5日、FNNが独自に、韓国大使館がフルスモークの違法な状態で、外交官ナンバー車両を使用している実態を報じた。
FNNが韓国大使館に取材したところ、一部の車にスモークを貼っていたことを認め、「日本の法律に適合しないことは認識しておらず、確認した時点で速やかに対応する」と回答したという。韓国大使館は実際即座に対応したようで、上川外相は6日の会見で、韓国大使館から「日本の法令に適合するように対応した」と報告を受けたと明らかにした。

だが、外交官ナンバー車両による違法行為は過去にも複数報じられている。例えば駐車違反だ。
2022年にFNNが情報公開請求で入手した警察庁のリスト によると、1年間にロシアが日本国内で駐車違反の放置違反金を踏み倒した件数は1826件だ。全体のうち、ロシアが約半数を占めている。4年連続のワーストをロシアが独占しており、遵法精神のかけらも見られない。ちなみに2位は中国が4年連続で名を連ねている。
そもそも彼らを取り締まることは出来ないのだろうか。ご存知の通り、彼らは外交特権で守られている。
外交特権とは
外交特権とは、ウィーン条約に定められており、外交使節とその随員に対して接受国から与えられる特権であり、身体、名誉、財産等に対する不可侵権、刑事や民事裁判権の免除などの治外法権からなる。そのため、駐車違反の放置違反金を時効まで支払わずに無視しても、特権で裁判や差し押さえを免除されるため、踏み倒しが横行する理由に直結するのだ。
警察関係者によれば、外交官ナンバー車両による駐車違反や交通違反は後を断たないのが現状だ。
このような悪質な状況に対し、打つ手はあるのだろうか。
一つはPNG・ペルソナノングラータ(※「好ましからざる人物」という意味で、赴任した国から退去を命じられた外交官を指す外交用語)を通告し、国外追放とする。しかし、これは諜報活動の関与が疑われるものや、ウクライナ侵攻における制裁の一環で追放するなど、重大なケースであることが通例だ。

もう一つは、外務省の儀典官室による対処だ。儀典官室は日本に駐在する他国の外交官に関する事務を管轄しており、状況によっては同室から大使等に対処を求めることが出来るが、一定程度の効果しか望めないだろう。
外交特権はスパイ活動でも重宝される
外交特権の闇はこれだけではない。
2006年、当時在日ロシア通商代表部員であったV・ペツケビッチは、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の機関員であり、光学機器関連企業の社員に対し工作を仕掛け、社員を唆した上で謝礼との引き換えに同社の社外機密光学機器を受け取っていた。しかし、外交特権があるため、ペツケビッチは逮捕されることなく、ゆうゆうとロシアに帰国していった。

更に、2020年に発覚した、ソフトバンクの元社員がスパイのエージェントとして5G基地局に関する情報を渡していたソフトバンク事件も同様だ。ロシア対外調査庁(SVR)の科学技術情報を収集する部門ラインXの機関員のアントン・カリーニン元在日ロシア通商代表部員も、外務省を通じた出頭要請を無視し、捜査員の目の前で帰国していった。
そして、ペツケビッチやカリーニンの後任として、また別のスパイが日本に赴任し、スパイ活動を行い、仮に事件となっても外交特権により、捜査員の目の前で帰国していく。
ロシア外交官や通商代表部員によるスパイ事件は、事件化できたとしても日本人などのエージェントのみが検挙され、唆したスパイは帰国していくという結末を迎え、今後も続くだろう。
ちなみに、在日中国大使館の元一等書記官“李春光”によるスパイ事件も同様だ。
駐車違反からスパイ活動まで、外交特権を隠れ蓑にした違法行為は後を絶たない。
日本としては、小さな違法行為に対しても目を光らせ、遵法精神に欠ける国には毅然と対応していくことに加え、世間が関心を持ち続けることが最大の抑止になるのではないだろうか。