新型コロナ「第10波」の兆しが見られ、新たな変異株も出てきている。感染症の専門家である関西福祉大学の勝田吉彰教授に聞いた。

最近、新型コロナが増えている実感は?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:兵庫県におきましても、今、定点当たり9.2ということで、どんどん増えています。それから兵庫県の西部は特に多いです。

第10波がきていると考えていいか?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:明らかに新しい増加の波が来ていますので、そう(第10波と)考えるのが自然だろうと思います。

■新たな変異株はオミクロン株の一種「JN.1」

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新型コロナの主流になるかもしれないという新たな変異株は、オミクロン株の一種の「JN.1」だ。 国立感染症研究所によると、日本でこの変異株が検出される割合は、1月7日までの1週間では19.5%だったが、今週の推定値では43%まで増加している。置き換わりが進んでいるということなのか?

関西福祉大学 勝田吉彰教授:シェア拡大のスピードが非常に速いです。これはWHOが『注目すべき変異株』(VOI)に格上げをした1つの根拠でもあります。ここから先、さらに拡大するおそれもあります。その原因として免疫逃避という、一度できた抗体をすり抜ける能力がある。だから2度、3度とかかるということが起こっています。

■重症化リスクはそんなに高くはない

1月23日、武見厚生労働大臣は「公衆衛生上のリスク増加につながるエビデンスは、今のところない。ほかの変異種と比べ、重症度に差がないと報告されている」と発言したが、この変異株にはどのような症状があるのか?

関西福祉大学 勝田吉彰教授:症状としては、一般的な呼吸器症状のせき、発熱、たんという症状があります。場合によっては、もし進行すれば肺炎の症状ということもありますが、そのリスクはそれほど多くはありません。WHOの実際に発表されている例でいえば、デンマークの発表、シンガポールの発表がありますが、特に高齢者などでも入院するリスクが従来に比べてそんなに大きいわけではない。従来より軽いとは言ってないので、やっぱり注意が必要ではあります。

重症化のリスクはあるという事だが、重症化した場合はどうなるのか?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:主として、肺炎症状ですね。咽頭部ではなくて、肺まで下に降りてきて、その結果として、例えば体の中の酸素が、オキシメーターで測ると、本来95あるべき所がそれよりも下がっているということが起きます。一番重症になってくると人工呼吸が必要になる事もあります。ただ、兵庫県で今入院している人が全部で600人ぐらい、大阪では1300人ぐらいで、人工呼吸が必要なほどの重症までいくのは、例えば2桁台ぐらいですから、そんなに多くないのかなというところです。

■感染力は強いが陽性反応は遅い!?

気になるのは感染力だ。勝田教授は「強いのは間違いない」という。
関西福祉大学 勝田吉彰教授:免疫逃避で2度、3度感染するという特徴があります。(Q.無症状もありますか?)そういう人もいますし、それから実際に検査をしても、プラスと出てくるまでの日数が少し伸びています。例えば、熱が出て、慌てて駆け込み、検査しました、マイナスですと言われました。ただ2日後、3日後で測ってみたらプラスでしたというような、インフルエンザに比べると、プラスに出てくる場合の日数が、やや伸びているところがあります。

■感染の広がりは春になるまで続く

変異株への置き換わりの中、今後、感染は広がっていくのか?

厚生労働省が発表している全国の新型コロナの患者数の推移は、2023年5月から定点把握になっていて、1医療機関あたりの患者数となる。2023年1月は、第8波の真っ只中で、1医療機関あたり30人ほどだった。5類になった後の第9波では、20人ほど。

最新のデータ(1月15日から21日)では、12.23人となっているが、9週連続で患者が増加している。いつ頃がピークで、どれほど患者数が増えるとみられるのだろうか?

