3月25日、鹿児島県霧島市の山間にある三体小学校で開かれたのは休校式。
休校の理由は児童数の減少で、今後3年を目途に閉校するかどうか検討が行われます。
県内で進む、休校や閉校。
最新のデータでは、県内の小・中・高校の廃校数は262校で、全国で10番目に多くなっています。
学校が消えた地域の活気をどう維持できるのか。そのカギを握るのが廃校利用です。
まず訪ねたのは鹿児島県薩摩川内市にある高江未来学校。
2018年に閉校した高江中学校を活用して5年前にオープンしました。
施設を運営する東さんです。
高江未来学校を運営・東 峯生さん
「教室です。3つの部屋を作っています」
美川愛実アナウンサー
「窓から見える景色がすごく懐かしいですね」
のどかな景色が広がるこの校舎は、宿泊施設に生まれ変わりました。
そして、未来学校の一番の目的はこの場所にあります。
バドミントン専用の体育館です。
集まっていたのは東さんが運営するバドミントンクラブです。
東さんはスポーツを軸にした廃校利用を展開しています。
コートを完備した宿泊施設ではスポーツ合宿もでき、選手は校舎内のレストランで食事もとれます。
保護者
「もう至れり尽くせりで。とても恵まれた環境だと思ってます」
運営は順調に見えますが、オープンした2020年はコロナ禍真っ只中で、いきなり運営の危機に陥ったそうです。
高江未来学校を運営・東 峯生さん
「(オープン)当初スポーツ合宿の予約を受けていたが、それが全部ダメになった」
廃校利用に詳しい専門家も、運営母体の早期撤退という悩ましい現状を口にします。
廃校利用について研究 北海道文教大学 地域未来学科・熊野 稔教授
「コロナ禍後、早く撤退する事例も多く出ていて、全国的な課題にもなっている」
コロナ禍でダメージを受ける中、東さんが始めたのは燻製チーズの製造です。
スタッフの趣味がきっかけでしたが、販売を始めるとこれが名物に。
高江未来学校を運営・東 峯生さん
「失敗も成功になるようにみんなで頑張っているのが現状。コミュニティーの中からまた違うコミュニティーが生まれたりするのも見てきているので、そういう場所としていいと思う」
引き継いだ人たちの個性が現れる廃校利用。
県内でもワインの醸造所になったり、はたまた化粧品の工場になったり。様々な事例があります。
廃校利用を用途別に見ると、高江未来学校のようなスポーツを軸とした施設や文化施設、医療・福祉施設として使われる例が上位に並んでいます。
そして用途別のトップは別の学校として活用するケースです。
廃校利用について研究 北海道文教大学 地域未来学科・熊野 稔教授
「公立の小学校中学校が廃校になって、また今度は私立の学校が入ってきたというような例もたくさんある。学校が廃校になってもまた学校として使い勝手がいい」
2027年の開校を目指して今まさに動いている場所がありました。
待ち合わせ場所に到着したプロジェクトの代表は…
「こんにちは~」
古川瑞樹さん(16)、現役の高校生です。
広島県にある全寮制の高校に通いながら、地元鹿児島で保育園を営む母親と、新たな学校作りに挑戦しています。
「どうぞ」
「なんだか木の香りがしますね」
17年前に閉校した鹿児島県姶良市の新留小学校。
校舎には最後の卒業生たちのメッセージもそのまま残っています。
美川愛実アナウンサー
「どうして学校を作ろうと思ったんですか?」
私立新留小学校設立準備財団 共同代表・古川 瑞樹さん
「私は学ぶことにすごく楽しさを感じているけど、一方で不登校になっている人の数は年々増えていったり、自分が感じているものと数字で見た時の日本の教育の現状が少しギャップがあるかなと思って」
古川さんが描く学校とは、机に向かう勉強だけでなく、外での遊びや地域の人とのふれあいから学べる場所です。
そのイメージのヒントになったのが、ある企業のコマーシャルでした。
電気機器メーカーのDVDのコマーシャル。
2007年の休校を経て閉校した、新留小学校の最後の1週間を納めたドキュメントになっています。
私立新留小学校設立準備財団 共同代表・古川 瑞樹さん
「なんかここで起きてきたいろんな出来事とか、ストーリーみたいなのがすごく見えて」
古川さんにとって縁もゆかりもない、この新留小学校を舞台に、2027年春の開校を目指します。
募った1000万円のクラウドファンディングは目標額に到達。
既存の校舎の隣に新たな校舎を作り、さらに地域の人も利用できる図書館も作り、古川さんは
「つながりを生む学校」の再生を目指します。
私立新留小学校設立準備財団 共同代表・古川 瑞樹さん
「地域がもう一回元気になっていく、きっかけになればいいなと思っている」
廃校が歩む第二の人生。
再び地域の核となるために、それぞれの思いをこめた再生計画が進んでいます。
※新留小学校の再生状況、寄付などについては「一般財団法人私立新留小学校設立準備財団」のホームページをご覧ください。