父親から性的虐待を受けたことが原因で、「PTSD=心的外傷後ストレス障害」を発症したとして、広島市の女性が父親に損害賠償を求め上告した裁判で、最高裁判所は一審・二審同様、女性の訴えを退けました。

裁判の争点は”除斥期間”

この裁判は広島市の40代の女性が、保育園に通っていた頃から中学2年生まで、実の父親からわいせつな行為を強要されたことが原因で、2018年1月以降にPTSDを発症したとして、父親に約3700万円の損害賠償を求めていたものです。

裁判で争点となったのは、不法行為から20年で損害賠償を求める権利が消滅する民法上の除斥期間(じょせききかん)。

父親側は性的虐待を一定の範囲で認めたものの、除斥期間の経過を理由に請求の棄却を求めていました。

一審・二審 女性の訴えを退ける

2022年10月、一審の広島地裁は「10代後半に精神的な症状が生じている」として、損害から20年が経過し、請求権は消滅していると女性の訴えを退け、女性側は
「損害はPTSDの診断を受けた2021年に発生している」として控訴。

2023年11月、二審の広島高裁は「除斥期間の決算点は遅くとも1998年ごろで、請求権は消滅している」などとして女性の訴えを棄却し、女性は最高裁に上告していました。

最高裁判所 「上告理由に該当しない」女性の訴え退け 女性側の敗訴が確定

そして先月16日、最高裁判所は「上告の理由が憲法上の理由に該当しない」などとして、女性の訴えを退ける判決を言い渡しました。

「切り捨てられた感覚」 判決を受けて女性がコメントを寄せる

8日、広島市中区の広島弁護士会館で、女性の弁護士を務めた寺西環江弁護士など2人が会見を開き、女性が寄せたコメントを読み上げました。

【女性のコメント ※一部抜粋】
「残念ながら、最高裁もまた私の請求を認めてくれませんでした。父は、法廷に一度も出廷せず、尋問にも来ず、不誠実にも、裁判に向き合いませんでしたが、裁判をしたことで、父の本性がしっかりと見えました。今回、私の請求が棄却されたことで
「昔のことだとやはり時間切れなんだなと判断される」と知って、私自身も「切り捨てられた」という感覚です。助けてくれない、誰も救ってくれない。司法の役割は何だと問いたいです。でも絶望はしないでほしいです。法律も改正され、家庭内で性被害があることは、社会的に認知されています。1人で悩み、絶望して、悲しい選択をしないでください。どうか助けを求めてください」

判決を受けて寺西弁護士は、父親側からの謝罪は一度もなかったことを明らかにしました。

そのうえで「性被害は非常に後遺症が重いが、過去の性被害を体調の悪さに結びつけるのは難しい。今回の裁判で我々も説明不足だったが、裁判所が性被害の実態を分かっているとは思えなかった。性被害のことを相談したりサポートする体制はあるので、もし話すことができたら誰かを頼ってほしい」と話しました。

テレビ新広島
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