自動車の認証試験の不正を受け、ダイハツの全ての工場の稼働が止まり、取引企業や下請け企業への影響が懸念される。国は、全国でどのような影響があるか調査していて、26日午後には企業向けの相談窓口も大阪に設置した。

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記者リポート:
滋賀県竜王町にあるダイハツの工場です。稼働が停止しているため、人の出入りが少なくなっています。

自動車の認証試験で大規模な不正が明らかになり、国内全ての工場で車の生産をストップしたダイハツ。26日、滋賀県・竜王町にある工場では、時折、車が出入りする様子がみられただけで、普段とは違った光景が広がっていた。

工場で働く従業員:
きょうは休業中ですけど、一応会社の中でやることあるので出勤です。

国内にある工場では、約8700人の従業員が働いている。車の生産が中止されている間は、デスクワークや部品整理、工場の清掃などの業務を行うという。また夜勤勤務が停止されることで勤務の一部が休みとなる従業員もいる。ダイハツは、休みの間の給与を一定程度補償することを労働組合と合意した。

工場で働く従業員:
休業の手当は一応つくので、それでしのぐしかない。

■工場がある滋賀県では雇用や税収への影響懸念

この工場がある滋賀県の三日月知事からは雇用について懸念が示された。
滋賀県 三日月大造知事:
多大な経済効果をもたらしてくださった、私たちの誇りとなる会社。残念ながらダイハツ工業の出荷停止になったこと、認証制度の根幹を揺るがす行為が行われていたことが指摘されていることは、極めて遺憾に思います。(従業員も)4000人を超える雇用があります。税収に与える影響も注視しなければなりません。

帝国データバンクによると、滋賀県内に本社を置く企業のうち、ダイハツと直接取引がある企業は43社。他にも下請け取引企業が144社あり、派生する売上高は903億円にのぼる。滋賀県は27日、対策会議を開いて県内の事業者への影響を整理し、工場がある竜王町も近く、相談雇用窓口を設けることも検討している。

■ダイハツ不正問題受け 国が企業向け相談窓口設置

地域経済への影響が避けられない今回のダイハツの不正問題。国も26日から対策に乗り出した。経済産業省の出先機関・近畿経済産業局は、26日午後、大阪市中央区にある大阪合同庁舎に企業向けの相談窓口を設置した。

近畿経済産業局 辻敦士製造産業課長:
我々としても実態把握できていませんので、この窓口に寄せられる声をお聞きして、(影響の)大きさをはかっていきたいと考えています。二次下請け、三次下請けの企業もあると思うので、そういった方のお困りごとを真摯にお聞きして、今後の対策につなげていきたい。

経済産業省は、工場停止が下請け企業に与える影響などの調査を始めていて、支援策のあり方についても協議が進められている。売り上げが一定程度減少した取引先を対象に、無担保での融資保証などが検討されているということだ。車の生産停止は少なくとも来年1月まで。「ダイハツショック」は、日本全国でしばらく続きそうだ。

■「安全性や信頼を損なう行為は、海外含めて客が離れていく危険」専門家が指摘

ダイハツは国内全ての工場を停止した。多くの従業員や取引先など、さらに影響が広がりそうだ。帝国データバンクによると、ダイハツに部品を提供したり、流通を支えたり、販売するなどする「サプライチェーン企業」は、日本全国に8136社もあるという。車の生産が止まれば、ダイハツ工業だけでなく、こうした会社への影響が懸念される。このような懸念を受けて、国や自治体も相談窓口を設置し、影響を最小限にとどめるよう努めている。ダイハツの生産が止まるというのは、もはやダイハツだけの問題ではない。

「newsランナー」コメンテーターで大阪大学大学院・安田洋祐教授は、安全性・信頼を損なう行為の危険性について述べた。
大阪大学大学院 安田洋祐教授:
ダイハツの場合、トヨタの100パーセント子会社です。ダイハツの経営陣はすでに声明を出していますけれど、親会社であるトヨタも雇用であったり、取引先を守るために何らかの手段を講ずるとアナウンスを出してもいいと思います。  あと自動車業界全体を見渡すと、本当に日本での稼ぎ頭なんです。多くの雇用を生み出して稼いでいる。なぜ世界的にも日本の車は売れ続けているかというと、やっぱり安全性や信頼があるからです。最近のテクノロジー系のサービスみたいに『ちょっと便利だから』『ちょっとベータ版使ってみよう』という形にあまりならないのは、命を預けている乗り物だからです。逆に安全性や信頼を損なうような行為が出てきてしまうと、海外にいる人たちも含めてお客さんが離れていく危険性もあります。そうしないために、ダイハツも、親会社トヨタも含めて『変えていくんだ』という強いメッセージを出してほしいです

国の相談窓口が設置されている。

「ダイハツ工業サプライチェーン関連中小企業相談窓口」
06-6966-6106(近畿経済産業局 専用電話)

また国だけでなく、各自治体も相談窓口を設置するということなので、相談したいことがあれば、こうした窓口の活用することもできる。

(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月26日放送)

関西テレビ
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