関西福祉大学 勝田吉彰教授:これは例年、大体同じようなパターンかなと思います。確かに今『JN.1』という変異株のことがありますが、それは一部であって、大きな要因の「換気がしにくい」ということ、つまり夏や冬で、どうしても窓が閉まっていて換気がしにくいという環境で増えるという事を繰り返しています。春先になり、窓が開いてみんなが換気しやすくなる時に減ってきます。だいたい、ここから先、3月まで大きく変わらないと思います。

新たな変異株「JN1」への置き換わりと、第10波の感染拡大に関連性はあるのか?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:一部あります。免疫逃避あるので、何度もかかる人が出るというところで、明らかに増えてはいます。でもそれだけではなくて、むしろそれ以外の、換気の話や、人口密度、あるいはいろんな人との接触の機会という要因の方が大きいと思います。

まもなく春節もあり、外国人観光客も増えてくるが、その影響はあるのか?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:無いと断言することはありえないですけれども、ただ、1ついえるのは、いま中国で流行っているのも『JN.1』、欧米でも『JN.1』が多いですから、全く別のものが入ってくるわけではないので、そんなにびっくりする影響にはならないと思います。

■新型コロナワクチンの無料期間が終了へ

新型コロナから身を守るためには、ワクチンがある。現在は全額公費負担で、ワクチン接種は無料だが、これは3月いっぱいで終了。4月以降は原則有料となる。金額は「定期接種」の対象者の場合、自治体によって異なるが、7000円程度となる見込み。

現状のワクチンが変異株の「JN.1」に効果があるのかどうかについて、勝田教授は「重症化予防になるのは間違いない」という。
関西福祉大学 勝田吉彰教授:WHOの見立てでは、『likely to be』という表現を使っています。それは『効くでしょう』というニュアンスだと思っていただいたらいいです。(Q.高齢者や基礎疾患のある人は打つべきですか?)私自身はこの前7回目をやったところですが、私はそれなりの年だし、ちょっと血糖値も高めだったり、医療従事者だから接触する機会もあるという事もありますので。糖尿病や慢性腎疾患とか、何らかの免疫機能を抑える薬を飲んでいる方、そういった何らかの理由がある方はお勧めということです。

ワクチンの料金は年齢問わず、皆さん同じ値段になるのか?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:定価は7000円程度ですが、実はインフルエンザもそうなのですが、各自治体によっていろいろ補助があったり、あるいは企業によっても違います。例えばインフルエンザの話で、私が産業医として行っているところでも、実は自分が払う値段は住んでいる所によって、なんと4種類あったりします。ですから自治体にどれだけの力があるかによっても、変わってくると思います。

■これからはコロナだけではなく、全ての感染対策として行動を

視聴者から質問。
‐Q:コロナの「波」は10波、11波といつまで続くのか?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:季節によって増えて、また抑えて、とずっと続きます。ただ10や11という数字は人工的なものですよね。私たち人間がつけている数字でしかないので、インフルエンザ第100波と言わないのと同じことで、どこかでこういう報道では言わないということになってくるのかなと予想しています。

‐Q:マスク着用が減っているが、感染拡大に影響しないか?
関西福祉大学 勝田吉彰教授:いろんなものに関係しています。感染症というはウイルスや細菌がどれだけ伝わってくるかという『道』なんです。みんながその道をふさごうとして、でこぼこ道にしていれば4輪駆動車しか入ってこれない状態に。みんなが感染症対策をやらないと、ウイルスから見ると通りやすい環境で、広いハイウェイをバンバンと走れる状態になります。影響はやっぱり出てくると思います。
 これからは、コロナだけではなく、例えば2023年に流行したプール熱やインフルエンザも全部一括して、感染症を一つのブロックとして考えていく。私たちは合言葉『かみかみ(換気・密集・会話・みんなで防ごう新型コロナ)』と言っています。もちろん手も洗って。そのように、やっていきたいなと思います。

新型コロナも増えている。インフルエンザも流行している。みなさん、くれぐれもご注意を。

(関西テレビ「newsランナー」2024年1月29日放送)

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