東日本大震災の津波で被災し、一時、廃棄処分となったイタリアの名車が今年、修復されました。3月、当時所有していた宮城県石巻市の男性とも再会、今後は震災を伝える「証人」として全国各地を回ります。

3月、宮城県名取市にあるカーショップに運ばれてきた1台の車。到着したのは、イタリアの自動車メーカー「ランチア」が開発した名車「デルタ」です。津波で被災したデルタを修復したのは、イタリア車を中心に販売修理を行う東京のカーショップです。

クイックトレーディング 寺島誠一社長
「きょう、デルタの元のオーナーに見ていただくのが、すごく感無量ですね」

「ランチア・デルタ」は、世界的に有名なレース「WRC・世界ラリー選手権」の参加を目的に開発された車で、1987年からは6連覇を達成しました。

カーショップの社長・寺島さんは震災後、津波で水没し廃棄処分となっていたデルタを引き取りました。その後、震災を伝える車として保存できないか考えるようになり、デルタの修復を決意したといいます。

クイックトレーディング 寺島誠一社長
「ゼロベースになってもがんばって、もう1度復活できたよっていうところが、デルタを見て伝わってくれればすごくいい」

しかし、水没したデルタはさびがひどい上、車体の生産がおよそ30年前に終了し、修復に必要な部品探しも簡単ではありませんでした。

クイックトレーディング 寺島誠一社長
「何万点て部品あるから、一つでも作動しないとちゃんと走れない」

去年12月、ようやくエンジンを組み上げられるまで作業が進み、寺島さんは修復に協力してくれた仲間と「点火式」を行いました。

クイックトレーディング 寺島誠一社長
「いけー!1,2,3、かかったー」

デルタは震災まで、石巻市に住む門間正明さんが所有していました。修復を諦めて手放した車が再生したことを知り、驚いたといいます。

デルタ元オーナー 門間正明さん
「修復は寝耳に水ですよ、考えられないっていう感じ、あれをよく再生したなと」

門間さんのデルタは、JR石巻駅の近くにあった倉庫で津波の被害に遭いました。

記者
「1メートル以上の水没?」

デルタ元オーナー 門間正明さん
「そうです諦めましたけどね、当時は」

諦めていた愛車との再会。この日、門間さんにも現在のデルタを見てほしいと寺島さんが再会の機会を作りました。

デルタ元オーナー 門間正明さん
「全然、そのままじゃないですか」

門間さんが乗っていたデルタは、1995年に限定250台で日本国内だけで販売された「コレツィオーネ」と呼ばれる車種。状態の良いものなら、1500万円以上で取り引きされる希少な1台です。

デルタ元オーナー 門間正明さん
「いやー、よくここまでやられましたね」

クイックトレーディング 寺島誠一社長
「門間さんと会え、感激していますね、最高。ちょっと言葉が出ない」

修復されたデルタは3月、車検に合格。門間さんは13年ぶりにデルタの運転を楽しみました。

デルタ元オーナー 門間正明さん
「懐かしいですね、懐かしいです。いやいいですね!」

記者:「13年ぶりの運転は?」
門間正明さん:「もう感覚OKです。感覚つかみました」

デルタ元オーナー 門間正明さん
「震災はもうひどかったですよ、だけど再会は夢みたいな話です。こういう体験をさせてもらえるというのは考えられないです」

震災から13年を経て果たした再会。寺島さんはこれから、修復したデルタで全国の展示会などを巡り、震災を伝えていきたいと考えています。

クイックトレーディング 寺島誠一社長
「今年もスタートから、能登半島で大地震が起こってどこでも起こり得ることなんで、デルタを見て、自分たちのこととして捉えてくれるといいかな」

よみがえったイタリアの名車「ランチアデルタ」。東日本大震災を伝えていく車として再び走り出しました。

仙台放送
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