「給食」が変える貧困の連鎖

日本の学校にあるありふれた日常に、アフリカでは貧困の連鎖を断ち切る役割が期待されている。

先月、長野県立科町の中学校の給食で出されたミックスビーンズの塩ゆで。
実はこれ、ウガンダの子ども達が食べている給食をイメージしたもの。

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生徒:
ちょっと薄い。自然な味ですね。

生徒:
これしか食べられないのはちょっと。

日本の子ども達にとってはもの足りない様子。
しかしこの一皿が、飢餓に苦しむアフリカの未来を変えようとしているのだ。

人口約4300万人のウガンダ共和国。
近年の干ばつの影響で、国民の約4割が栄養不足の状態だという。

ウガンダ共和国
ウガンダ共和国

さらに直面しているのが難民問題。
紛争が続く南スーダンからウガンダに逃れてきた難民は、約120万人にのぼる。

ウガンダの北西部アジュマニ県にある難民居住区を訪れたのは、国連WFPのサポーターとして食糧支援活動に参加しているEXILEのUSAさん。

アジュマニ県にある難民居住区を訪れたEXILE・USAさん
アジュマニ県にある難民居住区を訪れたEXILE・USAさん

難民居住区の柵の向こうからは必死に訴えかける女性の姿。

国連WFPスタッフ:
支援物資をもっと上げてくれと。外国人が来たのが見えたので、それであそこに。

USAさん:
本当に生きていくために必死なので、みんな思いを訴えてきてますよね。

USAさん
USAさん

難民支援は1ヶ月で約900円・・・1日30円ほどで生活

難民への支援金は、1か月で3万100ウガンダシリング。
日本円で約900円。1日30円ほどで生活する必要がある。

しかし、売られている野菜一束が500シリング。
野菜を一束買っただけで、一日に使えるお金の半分がなくなってしまう。

もともと飢餓に苦しむ地域に、難民が流入することにより起こる貧困の連鎖。
しかし今、こうした流れを断ち切る取り組みが行われている。

北東部の貧困地帯、カラモジャ地域の集落。
屋根はかやぶき、電気も水も通っていない。

カラモジャ地域の集落
カラモジャ地域の集落

こうした地域では、もともと子供たちは水汲みや家畜の世話などをする重要な働き手と考えられていて、親世代が学校に行けなかったために、自分たちのこどもも積極的に学校に行かせようとはしていない。
また、親世代の識字率も高くない。

小中学校に通う13万人の子供たちに給食提供

しかし、学校に通う14歳の少女に話を聞くと・・・
食べ物をくれるから。あと教育を受けられるから」と、学校に行く楽しみについて英語で答えてくれた。

彼女が学校に行けるのには、ある理由があった。
それが、 WFPが支援する学校給食。この地域のすべての小中学校に通う13万人の子供たちに提供している。

USAさん:
味はおかゆみたいですね。原料はトウモロコシなのかな。

給食の提供は朝と昼の2回。
学校で食事がとれるなら・・・」と、 親たちは子供たちを学校に通わせるようになったという。

学校に通うこどもの父親:
自分たちは教育の大切さを分かってます。学校に行けば仕事につけます。

USAさん:
学校給食があることによって学校に行くモチベーションになって、そして学ぶことができる。その子どもたちが将来仕事に就ければ村に還元することもできるし、貧困から抜け出す可能性も見えてくる。

貧困の連鎖を断ち切るウガンダの給食支援。
空腹と心を満たすその一杯が、子供たちの未来を変えようとしている。

給食支援と教育普及で貧困の連鎖断ち切りへ

三田友梨佳キャスター:
ウガンダのこの試みを、萱野さんはどう見ますか?

津田塾大学・萱野 稔人教授:
途上国への支援では、しばしば必要なモノが必要なところに届かないことがあります。
現地の権力者が支援物資を持って行ってしまったり、地元の古いしきたりが邪魔したりすることがあります。
今回の取り組みでは学校給食という明確な宛先があるので、食糧支援が必要とする子供にしっかりと届くメリットがあります。

萱野 稔人教授
萱野 稔人教授

三田友梨佳キャスター:
子供たちも水汲みですとか働きを求められることで、なかなか学校に行けないという現状もありますよね。

萱野 稔人教授:
子供が学校に行くと生意気になるとかで、なかなか学校に行かせたがらない親もいるし、教育が普及しない現状があります。
学教教育を受けると、単なる勉強ではなくて基本的な衛生観念や経済観念が育ち、生活改善につながることを学びます
それを貧困の連鎖を断ち切ることに使える。今回は給食食糧支援と教育の普及を同時に行うことで、貧困の連鎖そのものを断ち切る大きなきっかけになると思います。

(「Live News α」10月28日放送分)