日本の食卓に欠かせない「ノリ」がピンチに陥っています。
福岡、佐賀、長崎、熊本の4県に囲まれ、ノリの産地として有名な有明海で、かつてない異変が起き、その影響が広がっています。
福岡市地下鉄の赤坂駅近くに店を構える「中華そば 栄(さかえ)」。
開店と同時にすぐに満席近くなる人気店です。
お店の自慢は、豚や鶏の動物系の出汁とカツオやサバなどの魚介系の出汁を重ね合わせた香り高いスープ。
そこにチャーシューやほうれん草などをトッピングしたのが、お店の定番メニュー「中華そば」です。
もちもちした太めのストレート麺が濃厚スープによく絡むと大人気です。
◆来店客
「とても良かったです。食感がいいと思います」
Q.よく来られるんですか?
「週に1回・2回ぐらい」
◆来店客
「ノリを溶かした後と前でだいぶ味が違いました。味がさらに加わって深みが出る感じでした」
お客さんの言葉通り、人気の中華そばに欠かせないのが「有明ノリ」。
麺と一緒にスープの中にくぐらせると、磯の香りがいっそう引き立ちます。
◆中華そば 栄 田畑克英 店主
「このノリがないとダメ。魚介のスープにノリが溶けこんでいって香りが飛んでくるんですよ。それだけでうま味が伝わります。有明海のノリは他のノリより溶ける。溶けるスピードが速くて、それがもう1番」
しかし、そんな有明ノリを巡っていま、ある異変が起きているといいます。
◆中華そば 栄 田畑克英 店主
「普通に買うと、もう高すぎて結構きついんですよ。2020年から見ると、2.7倍ぐらいになってる、ノリの価格が」
「ノリ」に、いま一体何が起きているのか?
取材班が向かったのは、日本有数のノリの産地として知られている福岡県柳川市。
4月4日、今シーズン10回目の有明ノリの入札会が開かれました。
会場には、香り豊かなノリが並んでいます。
買い付け業者たちが実際に試食しながらノリの出来を確認していましたが、中には険しい表情の人もー
◆買い付け業者
「色は前年に比べて結構ひどい状態なのかなっていうふうには思っています」
「3～4年前に比べると、値段は倍とか、物によっては2.5倍とか、かなり高くなっいます」
福岡有明海漁連では、今シーズンの生産目標を13億枚としていましたが、現時点での生産量は約7億5000万枚。
今シーズンの生産量は大きく落ち込み、目標の6割ほどに留まる見込みです。
◆福岡有明海漁連 境真秋 業務部長
「なかなか落ち着かないですよね。石橋を叩くような気持ちで、皆さん生産をされているのかなと」
異常事態の原因を探るため、取材班は漁船に乗せてもらい、有明海の漁場にあるノリの収穫現場へと向かいました。
穏やかな海の上に張りめぐらされた網。
ここで育ったノリを収穫するため、母船から収穫用の小船に乗り換え、専用の機械でノリを巻き取っていきます。
小船からあふれんばかりの大量のノリを詰め込み、母船へと戻っていきます。
◆心和水産 田中智幸さん
「(1回の収穫量は)板ノリにして1万枚くらい。それを8回くらい繰り返すので、きょうの生産は約8万枚ですかね」
引き上げたノリの色味を確認してみると…
◆心和水産 田中智幸さん
「見てもらったらわかるけど、こげ茶色。真っ黒じゃない」
こげ茶色のノリ。
確かに例年のノリと比較すると、色の違いが一目瞭然です。
実はこうした状況がもう「3年」も続いているといいます。
なぜなのでしょうか。
◆心和水産 田中智幸さん
「プランクトンが発生して減少しない。もともと有明海は2週間くらいでプランクトンが消えていたんですよ」
田中さんによりますと、ノリの成長に欠かせない海の栄養塩をプランクトンが食べ、黒い有明ノリがとれなくなっているといいます。
プランクトンが増えた理由は判然とせず、田中さんはもどかしい思いをしています。
◆心和水産 田中智幸さん
「商社さんたちも頑張って日本のノリを使っていただくように高値で買い取って頂いているけど、私たちは食べておいしいと言ってもらえる有明特有の黒くて柔らかいノリを作っていきたいのが一番の思いです」
ノリの生産現場では危機感が広がっています。
「ノリの不漁」は身近なところにも影響が出てきています。
8日、セブンーイレブンが「おにぎりの値上げ」を発表しました。
対象は4品で、まず、手巻きおにぎりの「北海道産・昆布」と「梅」は税込みで162円から178円に。
そして「紅しゃけ」と「辛子明太子」は税込みで199円から213円に値上げされます。
おにぎりだけに、コメの価格高騰が理由かと思いきや、今回値上げの対象となったのが「ノリを使った一部のおにぎり」ということで、近年ノリの不漁が続いていて、価格が上がっていることが影響しているということです。
セブンーイレブンのおにぎりは4月15日から値上げされるという事です。
