人口約100人の鹿児島県南大隅町の小さな集落に、俳優の井浦新さんがやってきました。
特産の辺塚だいだいの花摘みを、地元の人たちやファンと取り組みました。
実を収穫せずに花を摘む背景には、集落が抱えるある“課題”がありました。
南大隅町の旧辺塚小学校です。
12年前に閉校したこの場所に続々と集まってきた人たちー
どうやら地元の人ばかりではないようです。
鹿屋市から来た小学生
「花を摘んでみたかったから」
愛知から参加
「遠かったけど愛知ではなかなか走れない山道だったので楽しかった」
千葉から参加
「めちゃくちゃ山が大きくてきれいで、空も広くてすごく癒やされている」
本土最南端の南大隅町。
中でも辺塚は役場からでも車で1時間ほどかかり、地元では「秘境中の秘境」と言われています。
そんな辺塚地区で、「辺塚だいだいの花摘みを一緒にしよう」と呼びかけたのは、ドラマや映画でおなじみ、俳優の井浦新さんです。
俳優・井浦新さん
「人間目線から言ってしまうと『獣害』という言葉があるが、自然と共に過ごしていると『うまく共存できないかなあ』と外から来た僕のような旅人からしてみると思ったりする」
実は井浦さん、ナチュラルコスメのブランドを家族で手がけていて、南大隅町の植物や果物を原料に、町内の工房でシャンプーやトリートメントなどを製造しています。
こちらのバームは、廃棄される南大隅町産のパッションフルーツを買い取って原料にしていて、農業廃棄物の削減や農家の支援にもつながっています。
Kruhi ディレクター 妻・井浦あいさん
「(農家は)全部に同じ思いと手間をかけても『これはだめ』『これはいい』と言ってしまうのはちょっと寂しい。廃棄に回したら価値がない。でもそうではない価値を見いだせる化粧品を私たちが始めてよかったなと思う」
今回、花摘みをする「辺塚だいだい」は、マイルドな酸味と豊かな香りが特徴のかんきつ類で、近年は加工品も数多く登場しています。
しかし、需要が増える一方で、高齢で生産を諦める農家もいて、収穫されずに放置されている辺塚だいだいの実も多いのが現状です。
井浦さんは、地域の人たちと交流する中で、収穫されず放置された実で鳥獣被害が発生していることを知り、実がならないように、少しだけ花を摘み取るお手伝いをすることにしたのです。
井浦さん
「結構とげが痛いので。全部活用できるので」
「いい匂い」
実が付く前の花を摘む。普段はなかなかできないぜいたくな体験です。
参加者
「いい匂いがする」
参加した人たちは山の中いっぱいに広がる甘い香りを楽しみながら、井浦さんとのんびりとした休日を過ごしていました。
参加者
「鳥の声やチョウがたくさん飛んでいて、すごく自然を感じることができてよかった」
一方、花摘みを受け入れた側にも変化がありました。
辺塚だいだいを栽培する湊原幸二さん。
最近は手が届く範囲での収穫にとどまっていましたが、今回の花摘みをきっかけに、20年手つかずだった木で収穫を再開してみようかと思っています。
辺塚だいだいを栽培・湊原 幸二さん
「芽が2年後はこのくらいになって、それから先、実がなってくる」
また、今回の取り組みは「秘境の中の秘境」のPRにもつながったようです。
辺塚の住民
「私もびっくりしました。辺塚の地に多く都市部の人たちが来られて、辺塚がこれだけにぎわったのは初めて」
俳優・井浦 新さん
「南大隅の魅力は圧倒的な純度の高い自然。初めて来たときから何も変わらない。感動は全然色あせないし、来る度に仕事をしに来てはいるが、東京に帰って普段の生活をするときに魂がよみがえっているような、本当に元気になって、また東京で頑張れる気持ちになれるので、この南大隅の大地から、空から、山から、海から、圧倒的な純度の高い自然は最大の魅力だと思う」
全員
「辺塚だい好き~!」