株式会社オーバーラップより昨年4月に発売したコミックエッセイ『学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで』(はちみつコミックエッセイ)が、先日5刷りとなりました。
「不登校」に向き合う親子の日々を赤裸々に描き、じわじわと話題を集めて多くの読者の共感と支持を得た本作。社会問題として取り上げられることがますます増えてきた「不登校」は、悪いことなのか?それも1つの選択肢としてとらえられないのだろうか?
「不登校」で苦しむ時代を終わりに出来ればという思いも込めて執筆された著者の今じんこさんが、本の出版、大量重版を経て、今思うことに迫りました。
『学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで』
(著/今じんこ 「はちみつコミックエッセイ」刊)
長男の後押しから始まった執筆、怒りから繋がりたい気持ちに変わっていく不思議な体験
―まず5刷りが決まったときのご感想をお伺いできますでしょうか。
じんこ:しみじみとホッとして、本に関わってくれた全ての方や読者さんへの感謝が一番に浮かびました。
重版が決まるたびに夫にお祝いで焼肉を奢ってもらってるので、二番目に肉が浮かびました。
―焼肉!いいですね(笑)旦那さんもたくさん書籍に登場されているので、その場面を想像してほっこりしてしまいました。改めて本作を執筆に至った経緯をお伺いできますでしょうか。
じんこ:きっかけは本好きな長男が「かーちゃんは本出さないの?本はすごいよ。自分のファン以外もたくさんの人が読んでくれるんだよ!本描きなよ」と言ってくれたことでした。
長男の後押しもあり、はちみつコミックエッセイが主催するコミックエッセイ描き方講座を受講し、卒業課題でグランプリをいただいて出版に進むことができました。はじめの執筆動機は正直、「学校が合わないことくらいで日本中の親子が苦しんでるのは絶対おかしい!」という怒りのエンジンが強かったです。
でも描き進めるうちに、「誰も悪くないし、誰も責めたくないし、理解とやさしさで繋がりたいだけなんだ」という気持ちに変わっていったのが自分でも不思議な体験でした。
本作の中で、今じんこさんの心の移り変わりがありありと伝わってくる(作中より一部抜粋)
数多くのコミックエッセイ作品を世に送り出してきた松田紀子によるコミックエッセイ描き方講座。今じんこさんもこの講座の受講生。
初のコミックエッセイ執筆で苦戦。「本として世に出す恐怖」を乗り越え、いただいた感想が励みに
―長男…ということは、本作に登場する「もっちん」くんですね。本当に素敵な感性をお持ちですね。執筆される中で気持ちの変化があったとのことですが、執筆を進めるにあたり苦労されたことはありましたか?
じんこ:もともとインスタグラムで絵日記のようなものは描いていましたが、商業的に通用するレベルではまったくなく…。コミックエッセイと呼べる作品作りに取り組んだのは今作が初めてで、本当に苦戦しました。でも編集さんに指摘されたところを直していくたびに、みるみるネームが良くなっていくのは快感で楽しかったです。
執筆中は過去の経験に向き合うことよりも、「本として世に出す恐怖」のほうに相当参ってしまいました。大変だったよアピールみたいでダサいですが、「うまく伝わらなかったらどうしよう」「傷つく人がいたらどうしよう」と心配で不安で、吐いて寝込んで病院に行ってギリギリの状態でした。
だけどいざ発売すると、読者さんに想像以上にまっすぐ届いてあたたかい感想を多くいただいたことが本当に嬉しくて。辛かった執筆期間が報われる思いでした。
―そのような状況になりながら生み出された書籍と伺って、それを踏まえたうえでもう一度頭から読み直したいという気持ちになりました…!今じんこさんが特に思い入れのあるエピソード(話数)やコマなどはありますか?
じんこ:付き添い登校時期は辛すぎて私にとってトラウマレベルなので、5話の「付き添い登校、もう限界です」はペンが進みませんでした。でも当時の気持ちにしっかり向き合えたので5話は思い入れがあります。
付き添いのしんどさは不登校の親は口を揃えて言いますね。中には付き添い中に過呼吸を起こすお母さんもいるくらい。ここは「不登校の底つき」のシーンなので、読者さんが読んでキツくなりすぎないようにできるだけ絵はかわいく描くようにしました。
教室に入れない息子との別室登校が、時間も体力も精神も奪っていく。(作中より一部抜粋)
好きなコマはP74の、私がブチギレて龍が宿ってるコマです。根はギャグ好きなので、一冊の中で箸休め的にところどころギャグも入れているので注目してほしいです。
お仕事をお断りしたクライアントからのメッセージに、龍が如く怒り狂う今じんこさん(笑)(作中より一部抜粋)
1000人以上のSNS親の会で共感多数の「あるある」ネタ、ここで出会えた仲間が支えになる
―コミカルなカットや、ギャグ感あるイラストがバランスよく散りばめられていることで、最後まで読み進められたという方も多いと思います。ちなみに、エピソードの幕間に描かれていたアンケートがより「不登校」を身近にリアルに感じさせてくれたのですが、あちらはどのように集計されたのでしょうか?
