アメリカのトランプ大統領が、ウクライナのゼレンスキー大統領について「和平交渉に有害だ」と激しく批判しました。

ウクライナ情勢をめぐる和平交渉について、アメリカメディアは、ロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島の領有をトランプ政権が承認するとの和平案を提示したと報じています。

一方でゼレンスキー氏は22日、「ウクライナは併合を法的に認めていない」と述べ、この案を拒否する姿勢を示していました。

トランプ氏は23日、SNSでゼレンスキー氏の発言を「議論の余地すらない。ロシアとの和平交渉に極めて有害だ」と激しく批判しました。

その上で、ゼレンスキー氏を「交渉カードのない男」とやゆし、「平和を選ぶか、3年間戦い続けて国全体を失うかだ」と突きつけ、早期の和平合意に応じるよう迫りました。

このニュースについて、フジテレビ・立石修解説委員室長とともにお伝えします。

このようにトランプ氏の発言にも注目が集まっていますが、ここ数日でアメリカ、そしてロシアからの提案がさまざま報じられています。

まずロシア側の案です。
現在の戦闘ラインで侵攻を停止する用意があると考えているということです。

この内容は22日にイギリスメディアが伝えたもので、プーチン大統領が4月、アメリカのウィトコフ中東担当特使との会談で提案をしたということです。

現在の戦況について、ロシアはウクライナ東部4州、ルハンスク・ドネツク・ザポリージャ・ヘルソンの4つの州の併合を一方的に宣言しているわけです。

図の赤色の部分が、ロシアが制圧しているとされている地域ですが、ロシアはこの東部4州を、掌握していない地域に関しては領有権を放棄する可能性にも言及しているということです。

宮司愛海キャスター:
ウクライナ側は、この提案を受け入れるとみられますか?

立石修解説委員室長:
プーチン大統領は、これまで主張してきた東部4州の全土の占領ではなく、赤い前線の部分での停戦ラインを引くという妥協案を出してきたわけですよね。これについては、ウクライナ側も一時的な戦闘停止ですとか、交渉を継続するために受け入れざるを得ないという判断をする可能性はあるとは思います。

宮司愛海キャスター:
となると、プーチン大統領はなぜこのタイミングで妥協案というのを出してきたんでしょうか。

立石修解説委員室長:
これはもう、プーチン大統領がトランプ大統領に対して「自分はカードを切った」「和平に前向きだ」というアピールをしたいという狙いがあるのかと思います。先週もプーチン大統領は突然、一方的にイースター停戦などを宣言して、結局は戦闘は続いたんですが、さまざまな形でウクライナというよりはトランプ大統領に対して揺さぶりをかけている印象がありますよね。

宮司愛海キャスター:
この案ですが、アメリカ側はどういうふうに言っているのかというと、トランプ大統領は「クリミア半島をロシア領としてアメリカが承認する」ということで、これまでウクライナが求めてきたクリミア半島の奪還を断念させてロシア領と認めるというな案です。クリミア半島は2014年にロシアが一方的に併合して領有権を主張してきた場所ですが、ウクライナ側としては到底、なかなかのめない案ですよね。

立石修解説委員室長:
ゼレンスキー大統領はこれに対して、「ウクライナはクリミア併合を法的には認めていない」と、強い調子で反論しています。クリミアをめぐる問題は、トランプ大統領とゼレンスキー大統領のもっとも大きな対立点、相違点なんです。これは武力による領有権の変更をアメリカが容認することになる。それはゼレンスキー大統領も決して認めるわけにはいかないですし、我々日本も含めた国際社会も受け入れがたい話ですよね。そもそも、アメリカ自体も、トランプ前政権も含めて、このクリミア併合には強く反対してきた。これは大きなアメリカの方針転換になり、安全保障にも大きな影響を与えてきます。

宮司愛海キャスター:
態度を一転させていると言っても過言ではないですが、そのゼレンスキー大統領に対してトランプ大統領がどういうことを言っているかというと、「和平交渉に極めて有害」「交渉カードのない男」などと激しく批判しているわけです。いわば“トランプ流”といったところかもしれませんが、どうですか?

立石修解説委員室長:
強い言葉ですよね。トランプ大統領は来週就任100日目を迎えますが、もう連日報じられているように、関税の問題で二転三転して国内外では大きな批判も受けている。ウクライナの停戦についても、24時間で停戦できると大統領選の時は言っていました。ところが、これもなかなか進まない。これらのゼレンスキー大統領に対する激しい言葉には、トランプ大統領の焦りみたいなものを感じるんですよね。この焦りをプーチン氏はうまく突いて、いろいろ揺さぶりをかけている。25日にはトランプ大統領の特使であるウィトコフ特使と、モスクワでプーチン大統領が会う予定になっています。ここでの発言が要注目、警戒のポイントだと思います。

宮司愛海キャスター:
今後の交渉の鍵というのは、どういうところになるでしょうか?

SPキャスター 金子恵美さん:
今、お話を伺ってもなかなか難しい中で、ウクライナとしてはクリミア併合というアメリカ案は到底受け入れられないですし、もしこれを受け入れたとしてしまうと、正直、一方的な力による現状変更を認めるというのは国際社会にも影響があります。また、欧州としても足並みをそろえて動ける条件ではないと。ただトランプ大統領としてみれば、これまでも交渉妥結に持っていくと強く言ってきましたし、何といっても平和を実現したという成果を得たいという焦りがある中で、どれだけゼレンスキー大統領が批判されても突っぱねられるかということのほうが、まずは見ていかないといけないんじゃないかなと思います。

立石修解説委員室長:
トランプ大統領は突然方針変更することもあるので、まだ予断を持たずに見ていければいいなと思います。

宮司愛海キャスター:
ヨーロッパの出方も注目していきたいと思います。それから、26日にフランシスコ教皇の葬儀がバチカンで行われるので、そこで会談が行われるかもしれない、ということですね。

立石修解説委員室長:
歩み寄りはなかなかこの時点では難しいと思いますが、注目ですよね。

フジテレビ
フジテレビ

フジテレビ報道局が全国、世界の重要ニュースから身近な話題まで様々な情報を速報・詳報含めて発信します。

国際取材部
国際取材部



世界では今何が起きているのか――ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、モスクワ、イスタンブール、北京、上海、ソウル、バンコクのFNN11支局を拠点に、国際情勢や各国の事件・事故、政治、経済、社会問題から文化・エンタメまで海外の最新ニュースをお届けします。