石川県内最大の水揚げを誇ってきた輪島港は、地震の影響で海底が隆起しすべての漁がストップしています。先が見えない中職を失った漁師たちはどのように過ごしているのか現状を取材しました。

「自分たち冬はカニを採っていて春はふぐとか獲って。この時期はふぐとカレイの間くらいの時期ですかね」

底引き網漁船の船長、梅本洋介さん。約4か月間、漁ができていません。

先祖代々受け継いできた「第八幸洋丸(こうようまる)」は津波で流された際に岸壁にぶつかり先端のローラー部分が壊れてしまいました。

梅本さん:
「一応鉄工所にはいってるんですけど、みんないろいろ壊れているしいつ順番くるか分からない。エンジンをかけた時だけ漁師に戻った感じはありますね」

船の修理を待つ間週に1度、油をさしてエンジンの調子を確かめます。ただ、船が直っても漁を再開することはできないといいます。

梅本さん:
「この貝がある白いラインまでここまで水があった地震前は。」

輪島港は地震の影響で 海底が最大2メートルほど隆起。海底にたまった土砂を取り除かなければ船を出すことができないのです。

梅本さん:
「(収入が)ゼロですね。なので違う仕事をしないといけないですね」

梅本さんは今、家族を養うため短期の仕事で生計を立てています。

梅本さん:
「これは今から仕分けする時に着るゼッケン。ゼッケンとかヘルメット」

新たに始めた仕事は災害廃棄物の仕分け。梅本さんは、「20歳から漁師して漁師しかしたことなかったので毎日の仕事はまだ慣れていないですね。」と話します。仕事は1カ月ごとの契約でいつ打ち切られるか分からず不安な日々が続いています。

厳しい状況におかれているのはほかの漁師も同じです。

延縄漁船の船長 板谷由雄(いたたによしお)さん(70):
「これ倒れたので取ってやり直ししようかなと思って」

延縄漁船の船長、70才。

Q:日中は何してるんですか?
板谷さん:
「何もしとらん。ただ家の片付けしとるだけ」

若いころから漁一筋で生きてきたという男性。新しい仕事を探すことは簡単ではありません。

板谷さん:
「年になってなかなか雇ってくれるところないし。」
Q 家計の状況は厳しいですか?
「厳しいね」

こちらの男性の船は小型のため、海底が隆起している状態でも漁に行けるといいますが…

梅本嘉之さん:
「氷ないし買う人もおらん。氷がないばっかりにどこ持っていくん」

港の製氷施設が壊れているため魚を獲っても出荷ができず、網の修理などをして     時間をつぶしています。

梅本嘉之さん:
「さみしいわ。あと退屈や。いい波になるやろ沖行きたいっていう日にこれからなる。海眺めてあーいきたいんやけどなぁ行かれんもんな。それがむなしい。」

今月中旬。輪島港に仮設の桟橋が完成しました。地震の発生以降、港に停泊したままになっていたおよそ200隻の船を仮桟橋などに移動させ海底を掘り下げる工事がこれから本格的に始まります。港の復旧に向けた第一歩です。

梅本さん:
「あっちの深いところ行ければ漁にいけるんかなと。氷の問題とかもあるんですけどまず移動が第一歩ですね。それを待ちながらゴミを仕分けしている。早く出たいですね。本当に」

底引き網船長の梅本さん。今は別の仕事をしていますが漁師をやめることも輪島を離れることも考えていません。

父から受け継いだ漁師の仕事。家族を養うためにもやめるわけにはいかないといいます。

梅本さん:
「いつかは漁に行けると思っているのでとりあえずそれまでは頑張ろうと思ってやってる。」

梅本さん:
「魚食べたい?」
子供:
「食べたい!」
梅本さん:
「食べたいらしいんで新鮮な魚を食べさせてあげたいですね」

これまで経験したことのない 苦境に立たされている漁師たち。再び沖へ出られる日を待ちながら何とか前を向こうとしています。

石川テレビ
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