一般社団法人 未来技術推進協会は、持続可能な開発目標(SDGs)普及への取り組みとして、SDGsを体験できるボードゲーム「Sustainable World BOARDGAME」を活用したワークショップを提供しています。
SDGsボードゲームは協会メンバーの熱意と試行錯誤から誕生したもので、このボードゲームを活用した小中学校向けワークショップを通して、子どもたちの主体的な学びや先生方からの評価も得られています。
今回はSDGsボードゲームの誕生秘話から、小中学校向けワークショップ開催に至った経緯やワークショップにかける担当者・協会の想いをお伝えしていきます。
SDGsを身近に感じるため、"現実世界の具体的な題材を扱う"ゲームへ
私たち未来技術推進協会は、当初はテクノロジー分野の勉強会や講演会を中心としたコミュニティ活動を主催していました。この活動の中でたまたまSDGsについて詳しい方と繋がり、SDGsをもっと理解しやすい形にしたいという想いからゲーム制作のアイデアが生まれ、今のSDGsボードゲームにつながっています。
ゲーム制作が決まると、協会メンバーの元ぷよぷよ世界王者の方を中心にゲームの具体化やルールの調整を進め、3週間ほどでテスト版のボードゲームが完成しました。
SDGsを自分ゴトとして身近に感じられるという着想から、対戦ではなく協力、現実世界での実践につながる具体的な題材を扱う、といったコンセプトが固まっていきます。ゲーム性としては、カードに従うのではなく自分のした選択が自身・他のプレーヤーの結果に影響を与えることを重要な要素としてボードゲームの形ができあがりました。開発者の元ぷよぷよ世界王者メンバーは「よくプレイしていたボードゲームの中に自分の取った選択が同じ卓の他のプレーヤーに影響を与え、他のプレーヤーと協力することでクリアしやすくなるゲームがあり構想の参考にした」と振り返ります。
といってもテスト版のボードゲームはあくまでテスト版。
SDGsを学べる事例もゲームバランスも整っておらず、ここからが大変でした。
手書きカードと柿の種を使った深夜のテストプレイ大会
まず苦労したのはSDGsの17目標に関連する具体的な取り組み事例の収集です。当時の活動メンバーがほぼ総出で事例集めに走りましたが、実際に探してみると目標によって集まりがいい事例とそうでない事例があったり、ゲームカードという限られた枠に収まるように少ない文字数で難しい事例を伝える必要があるなど苦労も多くありました。結果的に最初に作成したボードゲームではSDGsの適用事例を96個まで絞り込みましたが、実際には150を超える具体的な事例を集めていました。
事例を集めたあとは実際にボードゲームとしてのゲームバランスを整えるため、何度もテストプレイを繰り返しいろいろなパターンを作っては試してというPDCAを回していきました。テストプレイと改善はとにかくPDCAのスピードが早く、毎週のように改善版のゲームを作成していました。週1、2回、仕事終わりに貸し会議室に集まり、複数人でゲームをプレイしフィードバックを行う、といったことを繰り返しました。深夜遅くまで続くテストプレイ大会では、改善版のカード印刷が間に合っておらず、付箋に手書きしたカードとゲームの駒の代わりに差し入れの柿の種を使ってゲームを進めていました。
(SDGsに配慮しゲームプレイ後の柿の種はもちろん美味しくいただきました)
当時を知る協会メンバーは、大学生のサークル活動のような真剣ながらみんなで楽しむといった感覚だったと振り返ります。
1,000社以上の企業に案内するも低調なスタート、地道な活動を続ける日々
何度もテストプレイを重ねて完成したSDGsボードゲームもプレイしてもらわなければ広まりません。ボードゲーム制作をスタートした2017年12月ごろは今ほどSDGsが世間的に認知されていない状況で、1000社以上の企業に案内メールを送ったもののほとんど反応がなかったということもありました。協会メンバーで試行錯誤し様々な取り組みを進める中で、ワークショップ形式でのイベント開催という小規模なところからスタートしていきました。
ワークショップ形式のイベントは月1,2回のペースで開催しており、その中では様々な方との出会いがありました。メディア関係の方や学校関係の方、過去に協会オフィスとして利用させていただいていたコワーキングスペースもSDGsワークショップからの繋がりでした。
ワークショップには大人だけでなく小学生や中学生が参加しSDGsボードゲームを体験する機会もありました。小学生にボードゲームを体験してもらう際には、できるだけ子供にも興味を持ってもらえるような事例カードを選んでゲームを進めましたが、本人はすごろくを遊んでいるような感覚だったのでしょうか。サイコロを振って駒を進める、うまくいくとカードやコインをゲットできる、といったゲーム性を単純に楽しんでいました。特に虹色のコラボレーションカードが一番人気で、競い合うように取ろうとしていました。ボードゲームの本来の目的でもあるSDGsに関することは、隣で付き添っている親御さんにかみ砕いて説明してもらいました。
