付いてくる。あしたも大成功、間違いないと思っている」
こうして向かえたライブ当日。
会場を訪れたのは県外や離島からの人も含め650人以上。
これまで勤務してきた学校の関係者や人づてに高島さんの活動を知った人たちです。
また、その一角には、ギターを始めるきっかけを作った友人が祈りをこめてつくった作品も。
高島さんの友人・笹河博幸さん
「すごいなぁ、奇跡が起き、いろんな人の勇気になっていると思う」
そして、ステージの始まりです。
高島芳倫さん
「支えてくださる人、励ましてくださる人、信じてくれる人のおかげで生かされている。裏切れないですよね。応援よろしくお願いします」
ライブでは、ソロを含め計15曲のカバーを披露。
妻の真紀さんや二人の子供たちと共に演奏する場面も。
ラストを飾るのは、
ゆずの「またあえる日まで」。
実行委員などスタッフも舞台に上がり、一緒に歌います。
宣告された余命を超え、魂の歌声をホールに響かせた高島さん。
歌詞の言葉の通り、またあえる日を誓い会場全体が一つになります。
「また、会える日まで、また、会える日まで」
高島芳倫さん
「言葉にならないですよね。会場のみんなの命を背負って歌ったような気分。命を背負って歌ったような気分。命の時間を共有し、ありがたい時間だった。みんなにとっていい時間だったら良かった」
ホールの外では高島さんから勇気や元気をもらおうと長蛇の列、ライブの熱は冷めません。
熊本県からの来場者
「すごいなと思って、心に残りました。忘れません。元気でまだまだ、2回3回やって欲しいです」
奄美勤務時代の教え子
「先生は(病気に)負けていなかったので、今後も奇跡が起こると信じている」
教師と教え子や保護者たちの絆が一つの形になったライブ。
多くの人を勇気づけた高島さんの演奏がまだまだ聞けることを願わずにはいられません。