鹿児島市の磯地区にJR仙巌園駅が開業して1カ月が経ちました。
磯地区では観光客の増加により、地元住民や飲食店などから喜びの声が聞かれる一方、バス停の移設に関する課題もあります。
駅の開業で街の変化が進む磯地区の今を取材しました。
3月15日に開業したJR仙巌園駅。
旧集成館などの世界文化遺産のエリアに位置していることが大きな特徴で、開業初日はホームに続く階段にまでずらりと長い列ができるほどでした。
駅の利用者
「新駅ができる場面に人生で初めて出くわしたからワクワクした」
「鹿児島の魅力を感じることができて良い」
駅の開業から1ヵ月。
列車が駅に到着する度に国内外から訪れた多くの観光客が次々と降り、磯地区はにぎわいをみせています。
兵庫からの観光客
「きれいですね。眺めが最高ですね。ネットで時刻表を調べてみたら、電車で5~6分で着く。調べたら出たので『あ、これだ!』と思って」
千葉からの観光客
「私たちは基本的にバスなど公共交通を使うことが多いが、電車で降りられるところにあれば、すごく便利で使いやすい。駅がなかったらちょっと諦めようかなというプランになっていたと思う。駅ができて本当によかった」
地域住民や飲食店も、駅の開業による利便性の向上や観光客の増加を実感しています。
地域住民
「基本的に増えている。私もかなり交通の便が良くなった。最近よく使う。(鹿児島)中央駅まで行くと、もう降りてすぐアミュに行くので」
付近のぢゃんぼ餅屋
「すごいよ。2割、3割、4割そこまで増えた。車で行って荷物を置いている。それがゴロゴロ引っ張ってくる客が増えた。おばちゃんでは言葉が通じない人たちも。フランスから来ている人がいた。期待通りに効果はある。期待以上かもしれない」
取材したこの日は平日でしたが、開業に合わせて海沿いにオープンしたカフェもにぎわっていました。
関係者が特に感じているのは、若い世代が増えていることです。
地域住民
「高校生が結構多い。(磯)ビーチハウスにカフェができたので、若い子が多くなったかなって」
付近のぢゃんぼ餅屋
「高校生が特に増えた。今来る方たちは若い層。若い人がただフラッと海に遊びに来る」
駅開業の効果に沸く磯地区ですが、ある問題も生じています。
轟木康陽記者
「仙巌園駅のホームからスロープを下りてすぐそばのこちらのバス停では、国とバス会社によるバス停の移設問題が生じています」
駅のそばにある仙巌園前のバス停。
ここにはバスの停留スペースが作られましたが、使われてはいません。
実際にバスは、停留スペース前の道路に停車し、発車していきます。
なぜ、こうした状況になっているのか。
もともとこの停留スペースの工事は、事故が多かった周辺道路の安全対策の一環として国が行ったものですが、バス会社の見解は異なります。
路線バスを運行する鹿児島交通は、「この停留スペースは交通渋滞を悪化させる新駅の設置に伴う工事」と主張し、渋滞の緩和策がしっかりと示されていない以上、国が求めるバス停の標識の移設には協力できないとの立場を示しています。
国は3月までに2度、県バス協会に移設を求める勧告書を提出しましたが、協会側はバス会社に対応を任せるとして膠着状態が続いています。
では、このバス停の移設問題の発端となった国道10号の渋滞は駅の開業前後でどうなったのか?
国道10号を普段から利用するドライバーに聞いてみました。
ドライバー
「駅が開業してから渋滞をしている」
Q.駅の開業でより渋滞するようになったと感じますか?
「特に土日は感じる」
Q.朝に関して渋滞はあまり変わらない?
「そんな感じがしますね。朝より昼間の方が混んでいるかなという感じ」
「渋滞は相変わらずあると思うが前よりは若干緩和されている気がする」
様々な声が聞かれる中、駅開業前後の映像を比較してみました。
開業前の2月に撮影した平日午前8時ごろの国道10号です。
姶良市から鹿児島市に向かう車線に、絶えず多くの車が通行していました。
一方、こちらは開業後の4月14日の平日の同じ時間帯の映像です。
渋滞対策としてJRでは、通勤時間帯にあたる午前7時~午前9時までの下り列車4本を通過列車にしています。
その影響もあるのか、両者を比べると交通量にあまり変化はないようにみえます。
駅開業の前後1週間の渋滞の長さを調べた県警のデータを比べてみると、開業前の3月8日は仙巌園を先頭に姶良市方面に最大約3.5キロ、開業後の3月22日には最大約4.1キロの渋滞となりました。
開業後の方が長くなっていますが、県警は「その日によって道路交通状況は変わるため、新駅開業との因果関係は分からない」としています。
仙巌園駅の開業から1ヶ月。
今後、磯地区の人の流れはどうなっていくのか、そして渋滞やバス停の問題はどうなるのか?
ゴールデンウィークに夏の海水浴シーズンと、これからさらに人が増えていきそうな磯地区の動向が今後も注目されます。