内心、子供にはなかなか理解してもらえないかとも思っていましたが、途中で子供達だけ4人でボードゲームをプレイしている瞬間もあり、自分たちなりに楽しんでくれたんだと実感できました。また、小学生だけでプレイしているところに隣にいた中学生達が教えてあげるという微笑ましいシーンも目撃できた点は今でもよく覚えています。
こういったワークショップの活動や各種メディアへの告知を地道に続けていくことで、学校関係者様や旅行会社様から案件の問い合わせや依頼をいただけるようになってきました。
身近なスポーツやゲームに置き換えるなど、生徒目線にこだわったSDGsワークショップ
学校関係者の方から問い合わせや依頼をいただき、SDGsワークショップを開催することになった際にネックになったのはボードゲームのルールや事例の難しさでした。社会人のメンバーがベースを考えたこともあり、カードに書かれた事例や「コラボレーション」「自己投資」等のルールも学生にはイメージしづらく、いかにたとえ話や実例を交えながら伝えるかが大変でした。
実際にファシリテータを担当されたメンバーは当時の苦労をこう振り返ります。
Q:学生向けのワークショップで特に工夫した点や気づいた点はありますか?
一つはやはり社会人経験のない学生に用語や枠組みを理解してもらうため、たとえ話や置き換えで地道に伝えたところですね。ゲームやスポーツ、身近な生活での事例に置き換えて会話をやりとりしながら理解を促していきました。
また、大人数相手に認識や理解の統一を図るための工夫として、誰かが抱いた疑問は別の誰かも抱いていると思ったので、一つ一つの質疑応答を全体に向けて発信することで理解度を底上げするようにも工夫しました。先生方にもそれぞれの卓のサポートに入っていただいていましたが、先生によっても理解や持論にばらつきがあるため、なるべく全体で合わせるための工夫としても活用しました。
また、第2段階の「生徒各々が課題を見つけて解決策を考える」という課題に対していくつかのグループに発表をしてもらったのですが、そのどれもがかなり調べてきていたり、世の中の事例をしっかりと踏まえていてクオリティが高かったことがあります。他のグループの発表にも集中して聞き入り、意見が活発に出たり積極的な生徒さんが多いことも体験できました。実施前は正直、社会課題は壮大でとっつきにくいテーマでつまらなく感じる人も多いのかなという杞憂がありましたが、それを大きく覆す積極性や、素直で発想豊かなアイデアがたくさん出てきたことが嬉しかったですね。みんなが凄く素直に課題を考えたり議論したり、お互いに教えあったりしながら自分で学習していく可能性を見れたことが収穫になりました。
Q:先生方からのご意見や評価などはいかがでしたか?
全体的に高評価をいただくことが多いと感じています。特に生徒と共同で企画・運営と学習ができた経験になったこと、生徒同士が自発的に教えあって学習するという主体性を引き出せたことが非常に有意義だったと言っていただくことが多いですね。
日々の学校業務でお忙しい中にプラスして時間を作っていただいているので、先生方から評価をいただけるとこちらとしても今後につながる体感を得ることができました。
学校向けのSDGsボードゲームワークショップでは、学生向けファシリテータの有識者の方からサポートやアドバイスもいただきながら試行錯誤していくことで、生徒が生徒に主体的に教えていく、巻き込んでいくという可能性や実績を体感できたことで、他の学校向け案件にも展開していける展望が見えてきました。
"生徒の柔軟な思考を尊重する"協会代表が語る学校向けワークショップの狙いとは
これまで協会では全国各地の小中学校から依頼をいただきSDGsボードゲームを活用したワークショップを開催しています。学校向けワークショップの今後について協会代表は以下のように語ります。
Q:なぜ学校向け研修の需要が高まっているのでしょう?
2030年に向けたSDGsの解決がまさに今学生である次世代の皆さんの課題であり、意識や熱量が高まってきているということです。また、学習指導要領の変更や大学受験形式の多様化によって、学校側がSDGs学習を学生生活に取り入れることに前向きになっていることがあります。
いま案件として多いのは修学旅行と絡めたもので、以前と異なりただ旅行に行くというのではなく事前に課題を設定し、旅行先で実際に課題を調査・検討した上で、旅行後に発表するような「課題解決型旅行」をする流れになってきています。
Q:学校向けのワークショップを企画する上で大切にしてきたことは?
