JR東日本が京葉線の春のダイヤ改正で、朝と夕方以降の「通勤快速」と「快速」を廃止すると発表し、利用者から一斉に反発の声が上がっている。

これを受け、JR側は15日、「快速」電車の運行を一部継続する異例のダイヤ見直しを発表したが、継続されるのはわずか2本で、千葉県民の不満は収まりそうもない。

千葉市交通政策課の大木戸孝也課長に、JR側の目的と一部修正に至ったギリギリの舞台裏について聞いた。

「転居を考えざるを得ない」

ーー通勤快速と快速の廃止を聞いた時、どう思った?

これまでも「快速」の減便や、「通勤快速」が半分になるなどのダイヤ改正は行われてきましたが、さすがに通勤時間帯が完全にゼロになるということには驚きました。

千葉市には「市長への手紙」という、市政に対する市民の意見を寄せていただくシステムがありますが、「ダイヤ改正で生活リズムが狂う」とか「転居を考えざるを得ない」「資産価値が落ちるのでは」などの不安の声が届いています。

千葉市交通政策課・大木戸孝也課長
千葉市交通政策課・大木戸孝也課長
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ーーそれに対して千葉市はどう対応?

JRに対して、「具体的なデータに基づく考え方や背景を教えてください」とお願いしました。

それを受けて、2023年12月28日にJR千葉支社の支社長がいらして、今回のダイヤ改正の目的や背景の説明をしてくださいました。

JRとしては、「混雑の平準化」や「快速が停まらない駅の利便性向上」さらに「各駅停車の所要時間の短縮」などを図りたいとのことでしたが、千葉市としては納得できるものではなかったので、ダイヤ改正の撤回、再考をその場で市長が申し入れました。

批判を受け2本だけ運行継続

現在運行中のダイヤでは、通勤時間帯に蘇我駅を出発する「通勤快速」と「快速」は7本ある。
これが春以降は全て「各駅停車」になる予定だった。

しかし、15日行われたJR東日本千葉支社と千葉市との面談の席で、JR側は「快速」の運行を一部継続することを明らかにしたという。

京葉線上り電車の現在のダイヤ
京葉線上り電車の現在のダイヤ

ーーその後、JRから改めて説明は?

15日にJR東日本千葉支社長が千葉市にいらして、検討した結果、朝の通勤時間帯の上り快速電車2本の運行を継続するとの説明を受けました。

検討した結果、午前6時台の「快速」2本は継続することに(イメージ)
検討した結果、午前6時台の「快速」2本は継続することに(イメージ)

ダイヤ改正は非常に多岐に渡る調整が必要で、一度発表した内容を変えることは異例とのことですが、今回は「変更による影響に十分考えが至らなかった」ことを重く見て、影響があまり大きく及ばない時間帯での運行継続に踏み切ったとのことでした。
 

ーー批判があって2本だけでも継続に?

JR側には、千葉市長以外にも、沿線の各自治体の組長、経済団体、利用者など非常に多くの人から「ダイヤ改正に伴う影響が大きい」との声が寄せられたそうで、異例の運行継続に至ったと聞いています。

2023年12月28日に行われた千葉市とJR東日本千葉支社の最初の面談
2023年12月28日に行われた千葉市とJR東日本千葉支社の最初の面談

3月のダイヤ改正に向けて時間的、物理的な制約がある中、2本だけでも運行再開にこぎ着けていただいたことは、我々としてはありがたく思います。

しかし十分とは思っていないので、今後も東京と蘇我、あるいは、蘇我よりも遠い内房線、外房線の地域の皆様の速達性や拠点維持のために、快速や通勤快速の運行復活を支社長に申し入れています。

6時台の「快速」は早過ぎる

一方、復活が決まった快速電車はいずれも混雑のピークよりも1時間ほど早い6時台の運行。

東京駅に通勤で向かう場合、午前6時42分の蘇我駅発の快速に乗ると、到着するのは午前7時25分だ。

出勤時間が午前9時だとすると会社に1時間以上も早く着くことになり、利用者からは「早過ぎる」との声が上がっている。

蘇我駅から東京駅までの通勤のイメージ
蘇我駅から東京駅までの通勤のイメージ

ーー2本の「快速」復活で納得している?

速達性という意味では、朝の上り電車だけではなく、仕事終わりの下りの快速電車、通勤快速の復活も必要だと強く思っています。

JRからは、年末年始も多岐の関係者と調整して、2本の復活が時間的にも限界だったと聞いています。

外房線からの直通電車と内房線からの直通電車のそれぞれ1本ずつが復元予定で、蘇我駅を6時台に出発し、東京駅着はおおむね7時半頃の電車になります。

(イメージ)
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ーー6時台は早過ぎるとの声があるが?

7時台の通勤快速の復活も当然申し入れていましたが、ラッシュ時間は多くの電車が運行しているため、年末年始の短い期間での調整は難しく、今回はそれよりも早い時間になったとのことでした。

京葉線の「通勤快速」や「快速」は、東京と千葉、もしくは、内房線、外房線沿線の各自治体の速達性を維持するためにあります。

それを基本として生活をしたり、事業展開している企業があるので、ダイヤ改正で今後の生活スタイルや事業展開が変わってしまうことも考えられます。

(イメージ)
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場合によっては生活や事業の拠点を千葉から他に移すことも考えられ、今後のまちづくりの中でそうしたことが起きないようにするために、速達性の維持が非常に重要になります。

こうした点からダイヤを改めて再検討していただきたいとの申し入れを行いました。

この3月の改正には時間的にもう無理だと言われていますが、1年後の来年3月とは言わず、秋など時期や内容は柔軟に対応して、期待感を持ちながら出来るところから精力的にやっていきたいと思っています。

(イメージ)
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ーー今後どうなってほしい?

速達性の維持を一番強く願っています。

特に幕張新都心は経済圏の拠点でもあり、東京との行き来をなるべく速くしたいと思う方は多いと思います。

海浜幕張駅やそれ以外の京葉線の各駅を含めて、東京方面との相互の速達性を朝夕、曜日に限らず維持してほしいと考えています。