熊本城内には、かつて年間最大１７０万人が訪れていた建物があります。豪華絢爛な昭君之間などが呼び物の本丸御殿です。熊本地震から９年。立ち入り禁止が続く建物の中にカメラが入りました。
本丸御殿は加藤清正の時代に建てられたものの、１８７７年の西南戦争で天守閣と共に焼失しました。
その後、平成の復元整備事業の目玉として３年をかけて再建されました。
【テープカット】
「本丸御殿落成おめでとうございます。どうぞ！」
そして２００８年４月に公開されると、連日、多くの観光客が訪れます。
特に清正が、豊臣秀吉の遺児秀頼をかくまうために造ったといわれる『昭君之間』は豪華絢爛な障壁画や天井画が人々を魅了してきました。
また、建物の内部で食事が提供されたり…本丸御膳将棋の名人戦など格式あるイベントの舞台としても活用されてきました。
しかし、２０１６年の熊本地震では建物下が地盤沈下し傾きが生じるなどの被害が出て立ち入り禁止の状態が続いています。
熊本城文化財修復検討委員会
【事務局】
「数寄屋棟です。こちらは全解体修理を行います。建造物下の石垣に被害があったため建造物をいったん解体し、石垣復旧工事後に建造物を復旧します」
そして３月、熊本市は本丸御殿のうち建物の一部を解体した上で復旧する方針を決めました。
本丸御殿は今どうなっているのでしょうか。
建物内部に昨日、ＴＫＵのカメラが入りました。
【郡司 琢哉アナウンサー】
【熊本城総合事務所建築整備班 入田 徹さん】
「地震の時のそのままの状態ですよね」「はい。地震のあとそのままの状態で残っています」「こっちの壁の傷、すごいですね」「こちらの壁は漆喰だけでなく、中の土壁までひび割れが入っているという被害が見られます」
まず目についたのは土壁のひび割れや崩落など。９年前から変わらない地震の生々しい爪痕です。
【入田さん】【郡司アナウンサー】
「復旧工事が終わるまでの間、劣化等が進まないように、こういった形で湿度等も管理しながら保存環境を保っている状況です」「もともと地震前はどこにあったものなんですか？」「こちらは若松之間や昭君之間に立てられていたものです」
昭君之間などに飾られていた襖絵。
よく見ると、カビのようなものも確認できました。
これ以上、ひどくならないため温度や湿度の管理が行われています。
建物内には、被災前と復旧したあとで活用の仕方が異なる場所がありました。
【入田さん】【郡司アナ】
「ここから先が今回、方針で決まりました『使用制限』という当面の措置をとらせていただくエリアになります」「ということは、復旧後も観光客が入ることができない場所がここから先となるわけですか？」「はい。現段階の方針では、その方針で決まっています」
東側の小姓部屋と呼ばれる部分は建物下の石垣の安定性が証明できないとして、『使用制限』
つまり復旧後も立ち入り禁止が続く方針です。
このエリアには階段も含まれるため、地震前のような２階の活用はできなくなります。ただし、今後、石垣の調査が進み、安定性が確認されれば制限は解除される可能性があります。
そしてカメラは最も格式の高い昭君之間付近へ。
【郡司アナ】【入田さん】
「なるほど今、こういう形になっているんですか」「こちらが若松之間、昭君之間です」「一番の見所の場所ですよね」「本日は障壁画に汚れ等がつかないように養生しているのでご覧いただけませんが、奥に障壁画等がまだ残っている状態です」「そして傾いているのがよく分かる場所でもありますね」「はい。おっしゃる通りです。昭君之間の被害につきましては床下の石垣が沈下したことによって建物の床、柱に傾き等が見られます」
ビー玉を置いてみると…。
【郡司アナ】
「全部ではないんですけど、二つ転がっていきましたね。こっち（西）側に少し傾斜しているということなんですね」「そうですね。左側が石垣側になりますので、こちらが沈下しているという状態です」
昭君之間付近は地震による地盤沈下により傾きが生じました。
復旧工事では床下に構造補強を施すことで、仮に地震で石垣が崩落しても建物や観光客の安全性を確保する予定です。そしてカメラは本丸御殿の中でも最も被害が大きかった西側へ。
【入田さん】【郡司アナ】
「こちらが今回、特に被害が著しかった数寄屋棟です。被害の内容としては建物の下にあります石垣のはらみや沈下等が見られました。それによって建物の床の不陸や柱の傾き等が特に著しく見られた場所です」「数寄屋棟の復旧はどうなるんですか？」「今回の復旧では建物をいったん全部解体して石垣を再度積み直し、そのあと建物を組み直すという方針です」
一部解体の「一部」とはこの数寄屋棟の部分。「建物の解体」「石垣の積み直し」「建物の再建」という手順を踏む予定です。
【熊本城総合事務所 建築整備班 入田 徹さん】
「今年度、令和７（２０２５）年度に設計を終わらせて、令和９（２０２７）年度から１４（２０３２）年度にかけて工事を行ってまいります。ようやく修理の方針が決まって、設計を進めて工事に着手できるという状況になりましたので、本丸御殿の復旧を願っている皆さまに早く本丸御殿の復旧した姿をお見せできるように頑張っていきたい」
熊本地震前、熊本城観光の中核をなしていた本丸御殿。復旧まで、約８年です。
ということで本丸御殿は「いったん解体して石垣積み直し後の再建」「床下の構造補強による耐震補強」「『使用制限』つまり復旧後も観光客の立ち入りを一部規制する」という３つの方針での再建が決まりました。
工事完了は２０３２年度の予定です。
