演劇やコンサートなど文化・芸術活動の拠点となってきた静岡市の市民文化会館は老朽化のため改修工事を計画しているが、予定通り進まず関係者も気を揉んでいる。工事の入札をしても受注を希望する業者はいない。一体何が起きているのか?

市民の文化芸術の拠点が老朽化

静岡市民文化会館外観
静岡市民文化会館外観
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静岡市葵区の市街地にある静岡市民文化会館。

JR静岡駅や静岡鉄道のターミナル駅からのアクセスもよく、コンサートや大道芸ワールドカップ、それにミュージカルや学校行事まで様々な催しで利用されてきた。

1978年の開館以来、市民・県民の文化芸術、娯楽の拠点として親しまれてきた市民文化会館だが、ある問題に揺れている。

老朽化の進むホール内部
老朽化の進むホール内部

鈴木櫻子 記者
こちらの建物、設備の老朽化などにより、改修が必要となっています。しかし、その改修工事にかかる費用をめぐり再整備事業への入札は1件もないのが現状です

待合ロビーのベンチは開館当時に作られたもののまま。ホールの客席や照明などの機材もメンテナンスが追いついておらず老朽化が進んでいる。

練習室にリニューアル予定の畳部屋
練習室にリニューアル予定の畳部屋

静岡市文化振興課・望月雅乃 課長
市民文化会館は1978年に建てられ、大規模改修を耐震補強も含めてやるが全体的に古く、今のニーズに合った形での改修を考えている。例えばこちらの第4・5・6の会議室は、現状、会議室と和室という形だが、文化の活動拠点にしたいということで練習室にリニューアルしていく

再整備をめぐり計画は二転三転

市民文化会館の再整備をめぐる経緯
市民文化会館の再整備をめぐる経緯

施設の再整備をめぐっては、一時はアリーナとの複合化が検討されたほか、改修の事業手法も民間が投資するPFI方式から公共事業方式に変わるなど、事業計画や費用が7年近くにわたって二転三転してきた。

静岡市文化振興課・望月雅乃 課長は「大規模な空間の改修となると費用がかかってしまう上に予想以上に物価高騰があった」と話す。

こうした中、静岡市の2024年6月の補正予算案が発表されると市民文化会館の総事業費が大幅に増えることが明らかとなった。

 
 

静岡市・難波喬司 市長
再度積算した結果、大変申し訳なく残念だが今まで総事業費を124億円としていたが27億円増の151億円になります

改修部分の変更はないにもかかわらず費用が27億円も増えてしまった原因について、市は物価高騰の中で設備の単価設定など「積算が甘かった」と説明した。

その上で、難波喬司 市長は「27億円はとんでもない金額だが、これがないと市の文化活動が回らない状況のため、大変申し訳ないがこの金額をかけても改修せざるを得ない」としている。

休館期間延長に不安の声

ホールでのオーケストラ演奏風景
ホールでのオーケストラ演奏風景

再び入札を行うため事業計画が1年延び、2025年4月からの休館期間も延長されることとなり、施設を利用する市民団体の活動への影響が心配されている。

静岡市文化協会・海野俊彦 会長
工事期間の延長はストレートな痛手になる。2025年からまた調整期間で活動できないとなると延べの空白が長いので組織離れや会員離れが出てくる気がしてならない

休館中、市は「近隣の施設を利用してほしい」としているが、市内の別の大型施設も稼働率が高く、ホールの予約はほとんど埋まってしまっているのが実情だ。

静岡市文化協会の海野俊彦 会長は「(市民文化会館の)稼働率が高いということは他に場所がない裏返しだと思う。文化祭とか芸術祭ぐらいのボリュームが入る場所はどこにもないので」と話す。

同規模の代替施設の利用は難しく、3年の休館期間は市民の文化活動の維持に大きな影響をもたらす見込みとなっている。

市民文化会館の外観
市民文化会館の外観

静岡市文化振興課・望月雅乃 課長:
皆さんの活動を止めないように休館期間を短くコストも抑えるように議論した結果、いろいろ変遷があったが今の形(改修)が一番いいと考えている

市は「1日も早く改修工事に着手し開館に向け準備したい」と説明しているが、先行きの不透明感は払しょく出来ていない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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