SDGs達成に向けた目標の特徴として「答えがない問いに対して一丸となって考え抜き、自分達で答えを導き出していく」というものがあるので、ここにしっかりつながるように意識しましたね。
先生方の時代含め、我々の世代の学校教育は「答えがあるものに対して、その解き方を教える」というものが軸にあったと思います。そのため、生徒が出したアイデアについて、前例や常識を元に合っている/間違っているで判断しがちな傾向にあります。それを踏まえ、生徒が出したアイデアを否定せず、なぜそう考えたのか、どうやって導いたのかなど経緯を一緒に確認しながら、様々な答えを一緒に導き出すことに徹することを先生方とも認識を合わせて進めていきました。彼らの世代の問題を彼らの柔軟な思考を尊重し、様々な解決策を出していくことを大事にしましたね。
Q:SDGsボードゲームにかける想いについても教えてください
小中学校向けワークショップで活用しているSDGsボードゲームは元々「SDGsを体感し、自分ゴト化すること」を目指して設計しています。
このボードゲームを通じて、未来を担う子供たちを中心に多くの方がSDGsを自分ゴト化し、さまざまな地域でSDGsを達成するためのプロジェクトが起こることを期待しています。世界の課題解決事例を楽しく学びながら「SDGs達成」と「自己成長」を目指すことで、大人から子供まで、SDGsの理解だけでなく、協力の大切さや広く深く考える思考力、現場感や課題感を養っていく手助けができればと考えています。
参加者の声:小中学校向けワークショップはのべ10,000人以上の生徒さんが体験
SDGsボードゲームを活用した学校向けワークショップは、2020年〜2024年にかけて全国各地の小学校、中学校、高等学校を対象に実施し、のべ10000人以上の生徒さんに体験いただいています。
実際に学校向けワークショップに参加された生徒さんや先生方からは以下のようなコメントもいただいています。
生徒さんからいただいたコメント
・普段自分とは関係がないと考えていたニュースも意識するようにしたい。
・課題解決には他の組織との協力が必須ということがわかった。
・お金を出資するにも手数料が発生するなどリアルなお金の動きを学んだ
・社会課題に対しての関心が高まった。進路に役立てられそう
・修学旅行の事前学習でSDGsを勉強でき、旅行中も課題を意識できた
先生方からいただいたコメント
・SDGsという大きなテーマを自分の日常に落とし込むことができた
・普段コミュニケーションしない先生ともディスカッションできた
・SDGsに対してどこから取り組んでいけばいいかわからなかったがゲームを通して取り組む指針が立った。
・探求学習にSDGsをどう取り入れていくかの案ができた
・修学旅行の事前学習で社会人向けにプレゼンする機会を設けてもらい、学生にいい経験をしてもらえた。
持続可能な社会の実現を目指して
当協会では今後もSDGsボードゲームを活用したワークショップの提供を通じて、未来を担う子供たちがSDGsを自分ゴトとして捉えSDGs達成に向けた行動に移す未来の実現、さらには社会の持続可能な発展に貢献し、社会全体の変革を牽引してまいります。
今後も小中学校向けのSDGsワークショップや持続可能な社会の実現に寄与する取り組みを実施予定ですので、SDGsボードゲーム・ワークショップなどの取り組みについてお問い合わせの際は下記リンクのHP等からご連絡ください。
■SDGsボードゲーム(Sustainable World BOARDGAME)
https://sustainable-world-boardgame.com/
「Sustainable World BOARDGAME」はすごろく形式で楽しみながら学べる教材です。ルールはわかりやすく、中学生以上からプレイできます。
※小学生向けには「子ども版」も用意しております
■学校向けワークショップ情報
https://sustainable-world-boardgame.com/school
SDGsを自分ゴト化するには、知識だけでなく、体感してイメージを膨らませることが重要です。SDGsを体感するボードゲーム「Sustainable World BOARDGAME」を使ったワークショップが、全国さまざまな学校で開催されています。
楽しみながら現実の実例をもとにSDGsを学べるSustainable World BOARDGAMEは、日本版、世界版のほかにも、都道府県や市区町村ごとに制作されています。縁やゆかりある地域から、興味を持った地域から、さまざまな地域でSDGsを体感してみてください。
■未来技術推進協会
https://future-tech-association.org/
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