お米の高値が続いておりますが、備蓄米が放出されている中、なぜ消費者の手元に十分に届かないのでしょうか。

5月1日は、米の流通に詳しい流通経済研究所主席研究員の折笠俊輔さんに聞いていきます。

青井実キャスター:
農水省は、4月30日に最新の備蓄米の流通量を発表したんです。
5月13日までに集荷業者に引き渡された量は、備蓄米全体の65%にあたる13万8000トンほど。
スーパーなどの小売店まで流通したのは、その中で1.4%程度となっているんですが、この数字、まずどう見ますか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
これぐらいの量ですと多分、身近なお店で目にしない消費者の方も多いので少ないですよね。皆さんの実感としても多分少ないと思います。

青井実キャスター:
何で流通が進んでいないのかを見ていきたいのですが、折笠さんによりますと備蓄米の流通には最短でも1カ月以上、最長で2カ月ほどかかるそうです。
具体的に見ていきますと、国からJAなどに行くのは2~3週間。そして集荷業者から卸売業者に1~2週間。そして卸売業者から小売業者に1週間程度ほどかかるといわれています。
集荷業者に約65%あるわけですが、卸売業者や小売業者に来るのは何で滞っちゃうんですか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
まず1つがそもそも備蓄米を集荷業者さんが買った後に、卸さんと集荷業者さんとの間で売買契約の商談が必要ですよね。今度、卸さんと小売りさんの間で商談が必要ですよね。かつ、今度は卸売業者さんが精米して袋詰めする工程が入ります。ここも備蓄米が入ってきたんで急いで精米をしないといけない。ですが、すでに精米工場の予定はパンパンに詰まっているので、そこの稼働の調整とかがかかってくるので、どうしてもこの調整時間を含めてこれぐらいかかってくるということになります。

青井実キャスター:
やむを得ないということですか、このスパンは。

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
このスパンだとどうしても時間はかかってきてしまうことはありますね。

青井実キャスター:
緊急時の対応なわけですが、もっと早く流通できないのかと思ってしまいますね。

SPキャスター・柳澤秀夫氏:
大臣が会見でその都度、何で滞っているのか説明するんですけど、説明するたびに言い訳が変わってるんですよね。本当に何が起きているのか納得できる説明がないんですよ。やはり、今回のことをきっかけに自主流通米もそうですし備蓄米もそうですけど、米の流通を透明性を持たせて消費者に届くまでこういうふうに流れますよということを十分説明してほしいです。

青井実キャスター:
早く流通させるためにアイデアやポイントはあります?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
まず1つが精米のところで時間がかかるのであれば、精米する卸さんを増やすという意味では流通先を増やしていく動きは必要ですよね。もう1つが町のお米屋さんは店頭で精米をしてくれるお米屋さんなので、そういった小規模なお米の街角のお米屋さんに流通するようなやり方を工夫していくのも1つだと思います。

青井実キャスター:
農水省は理由にトラック不足や物流の問題があるとおっしゃってますけど、業者が備蓄米より通常の米を先にさばこうとしていることはないですか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
今回、卸さんとか備蓄米を購入される方はやっぱり売りたくて買っていますので、既存で入れてしまった高いお米があればむしろ備蓄米とブレンドして安い商品を作りたいはずなんです。だから不当に遅らせているというよりは、いきなり備蓄米が入ってきました。それで精米工場のスケジュールが詰まっている中でどこで精米しようという調整に時間がすごいかっちゃっているのが現状だと思います。

青井実キャスター:
決してずるしてるわけじゃないと。ただ、少し時間はかかっていますよね。

SPキャスター・柳澤秀夫氏:
確かにずるしていると決めつけるのは酷だと思うんですが、あまりにも集荷業者のところにたまりすぎているんですよね。これはためておくことによって市場の価格を調整して出していけば場合によっちゃもうけにもつながる、出し方を勘案すれば。ここを刺激するのは政府側からすればここも勘繰りと言われるかもしれませんけど、参議院選挙を控えていて水田じゃなくて票田でもあるわけですから、その辺の機嫌を損ねないようにしてるのかと勘繰りたくもなりますよ。

青井実キャスター:
当初、江藤農水大臣は3月半ばに備蓄米放出すれば1週間程度で卸売業者に売り渡されると言っていたんですが、政府はこれだけ時間がかかるとは分かってなかったんですか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
通常の流通だとこんなもんなんですけど、ただ今回備蓄米を出すのは初めてかつ、みんないきなり入ってきたものなので調整時間というのを全く考慮されていないスケジューリングになってしまった。

SPキャスター・柳澤秀夫氏:
ただ、備蓄米は緊急時に使うものですよね。だったらその流れを、制度をきちっと作っておかなきゃいけないはずですけど備蓄米の役割を果たしていないということですよね。

青井実キャスター:
備蓄米が多く来るのはいつになるんですか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
先ほど言ったとおり大体1カ月から2カ月ぐらいリードタイムがあるとすれば、3月末の放出が1回目ですから5月中旬、下旬に出回りが増えてくるんじゃないかと。

青井実キャスター:
あと、値段はどうですか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
5月中旬下旬に出回るとすると、6月の頭に4200円とかかなり高額になっていますけど流通業界全体としては5kgで4000円は切りたい。3000円台を目指したいので出回ってくれば、6月の頭に3000円台に入ってくれればと。

青井実キャスター:
その前に5000円とかいっちゃいませんか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
値上がりが3円でとどまっているところを見ると、やや頭打ちかなと。

青井実キャスター:
そもそも国はお米の生産量足りているといってますが、折笠さんはどう思いますか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
正直言って足りてないと思いますね。生産量として680万トンといっていますが高温障害などがありますし、そもそもの消費量の推計もちょっと甘いというか。昨年700万トンなのに680万トンみたいになってるので、実際は多分40~50万トン足りてないと思いますね。

SPキャスター・柳澤秀夫氏:
高齢化している生産農家に対する対策をしっかりしないと。

青井実キャスター:
でも、基本的に消費者はただ値下がるのを待つだけですか?

流通経済研究所・折笠俊輔さん:
待ちつつも落ち着いて日ごろと同じような買い方をしていただくのが今のところ一番だと。

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「経済部」は、「日本や世界の経済」を、多角的にウォッチする部。「生活者の目線」を忘れずに、政府の経済政策や企業の活動、株価や為替の動きなどを継続的に定点観測し、時に深堀りすることで、日本社会の「今」を「経済の視点」から浮き彫りにしていく役割を担っている。
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