能登半島地震は富山市北部の蓮町にも液状化の被害をもたらしました。
その地区で途絶えていた伝統の獅子舞。
被災地を元気にしたい...。
その思いから今年、6年ぶりに復活しました。

夜7時すぎ、公民館に集まったは、富山市蓮町の萩浦地区の住民。
年代は小学生から60代まで様々です。

練習しているのは、およそ130年の歴史があるとされている地区伝統の獅子舞。
地区で毎年5月4日に合わせて行われる春季祭礼で披露されてきましたが、新型コロナなどの影響で2018年を最後に途絶えていました。

しかし、今年は元日の地震でおよそ70世帯が液状化の被害に遭った同じ町内の東蓮町地区などから「被災地を元気づけてほしい」と、復活を望む声が上がりました。

実に6年ぶりの獅子舞。
被災地の思いに応えようと、萩浦地区は巡行演舞を決めました。

およそ1カ月、週に5回のペースで部活動や仕事終わりに集まり練習を続け、この日は最後の練習です。

保科雅之さん。
獅子舞に参加する中では、最年長のリーダー的存在です。

*蓮町青壮年会 保科雅之さん
「きょうは最後の練習。本番があさってなので仕上げ。例えば足の運びだとか手の動き、タイミング。萩浦の獅子は中に5、6人入るので頭の動きが幕の中に入るとなかなか分からない」

6年ぶりということもあり、子どもたちはほとんどが初めての獅子舞。

*蓮町青壮年会 保科雅之さん
「尻尾もっとさがらんにゃ」

大人たちも思い出しながらの指導です。

*初めて参加する小学6年生
「これが獅子舞は初めて。(最初は)あまりうまくいかなくて『何だこれ』と思った」
*初めて参加する高校2年生
「息を入れても、うまく音になってくれなくて、音を出すのにまず2日くらいかかった。そこから頑張って(演目を)覚えてだったので大変だった」

*蓮町青壮年会 保科雅之さん
「(地震で)暗い気持ちになったのは事実。自宅が被害にあった人も少なくない。(地震から)4カ月経つが、トンネルを抜ける光じゃないが、希望の光として(獅子舞を)やった方が気持ちも前を向きやすい」

本番当日、練習を重ねてきたおよそ40人は、町内をまわり、かわるがわる14の演目を披露、太鼓と笛の音色に合わせた舞で、住民を元気づけました。

*参加者
「みんなアドレナリンが出て、練習よりもはるかにパワーが」

*演舞を見た住民
「子どもたちの元気な姿が見られてとても良かった。懐かしい。毎年でもやってほしい」
「涙が出てきた。元気が出た」

次に向かったのは被害が最も大きかった東蓮町地区。
ここで披露された演目は、獅子が360回転する「毬」。
全ての演目の中で最も難しいとされ、練習でも多くの時間を割いてきました。

*東蓮町 新村哲夫町内会長
「東蓮町のために舞ってくれて、すごくうれしい。たくさんの人が祭りに来てくれた。その力で復興していきたいと新たに思った」

*蓮町青壮年会 保科雅之さん
「やってよかった。少しでも前向きに気持ちが晴れるように協力できれば」

自身もこの獅子舞と共に育ってきたという保科さん。

一時的な復活ではなく、これから先、何十年、何百年と地区で獅子舞が続いていくことを願っています。

*蓮町青壮年会 保科雅之さん
「昔の演目も、そのまま残っている。後輩がどんなやり方をしていくか。時代に沿ったやり方が出てくると思う。伝統を重んじながら、時代に合った良さを取り入れていってほしい」

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。