ここ最近、スペースXの打ち上げのニュースをよく見ると思いますが、宇宙産業で先行しているアメリカでは2024年、1年間で約150回ロケットの打ち上げに成功しました。
牽引しているのは民間企業です。
宇宙開発の今を取材しました。
スマホを掲げ、集まった人々。
目的はロケットの打ち上げ。
この日、アメリカ西部カリフォルニア州にあるロケットを打ち上げるエリアから発射されたのは、衛星を使ったインターネット通信サービス「スターリンク」の衛星27基。
実業家イーロン・マスク氏が率いる民間企業「スペースX」のロケットです。
打ち上げを見に来た人は「ほんとにすごかった。空が燃えているみたい」「すっごく速かった」と話しました。
次々とロケットが打ち上がるこの場所。
現地では、ちょっとした観光名所になっています。
スペースXは2019年に初めてスターリンク衛星の打ち上げに成功。
その後、わずか6年間で約7000基を軌道に乗せ、これまでインターネット通信が行き届かなかった世界中の地域にサービスを提供しています。
宇宙開発で他社を大きくリードするスペースX。
2014年以降、世界で商業衛星の打ち上げ回数でスペースXは7割近くを占めています。
影響力はこんなところにも。
スペースXの基地「スターベース」。
5月3日、住民投票が行われ、基地や職員の居住エリアが新たな自治体「スターベース市」に昇格。
新市長もスペースXの従業員から選ばれました。
宇宙産業は今、政府よりも民間企業のスピード感が牽引する時代となっているんです。
一方で、ここにきてスペースX依存への懸念も。
トランプ大統領の側近であるマスク氏は3月、ロシアの侵略を受けるウクライナが利用するスターリンクの利用制限をほのめかしたのです。
マスク氏の発言(Xより):
私のスターリンクシステムはウクライナ軍の背骨だ。私がオフにすれば、彼らの前線は全て崩壊するだろう。
ウクライナに圧力をかけたともとれるこうした発言もあり、スペースX独走へのリスクも指摘されています。
こうした中、この市場に新たに参入したのがIT大手のアマゾンです。
スターリンクから遅れること6年、アマゾンは4月、「プロジェクト・カイパー」と名付けた通信衛星を初の打ち上げを行いました。
数年以内には約3200基の衛星を打ち上げ、地球全体を覆う計画で、2025年後半から通信サービスの提供を目指しています。
宇宙分野での民間企業の活躍は、衛星の打ち上げだけではありません。
宇宙開発で大きな問題となっているのが、宇宙に残されたロケットや衛星などの部品のごみ、いわゆる“スペースデブリ”の急増です。
民間企業「LEOLABS」は、地球の低軌道にある直径10cm以上の物体を追跡し、可視化することに成功しました。
現在は世界中にレーダーを配置し、スペースデブリ約1万個を追跡しています。
スペースデブリは秒速数kmの速度で数年から数百年間、地球の軌道を周回し続け、宇宙ステーションや人工衛星と衝突し破壊するリスクがあります。
LEOLABS シニアテクニカルフェロー ダレン・マクナイト氏:
宇宙ゴミの衝突は大変です。宇宙空間を将来にわたって活用できるようにすることは重要な課題です。
日本の航空自衛隊もこの企業と契約を締結しデータを活用するなど、宇宙での民間企業の存在感は急速に増しています。
内閣府の宇宙政策委員会の委員を務める山崎直子さんは、「完全に民間に移行するといっても完全に移行するわけではなく、要所要所で政府側がアメリカにしても支援をしている。政府が取るリスクと、民間がそれによって技術を加速させていく部分と、両輪でいけるのがいいと思う」と話します。
日本政府も市場規模の拡大を目指す宇宙ビジネス。
民間企業の育成や支援が、さらなる成長の鍵となりそうです。