2023年は9月に入ってから、インフルエンザの感染者の数が新型コロナを上回っている。インフルエンザが猛威を振るう中、人によってはもしかすると3回感染する恐れもあるそうだ。またインフルエンザだけでなく、この冬気を付けないといけない感染症について関西医科大学附属病院の宮下修行医師に聞いた。

どうしてこの時期に、これだけインフルエンザの感染者数が増えているのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
コロナと戦っている間、インフルエンザが流行しない時期が3年ありました。インフルエンザに対して免疫がなくなってしまっているというのが1点目。2点目は5月8日以降、コロナが5類に落ちましたので感染対策が緩んでしまっている。マスクをつけない方が増えている。やはりコロナで学んだことは感染対策をしっかりすれば感染は防げるということが明らかでしたので、これも大きな影響を与えていると思います。

学校でも流行しているということだが、子どもたちがかかりやすいのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
コロナとインフルエンザの1番の違いは、コロナはどちらかというと大人の病気、インフルエンザというのは子どもの間で蔓延して、これが大人の社会に拡散するんです。

インフルエンザに3回感染する可能性…

なぜインフルエンザに3回も感染する可能性があるのか、見ていく。

インフルエンザには3つの種類、A型H3、A型H1、そしてB型がある。2023年の場合は春ごろからA型H3の感染者が増えてきて、夏の終わりからはA型H1が増えてきていて、さらに今後の冬からはB型が流行するので、3回感染する可能性があるということだ。1回かかると免疫ができるのではないかと安心してしまうのだが違うのだろうか?

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関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
インフルエンザウイルスはコロナと違ってタイプが大きく変わります。例えばH3にかかったとしてもH1の免疫は残念ながらできません。したがってH3型にかかった後、いまH1型が流行してきていますのでこれにかかってしまうという。そしてこれからB型が流行するだろうと考えられていますので、最低3回はかかる方が今までもいらっしゃいました。

この3種類というのは今年特有のものだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
だいたい毎年H3型かH1型のどちらかが大きい流行があって、遅れて最後にB型が流行して収束するというパターンなんですけど、今はH1型が南半球で流行しました。日本の夏に南半球で流行していたものが今入ってきている状態、そして残念ながらB型も入ってきてますね。

例えば複数回かかった場合、症状というのはどうなるのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
一つ一つの症状というのは大きくは変わりませんが、免疫を持たないので高熱が出やすいといった症状が強く出やすいという傾向があります。

対策に一番有効なのはワクチン接種

インフルエンザにかからないための対策で大事なのは、ワクチン接種だ。せき止めなどの薬不足は深刻だが、ワクチンや抗ウイルス薬の数はあるという状況だそうだ。そして換気も大切だ。感染対策の基本で寒いと換気を怠りがちになるが、換気が大事。

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
コロナのころを思い出していただきたいんですけども、だいたい30分に5分程度1回というのが大きな目安になると考えてください。

インフルエンザには3つの型があるということだが、ワクチンも3回打ったほうがいいのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
ワクチンの中にはA型が2種類とB型が2種類。流行するであろうものは予測されて全てが入ってますので1回のワクチン接種で大丈夫です。

体調が少しでも悪ければ「とにかく外出せずに休むことが大事」

対策をしていても体調が悪くなってしまうこともあると思う。そのようなときは休むことが大切なんだそうだ。

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
昔は熱が出ても会社に行くなんてことがありましたが、今思うとあの頃の考えは全く間違っていて、アメリカではステイホームという言葉が使われています。なぜステイホームかというと、人に感染をさせるから。熱が出た人が外に出て人に感染させないという考え方が一番重要になってきます。

それが公衆衛生学ということだ。人のために休むということが大切な考え方だ。休むこと、外出を控えるということが大事ということだが、いま薬が不足しているそうだ。

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:
せき止め薬がないという状況で、1年前にも薬不足だという状況を取材したのですが、状況は全く変わっていないどころか悪化しているとおっしゃっていて、代替薬で対応しているそうです。厚労省も製薬メーカーを集めてせき止め薬をとにかく作りなさいとお達しを出したところなんですけど、現場からは悲鳴が聞こえてきています。

まずはかからないようにすることが大事だ。

この冬に注意“マイコプラズマ肺炎”

インフルエンザだけではない“この冬の感染症”にも気を付けないといけないということだ。

その感染症はマイコプラズマ肺炎だ。症状はせき、のどの痛み、発熱、重症化することもある。オリンピック病ともいわれていて4年に一度流行するということだ。現在、中国で感染拡大して韓国でも感染者が増加している。なぜ4年に一度流行するのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
マイコプラズマ肺炎にかかると免疫を持ちますが、4年後ぐらいの免疫がなくなった頃に感染する。実は本来2020年に流行する予定だったんですけども、マスクで感染対策をきちっとしたことで流行しませんでした。すでに日本に入ってきていて、わたしたちは数年間マイコプラズマに免疫を持っていませんので流行し始めると拡大する。これもインフルエンザと同じで子どもがかかりやすい病気です。重症化される方は3~5%ぐらいといわれていますけども、集中治療室に入らなければならないぐらいの肺炎にかかられる方がいらっしゃいます。

マイコプラズマ肺炎の予防はインフルエンザと変わらないのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
インフルエンザはワクチンがありますから、ワクチンが最も有効なのですが、マイコプラズマは残念ながらワクチンが現在ありません。ただ、呼吸器感染症の病原体というのはこのコロナ禍で分かったのはマスクをして距離をとる。これが飛沫感染を一番防ぐことができる方法であるということ。これが徹底できればということですけども、症状がある方が人にうつしますのでせきエチケット、マスクをしていただくというのが重要になってきます。

感染力も気になるのだが、コロナを基準として考えるとインフルエンザとマイコプラズマ肺炎はどうだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
今のコロナ(XBB)とインフルエンザを比べると、インフルエンザの方が明らかに低いです。実効再生産数や基本再生産数という言葉があって、1人が何人にうつすかという指標でインフルエンザは2~3人、マイコプラズマは4~5人と言われています。今のコロナはもっと高いです。

ワクチンの効果は3~5カ月

視聴者から質問。
Q:息子が受験生です。ワクチン接種のベストなタイミングは?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
受験からさかのぼって考えていただくとよいのですが、ワクチンの効果がだいたい3カ月から5カ月と思っていただいたら結構です。したがってだいたい11月ごろに打っていただくのがベストかなと思います。

Q:ことしは早く流行している分、早く収束するのですか?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
残念ながらH1N1(インフルエンザA型)、B型に対してわれわれは免疫を持ちませんので、これがこれから拡大してしまうと長引くおそれがあるかと思います。

Q:インフルエンザにかかった場合、家の中で隔離はどうすればいい?

関西医科大学附属病院 宮下修行医師:
重要なのは換気をして距離をとる。かかっている人が距離をとってマスクをすればそうそう感染するものではありませんので、コロナのようにびっちりと隔離をする必要はありません。

乾燥も感染が拡大しやすい条件ですので加湿器をつけるなどの湿度のコントロールをするなど、まずは皆さんができる範囲での対策をしっかりとりながら、体調の変化には十分気を付けて無理をしないよう注意していただきたい。

(関西テレビ「newsランナー」2023年11月8日放送)

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