福島県内で後を絶たない詐欺被害について、スプーフィングいう言葉を聞いたことがあるだろうか。「なりすまし」「偽装」という意味なのだが、特に今「警察」になりすました手口の詐欺が多くなっている。
実際に2025年は3月末までに43件で2億7655万円のなりすまし詐欺被害が発生していて、このうちの21件が「警察官」を騙るものだった。
なぜ騙されてしまうのか?警察が公開した音声から巧妙な手口が見えてきた。
■なりすまし詐欺の音声公開
「お客様がご利用中の携帯電話が全て2時間後に停止させていただきます」こうした電話、かかってきたことはないだろうか?
2025年2月、福島県内に住む40代の男性にかかってきた電話。自動音声の指示に従うと通信事業者を名乗る男とのやり取りが始まった。
(シミズ):「カスタマーセンター・シミズが承ります。今お調べしたところ、昨年の2024年10月の5日、土曜日に〇〇の名義で携帯電話の契約をしたという履歴になっていますが、こちらの方にお間違いないでしょうか」
(男性):「いや、間違ってますね」
(シミズ):「不正契約された携帯電話から、迷惑メール等が大量に発信されていまして、犯罪性があるということで、全てご利用停止処分になると確認が取れている」
「犯罪性がある」強い言葉を使い、男性を動揺させてきた。
(シミズ):「今回事件が起こったのが福岡県になりますので、福岡県警察の本部が管轄になるんですけども、被害届を出されたい旨がある方に、緊急通報としてこちらから福岡県の本部にお繋ぎすることができるんですけれども」
電話は福岡県警の警察官を名乗る男にバトンタッチする。
(偽警察):「こちら福岡県警本部、事件ですか、事故ですか」
(男性):「事件ですね」
(偽警察):「契約されているこの番号から、いたずらメール、なりすまし電話、そういった迷惑行為の通報を15件以上受けている状況なんですね」
(男性):「はいはいはいはい」
(偽警察):「無関係証明書を発行するには、事情聴取、お話を聞いてからの発行になりますので、福岡県警察本部に2時間以内に来ていただく必要があるのですが、福岡県にはお住まいではないということですよね」
直接福岡県に行くことができないと伝えた男性。すると…。
(偽警察):「遠方ですし、緊急性のある内容ですので、緊急特別対応として、このままお電話で録音しながら、事情聴取を受けていただくこともできるのですが…」
電話はこの後も20分ほど続いたということだが、不審に思ったという男性が警察に相談したことで被害を免れた。
■なりすましの手口
電話の相手に「警察」と名乗られるとドキッとするし、話をしっかりと聞かないといけないと感じてしまう。そこが犯行グループの狙いで、「警察」を名乗ることで相手を信じ込ませている。
また、SNSを使ったビデオ通話に誘導し、ニセの警察手帳を見せて相手を信じ込ませた上で、身分証などを示すように求めてくるという。
電話音声の中では、男性が1人で自宅にいることを何度か確認するやり取りもされていて、警察によると、周りに相談できない状況、話を自分のペースに持っていくために、1対1の状況をつくることも手口のひとつだということだ。
■かかってくる電話番号にも注意
スプーフィング、「なりすまし」・「偽装」という言葉を紹介したが、電話番号にも注意が必要だ。警察署の番号は末尾が110の場合が多いが、犯人グループもこの末尾110の番号を使って電話をかけてくるケースもあるいという。
相手が警察と言っても信じない。まずは電話を切って、最寄りの警察署に電話で確認してほしい。