2024年11月14日午前9時半頃、福岡空港に相次いで着陸した4機のアメリカ海軍の輸送機「オスプレイ」。目的は日米韓3か国の共同訓練を視察する駐日アメリカ大使らを東シナ海に展開する原子力空母に運ぶことだ。

オスプレイが福岡に姿を見せた背景には、協力関係の確立を急ぐ日本とアメリカそして韓国の安全保障戦略があった。
民間機離着陸が集中する時間帯に…
オスプレイが初めて福岡空港に着陸したのは、ちょうど民間機の離着陸が集中する朝の時間帯。米海軍のパイロットは「空港が混雑していて前方に2機、着陸機がいた。その後、オスプレイ4機は着陸し、素早く滑走路を空けたので問題はなかった」と話した。

この事態を受け18日には、共産党の議員ら約20人が九州防衛局に抗議の申し入れを行った。関係者によるとオスプレイの飛来についての自治体への周知が直前だったことやアメリカ軍による福岡空港の軍事利用が常態化する恐れがあることなどに危機感を募らせ申し入れを行ったという。

九州防衛局は「要請については内容を確認し防衛本省にも報告したい」とコメントしている。
オスプレイに搭乗し最前線の海へ
福岡空港の一角にあるアメリカ軍専用エリアにエンジンをかけたまま待機したオスプレイ。テレビ西日本など一部の報道機関が同行取材を許可された。エンジンの強力さを物語る高温の排気とプロペラから吹きつける猛烈な風に圧倒されながら配線むき出しの機内に記者は乗り込み、耳や目を保護するきつめのヘルメットと救命胴衣を装着。乗降用の後部のハッチが飛行中も開けっ放しになるため硬いシートにベルトでしっかり体を固定するよう乗員に指示された。

滑走路に出たオスプレイはわずかに滑走してほぼ垂直に離陸。搭乗取材した記者は「旅客機より加速感を感じる離陸だった。急角度で上昇し、地上がみるみる遠のいている感じだった」と話した。

プロペラを上向きにしてヘリコプターのように垂直に離陸し、その後はプロペラを正面に向けて飛行機のように高速で遠くまで飛べるのがオスプレイの最大の特徴だ。訓練海域の韓国・済州島沖の東シナ海まで1時間足らず。

オスプレイは航行中の原子力空母に着艦し、訓練を視察するエマニュエル米駐日大使が降り立った。
東シナ海が舞台 日米韓の思惑
「東シナ海を航行中の原子力空母ジョージワシントンの艦上です。日・米・韓3カ国の合同訓練が行われていて沖には日本の護衛艦でしょうか、艦影を確認することが出来ます」とレポートする記者の声も飛行甲板に並ぶ艦載機の騒音にかき消される。

この訓練は、2023年秋の3カ国首脳の合意に基づくもので、覇権主義的な動きを強める中国とミサイル発射を繰り返す北朝鮮を念頭に、日米韓の協力体制を確立するのが狙いだ。

2024年6月に続いて早くも2回目となる今回は、弾道ミサイルへの対処や対潜水艦作戦など複数の領域に最新鋭のステルス戦闘機F-35Cを投入し、その効果を実証することが目的とされている。

中国にとっては大きな脅威となることから電波や通信を傍受する中国の情報収集艦と見られる船が、空母から見える距離まで近づいていた。東シナ海は、まさに最前線の海だ。
アメリカの政権移行を前にした動き
空母打撃群を率いるニューカーク少将は取材に「F-35は世界最強の情報収集、共有能力があり(情報を共有する)味方機の生存率が向上する」と優位性を解説。海自部隊を指揮する第4護衛隊群司令の夏井隆・海将補は「基礎的な訓練からあらゆる領域にわたる訓練を3カ国で行うことで相互運用性が向上し、理解の促進にも繋がる」と報道陣に意義を強調した。

またアメリカのエマニュエル駐日大使は艦上で開いた会見で、日米韓の共同訓練は地域の安定のために今後も続いていくものだと強調。さらにトランプ氏への大統領交代の影響について「好ましい例えではないが」と前置きした上で「この問題は首脳の任期ではなく、国の抑止戦略に紐付いたものだ。インド太平洋、特にこの地域は中国のホームゲームでアメリカにとってはアウェーゲームである。しかし同盟国としっかり協力して攻守にあたればホームゲームに近くなる」と述べた。

政権移行で離任するとみられるエマニュエル大使は影響を否定したものの、日米韓が次期トランプ政権を見据えて協力体制の固定化を急いでいるのは明らかだ。

福岡空港に初めて飛来したアメリカ海軍のオスプレイ。安全保障の波が高まる最前線の海を舞台にした日米韓の戦略上の思惑と、アメリカの政権移行を前にした3か国のあわただしい動きが福岡でも垣間見えたかたちだ。
(テレビ西日本)