じんこ:インスタグラムで不登校発信を始めてから、相談DMをいただくことが増えまして。力になりたいけど相談数も多いし、イチ当事者でしかない私が無責任に答えることもできないから悩んでいました。そこで不登校の親同士で安心して繋がって話せる場所を作ろうと、無料のSNS親の会運営を始めたんです。(現在は停止中)
私は管理人で、1400人ほどメンバーが集まり、多くの方が元気になってくれて大好評でした。「この会の明るい雰囲気を本で伝えられたら、もっともっと多くの方が元気になるに違いない!」と確信して、メンバーにアンケートに協力してもらいました。本のカバーをめくったところにも、お守りのようなみんなの言葉をたくさん載せています。
この本が多くの方に共感されたのは、親の会で「みんな同じ気持ちだったんだ!」と知った不登校あるあるを本編マンガにもたくさん入れたからです。制作中から支えてくれた仲間たちには本当に感謝しています。
エピソードの合間に不登校のお子さんを持つ親御さん約300人に聞いた様々なアンケート結果が紹介されており、多様なケースを知ることができる(作中より一部抜粋)
―そのような会があったのですね!そういった支えなどもあって世に生み出された本作が、読者の皆様の支持を得て重版を重ねる結果となっております。読者のみなさんの反応などを見ていて、感じられたことはありますか?
じんこ:「うちの子ともっちんでは性格も状況も違うのに、じんこさんと私の辿る心の過程は本当に同じでした」というようなことをよく言われます。不登校の親に特徴なんてなく、性格も考え方もバラバラなのに似たような過程を辿らざるを得ないほど、不登校は周囲に理解されにくい環境なのです。
でも本に描いたのは約4〜5年前の話なので、この数年でもかなり理解が広まったのを感じます。今は過渡期にあるので、あとちょっとで一気に変わるのでは?と思います。変わるのを待つのではなく、私は行動で変えていきたいですね。
"押し付けではない、子どもの気持ちに目を向けて"、「不登校」の経験を経て伝えたい想い
―発売から1年ほど経過して、今じんこさんの環境にも変化があったのではないかと思います。今改めて「不登校」について思うことや、読者の皆さんに伝えたいことがありますか?
じんこ:本の最後にも書きましたが、「不登校」は問題ではないけど、学校に行く行かない関係なく「なんの問題もない親子」なんてきっといないと思います。今までの固定観念や価値観が根底からひっくり返り、学び直して成長するきっかけをくれた不登校という経験には感謝しています。これは私だけじゃなく不登校の親御さんたちがよく言うことです。
不安を煽る不登校ビジネスも盛んですが、どうか大人の一方的な思いを押し付けず、子どもの気持ちに目を向けて欲しいなと思います。
さまざまな思い込みに縛られていることを考えさせられる(作中より一部抜粋)
―最後に、本作が今後、どういった方々に読まれて行って欲しい、または、本が読まれることでどういった影響があったら嬉しいという思いがありましたら教えていただきたいです。
じんこ:「本を読んでから子どもを追い詰めずに済んで、親子の笑顔が増えました」とか、「子どもがこの本を読みながら気持ちを話してくれました」と言っていただくと本当に泣くほど嬉しいです。当事者にはもちろんですが、不登校に関心がない方にも届けることが出版当初からの目標でしたし、広く届いている手応えを感じています。
職員会議や学校だよりでのご紹介や、職員室での回し読みや、小児科や児童精神科に置いてもらっている報告もとても嬉しいです。家庭と学校と社会が理解しあえる一助になればこんなに嬉しいことはありません。
「不登校」についてだけでなく、様々なことを改めて考えるきっかけを与えてくれる(作中より一部抜粋)
「はちみつコミックエッセイ」公式サイト:https://over-lap.co.jp/888ce/
「はちみつコミックエッセイ」公式X:https://twitter.com/hachimitsucomic
「はちみつコミックエッセイ」公式Instagram:https://www.instagram.com/overlap_ce/
「はちみつコミックエッセイ」公式youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCYaq0oIJj1Rmgio0tytv5Rw
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