大阪の町工場が、世界中でまだ誰も挑戦したことのない夢に向かって動き出している。
大阪万博で注目を集める「中小企業が描く夢」とは、一体何なのか。その現場に迫る。
■未来の技術を目指し町工場から世界へ
東大阪にある町工場「ハードロック工業」が、未来の技術を目指している。
50年以上にわたり、ねじとナットの製造を担ってきたこの企業は、“絶対に緩まないねじ”を開発し、明石海峡大橋や新幹線、NASAのロケット発射台などでその技術力を証明してきた。
今回、「ハードロック工業」の若林雅彦社長は、新たな挑戦として「プラスチック製の強いねじ」を掲げている。
鉄の5分の1から6分の1の重さでありながら、鉄に匹敵する強度を持つ樹脂を用いるという。
【「ハードロック工業」若林雅彦社長】「こんな無謀なチャレンジをするところ、たぶん世界中探してもどこにもない」
■「軽量で強度を持つ」プラスチックねじへの挑戦
軽くて強いねじを作るためには、素材の選定が鍵を握る。
プラスチックは軽量だが、その強度を保つことが課題だ。
“無謀なチャレンジ”を託された「ハードロック工業」の技術者の三好範和さんは、「硬いだけだと簡単に砕け散る。柔らかすぎると、ちぎれやゆるみの原因になる」と、素材選びの難しさを語る。
ハードロック工業は、様々なプラスチックを試しながら、強く軽いねじに最適な材料を模索している。
三好さんは持ち歩くノートに検証結果やアイデアを細かに記録し、試行錯誤を重ねている。「非常に地味な作業なんで、なかなか根気がいる」と笑う。
そんな三好さんを、社長はどう見ているのだろうか。
【「ハードロック工業」若林雅彦社長】「もっとスピーディーにどんどん進めやなあかんのですよ。それをこう検証をかさねて『これでいいですか?』と。ただ三好でなかったら、もう断念しとったかもしれないです」
社長からの期待、大。
■機械の進化 “この世にないねじ”を作るため“この世にない機械”を生み出す
プロジェクトを進めるためには、専用の機械も必要だ。
複数の企業が協力し、既存の機械を改造することで、プラスチックを成型する新しい機械を開発している。
万博開幕まで5カ月のある日。
改造を経て進化したはずの機械が…!? 動いていなかった。
(Q.調子はどうですか?)
【「ハードロック工業」技術者 三好範和さん】「最悪。成型機が…トラブりまして…」
電源を入れても、うんともすんとも言わない。
三好さんは「誰もやったことがないようなやり方を色々とやっているので、設備側も悲鳴を上げている」と、その苦労を明かす。
改造を経て進化した機械は、プラスチックに細い繊維をどう混ぜ込むかを模索しながら、強度の向上を目指している。現在、目標の8割程度の強度まで達成しているという。
■「まってろよ、万博!」町工場の無謀な挑戦を万博で披露 自信のぞかせる技術者
万博開幕まで残りわずか。
若林社長は、この挑戦を万博で披露しようと決意している。
【「ハードロック工業」若林雅彦社長】「軽い樹脂で未来を切り開いていきたい。空飛ぶ車や新しい可能性が十分に広がっていくんじゃないかと思います」
町工場の無謀な挑戦が、世界をどのように驚かせるのか。その答えは、近い将来の万博で明らかになる。
技術者の三好さんは「待ってろよ、万博」と、自信をのぞかせている。
このプロジェクトが成功すれば、軽量で強度のあるねじは、航空機や様々な分野での省エネ化に貢献するだろう。
中小企業の挑戦が、世界の未来を切り開く。
(関西テレビ「newsランナー」2025年5月1日放送)