鮮やかな花弁と繊細な姿が特徴的なアツミゲシ。
繁殖力が非常に強く、花が咲くこの時期、さまざまな地域で発見される。
先月には、福岡県の「ネモフィラ畑」で発見された例も。
しかし実はこの花、麻薬の一種、アヘンの原料となる成分を含む植物なのだ。許可なく栽培することは「あへん法」により禁止されている。
以前、兵庫県・淡路島では、このアツミゲシが大量発生。2022年に発見された数は、およそ1万3000本にもなった。
ひたすら抜くしかないというアツミゲシ。花が咲くいま処分しなければ種が飛んでしまい、翌年にはさらに数が増えるという。
気づかないうちに近くまで迫っている危険植物。どうすれば身を守れるのだろうか。
“植物のプロ”である、大阪公立大学附属植物園の名波哲園長に詳しく聞く。
■アツミゲシの特徴と見つけた時の対応
「アツミゲシ」の特徴について名波哲園長は「立派な花をつけ目立つ花である」と話す。
名波哲園長：アツミゲシは地中海地方原産の野生植物です。人の手を経ず、品種改良を経ずに、これだけ立派な花を咲かせる植物というのは珍しいと思います。そしてこの大きくて鮮やかな紫色の花。これが日本の草むらや花壇の中に入っていれば、当然目立ちますし、人目をひくと思います。
青木源太キャスター：自分の土地に知らず知らずのうちに、種が飛んできて、自生してしまったらどうすればいいんですか？
名波哲園長：『これは大事に育てたいな』という気持ちが湧くのも無理ないことだと思いますが、麻薬の成分になる『モルヒネ』を高濃度に含んでいますので、直ちに保健所あるいは警察に連絡して処分してもらうことが必要です。
■アツミゲシの毒性と人体への影響
（Q.香りはある？）
名波哲園長：一般的ににケシの仲間の香りは良くありません。ですから見た目は素晴らしいですけど、少なくともいい香りはそれほどしない。
（Q.花を嗅ぐことの人体への影響は？）
名波哲園長：そこまで強い毒性もないと思います。
（Q.手がただれるとかは？）
名波哲園長：（アツミゲシに）傷をつけますと、白いミルク状の液体が出ます。そこにはアルカロイドという毒成分が生まれていますので、人によっては、この植物でもかぶれる可能性はあります。
コメンテーターのモーリー・ロバートソンさんは、「麻薬にするには手を加えることが必要で、花の状態でも麻薬としての危険性があるのか」疑問を呈す。
モーリー・ロバートソンさん：例えば、アフガニスタンのタリバンは、ケシの栽培を黙認していた時期が長かったので、そのときはドキュメンタリーなんかで、わざと傷をつけて、その汁を子供とかに集めさせて、それを工場に持って行って、何段階も化学薬品で色々やった最後に、モルヒネが出てくるんですよ。ですから花のまんま、（麻薬成分が）神経に影響することは無いと思うのですが。
名波哲園長：それはありません。
モーリー・ロバートソンさん：だから密造しないと、科学的な工程を経ないと、そもそも危険度はかなり軽いはずです。
■合法なケシと違法なアツミゲシの見分け方
ケシの花といえば、アグネス・チャンの歌「ひなげしの花」という曲がある。
「ひなげしの花」は“ケシ”と入っているが、これはどうなのだろうか？
名波哲園長：ヒナゲシは麻薬成分を含んでおりませんので、違法ではありません。ですからお庭で育てていただいたり、素敵な歌で歌っていただくことも問題ありません。
青木源太キャスター：違法なケシの見分け方も教えてください！
名波哲園長：ヒナゲシ等の『問題のないケシ』は、葉が普通に茎に付きます。また、葉の切り込みが深くて、葉全体の形を見ると、まるで魚の骨あるいは鳥の羽毛のように見えます。それに対してアツミゲシなどは、葉の根元が茎の周りを抱き込むようにつきます。そして葉の縁は不規則なギザギザがありますが、全体的に見ると一枚の、私たちが普通に思い描く葉の形をしています。
（Q.茎を抱き込む葉の付け方は珍しい？）
名波哲園長：いえ、植物の中では少数派でありますが、色んな植物で見られる性質です。普通に日本のそこら辺ではえている雑草にも見られる種があります。
青木源太キャスター：アツミゲシに関しては違法ですので、この花の特徴とか、葉っぱ、茎などをちょっと注目してみてほしいなあというふうに思います。
（関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ！」2025年5月20日放送）
