高級車ばかりを狙い、レンタカーの乗り逃げを繰り返していた男が、東京・池袋で事故を起こし、酒気帯び運転の疑いで逮捕されていたことが判明した。

今回、さらなる取材で明らかになったのは、65日間に渡り、合計7台のレンタカーを乗り逃げした男の5400キロの全行程。さらに、容疑者の父親が騒動のきっかけを語った。

大阪でレンタカーを借り…次々に“乗り逃げ”

東京・池袋の住宅街で横転した白い乗用車。車体の屋根部分がへこみ、窓ガラスにも大きなヒビが入っていた。警察官が近づく中、よく見ると、横転した車の窓から一人の男が顔をのぞかせていた。

酒気帯び運転の疑いで逮捕された苗村泰樹容疑者(20)
酒気帯び運転の疑いで逮捕された苗村泰樹容疑者(20)
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酒気帯び運転の疑いで逮捕されたのは、大阪府の苗村泰樹容疑者(20)。この男は、レンタカーを乗り捨てては逃亡を繰り返していた高級レンタカー“乗り逃げ男”だった。

65日間、乗り逃げしたレンタカーは合計7台、5400キロに及んだ移動距離。このあきれた行動は、なぜ始まったのか。

苗村容疑者の父親によると、8月末、大阪の豊中市でレンタカーを借りたのが始まりだという。車を返さぬまま、およそ2週間。

神戸市内のホストクラブに体験入店した苗村容疑者
神戸市内のホストクラブに体験入店した苗村容疑者

9月13日に、苗村容疑者の姿をカメラがとらえた場所は、神戸市内にあるホストクラブの店内だった。苗村容疑者は帽子をかぶったまま体験入店し、2万円の手当を受け取っていた。ホストクラブの代表は、苗村容疑者について「接客態度は結構いい方で、しゃべれるというか。採用するつもりでしたね、僕自身は」と話す。苗村容疑者は、その3日後にも同じ店に現れ体験入店した。

そして翌日、借りっぱなしのレンタカーで長野県諏訪市へ向かった。ここでレンタカーを乗り捨てると、諏訪市内で、新車でおよそ600万円するという黄色いオープンカーをレンタル。またしても約束の時間に車を返さず、2日後の9月19日に苗村容疑者は、神戸市に舞い戻った。訪れていたのは市内の温泉施設。受付で金を支払う様子もとらえられていた。

神戸市内の温泉施設を訪れていた苗村容疑者
神戸市内の温泉施設を訪れていた苗村容疑者

その2日後、今度は、神戸市内の別のホストクラブへ。ここでも体験入店し日銭を稼ぐと、借りっぱなしのレンタカーで大分県へ移動。そして9月23日、大分県の交差点で大型トラックと衝突事故を起こしていた。

被害に遭ったレンタカー店の代表は、「おそらく車の残存価値は少なく見ても200万。(大分県からの)運搬費含めると300万円(以上)は実損害」と話す。

「すごいことに 笑」“自分の車”として報告

事故後、苗村容疑者は、車両をレッカー移動した会社で高級外車を代車としてレンタルした。3台目のレンタカーだ。そのまま福岡へと移動したのだが、事故車が乗り逃げされたものであることが判明。苗村容疑者は追いかけたレッカー会社によって、福岡県内のコンビニで発見された。

車をレッカー移動した会社で高級外車を代車としてレンタル
車をレッカー移動した会社で高級外車を代車としてレンタル

レッカー会社に車を返した苗村容疑者だったが、父親によると、9月24日に福岡からフェリーに乗って大阪まで移動した。そして翌25日には、東大阪市内でまた高級外車をレンタル。これで4台目となった。

この日、最初に体験入店したホストクラブの代表に、事故車の画像と共に、こんなLINEを送っている。

(苗村容疑者とのLINEのやりとり)

スイ(※苗村容疑者の源氏名)体験:
すみません連絡遅れました。自分の車が事故してしまってそれどころじゃありませんでした。

ホストクラブの代表:
え、大丈夫なん?怪我は?

事故で損傷したレンタカーの画像まで送っていた
事故で損傷したレンタカーの画像まで送っていた

スイ(※苗村容疑者の源氏名)体験:
すごいことになりました笑

借りた車を、自分の車だとして報告していた。

「東京から急いで帰って来い!」父親に言われるも…

9月30日には、東大阪市で借りた車で大阪府内の高速道路を時速158キロで爆走。そして10月上旬、借りたままの高級外車で泉南市へと移動した。

苗村容疑者はここで車を乗り捨てると、別のレンタカー会社で5台目となる新たな車を借りた。この車で兵庫県淡路市に移動すると、再び車を乗り捨て、6台目となる別の高級外車を借り、そのまま東京へと向かった。

そして10月7日、借りた2台の車が返却されていないことを知った父親が本人に連絡した。父親は苗村容疑者に「東京から急いで帰って来い!」と言ったという。苗村容疑者は、借りていた車で東京から戻ると、乗り捨てていた車を含む2台をレンタカー店の近くに放置。「2台の車はもう返却した」と父親に伝えると、電車で再び東京へ向かったという。

そして10月29日、7台目となるレンタカーで事故を起こし、苗村容疑者は逮捕された。

およそ2カ月、5400キロに及んだレンタカー乗り捨ての旅。いったいなぜ、こんな行動に出たのか――父親を取材すると、その一端が見えてきた。

父親「現実から逃れたかったのでは」

「家族が受験を控えていたこともあって1人暮らしをさせた」
父親はこう語った。

苗村容疑者は実家住まいで、夜通しネットゲームやチャットをやっていたという。家族の受験を控え業を煮やした父親は、苗村容疑者に1人暮らしを促した。

一連の出来事が始まったのは、その直後のことだった。

父親は、「『ご迷惑をおかけした方には謝りたい』と言っていたが動機はわからない。しいて言うなら、現実から逃れたかったのではないか。息子は謝罪したいと言っているが、本当だろうかと思う」と語った。
(「Mr.サンデー」11月12日放送より)

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