「公害の原点」といわれる水俣病の公式確認から69年となった5月1日、現地では慰霊式が開かれ参列者が祈りをささげました。
「黙祷」
1日で公式確認から69年を迎えた水俣病。かつて、水銀で汚染された水俣湾を埋め立てた広場には患者や遺族、原因企業のチッソや国の関係者など、約660人が参列し犠牲者に祈りをささげました。
式では、両親が水俣病の患者である杉本実さんが、祈りの言葉を述べました。
両親が水俣病認定患者・杉本実さん
「孫たちが大きくなって、魚釣りや海で遊んだり楽しい思い出ができる豊かな海であってほしいと願います」
水俣市に近い出水市や長島町など県内には493人の認定患者がいます。式に先立ち浅尾環境大臣が、被害者や支援団体と懇談を行いました。2024年に制限時間を過ぎた参加者の発言の途中でマイクが切られる問題が発生したことをうけ、2日間に拡大された懇談の場。
1日午前中には長島町獅子島の被害者の会の滝下秀喜会長らが面会に臨みました。
水俣病被害者 獅子島の会・滝下秀喜会長
「長い時間をかけて意見交換したのは良かった。引き続き対話などを通じて、水俣病の患者、被害者団体、被害者の方々に寄り添う政策をお願いしたい」
懇談の時間は拡大された一方で、参加者からは認定患者以外の人たちにも医療や生活支援といった救済を求める声が相次ぎましたが、浅尾大臣は「現行の法制度で対応する」と述べるにとどめ両者の考えには溝がありました。
公式確認から69年、県内では現在も1014人が水俣病の審査待ちの状態で、未認定患者が国などを訴えている集団訴訟も各地で続くなど、全面救済に向けた動きは現在も道半ばとなっています。