「水俣病と認めてほしい」。半世紀前から声を上げ続けている水俣市出身の男性が法廷で訴えました。熊本県に対し、水俣病と認めなかった処分を取り消し、認定するよう求める裁判が熊本地裁で始まりました。

【大戸迫 智さん】
「歩くのも不自由になってきた。早く水俣病と認めてもらいたい」訴えを起こしているのは、水俣市出身で宇城市在住の大戸迫 智さんです。

訴状などによりますと、大戸迫さんは1965年、公害健康被害補償法、いわゆる『公健法』における水俣病の指定地域に生まれました。

脳性まひや歩行障害、知的障害などがあり、10歳と42歳のときに、熊本県に水俣病の認定申請をしましたが、いずれも棄却されています。

大戸迫さんは「妊娠中の母親が、水俣周辺で取れたメチル水銀に汚染された魚介類を多く食べていて、自身は水俣病の胎児性患者である」と主張。

県に対し、棄却処分を取り消し、水俣病と認めるよう求めています。

23日の初弁論、大戸迫さんは法廷で「手足のしびれや震えで鉛筆やペンをうまく握れず、字もほとんど書けない。歩く練習をしても全くよくならない。ちゃんと水俣病と認めてほしい」と訴えました。

また、姉の坂本みゆきさんも「弟はメチル水銀のせいで普通の人生を送ることができなくなった。県は責任を果たしてほしい」と述べました。

一方、被告の熊本県は「県の処分は適法で、取り消されるべきものには当たらない」と主張。

争う姿勢を示し、請求棄却を求めました

【大戸迫 智さん】
「すっきりした。満足した。初めて意見を言ったから。早く(水俣病と)認めてほしい。体がきつい。手も不自由で、指も伸びなくなってきている」

【坂本 みゆきさん】
「(亡くなった)母のことを考えて途中で泣きそうになった。弟の世代には他にも同じような人がいるんじゃないかなと思う。ちゃんと、これからも伝えていきたい」

テレビ熊本
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